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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第六章 兆しの精霊祭編
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対戦カード

アクセスありがとうございます!



 サーヴェルとクローネを見送った三人はそのまま闘技場へ。

 序列戦に出場するロロベリアは控え室に集合、リースとユースは出場しないので闘技場前で別行動を。


「ロロ、頑張って」

「しっかりな」

「ええ」


 最後の激励としてハイタッチを交わし、関係者専用出入り口から控え室へ向かうロロベリアを見送り別の入り口から観覧席に向かうべく移動を開始。


「しかしまあ、すげー人な」


 開場三〇分前にも関わらず既に長蛇の列、会場警備を務める学院生らが列整理に追われているほど。

 だが序列戦は精霊祭のメインイベント、情報開示から大きな関心を向けられていただけに当然のこと。今朝も序列戦の整理券を求めて校門前には長蛇の列が出来ていたほどだ。


 現に学院で最も大きい闘技場の観覧席は学院生のみならず保護者の観覧も想定しているので来賓用も含めて五〇〇〇人ほど。しかし出来るだけ多くの国民が観戦できるようわざわざ改築し、立ち見も踏まえて更に二〇〇〇人の収容を可能にしたがそれでも整理券配付が始まるなり即終了したらしい。

 また貴族も平民も平等という学院の理念も踏まえて配布した者の名前を確認して、別の者に譲渡できないようしている。これは貴族が使用人に並ばせたり、金銭での譲渡といった不正を防ぐ為。

 マイレーヌ学院は王立故に発覚すれば王国法に則り罰せられ、更には配付する学院生にレイドやエレノアが加わるという徹底ぶり。なので平民に混じって貴族家当主らしき者が不服そうにしながらも大人しく並んでいたりする。


 ちなみに学院生といえど希望すれば全員観覧とはいかず、各学年やクラスから希望者を募り、決められた座席数(立ち見だが)を抽選で争い、漏れた者はせめて会場警備で観覧しようと更なる抽選があったほどだ。

 唯一の特例は序列保持者の親族。最終的にティエッタ、ラン、ディーン、シャルツの親族のみが利用したらしいが、後は親善試合の代表になった者のみ優先して観覧できる配慮はされていた。

 つまりリースとユースは激戦に参加せず余裕の観覧。整理券を求める長蛇の列に少しの優越を感じたもので、会場が始まっても顔パスで通過したのだが。


「そういやアヤトも来るらしいけど、ルビラ先輩が用意した静かな席ってどこだろうな」


 割り当てられた観覧席に向かいつつユースが訝しむように、当初アヤトは優先観覧を辞退したがラタニの勧めや序列戦について色々相談していたルビラから特別席を用意されて結局観覧するらしい。

 ただ立ち見席も埋まるほどの観覧席に静かな席などあるはずもなく、果たしてどこにいるのかと――


「居た」

「……マジかよ」


 思うより先にリースが闘技場内の一カ所を指さし、あまりに予想外な特別席にユースは呆れてしまった。今回の改装時に解説席を設けるとは聞いていたが、まさかそこが特別席とは思いもよらず。

 観覧席でもひときわ目立つ解説席にアヤトが居た。



 ◇



「……あいつ、目立つのも見世物になるのも嫌だって言ってなかったか?」


 同時刻、入場門から闘技場内を確認していたディーンも解説席にいるアヤトの姿を見つけるなり眉根を潜めていた。

 事前に観覧するとは聞いていたがまさかの場所、もしや解説でもするのだろうかと疑問視するのは無理もない。恐らく闘技場内で最も詳しい解説が出来る慧眼から向いていると言えば向いている。

 ただ口の悪さで反感を買いかねない上に本人がその手の立場を嫌う、にも関わらずなぜ居るのか。


「ボクらも知らなかったから驚いたよ」

「序列戦の運営は公平を期すためにマドリックとフレンディに任せていたからな……」


 あまりの場違い感にレイドとカイルも驚きを隠せず、もちろん他のメンバーもどんな方法であそこに留めているのかと疑問視する中――


「さすがアヤトさまです」


 ミューズのみ全く動じず意味不明な尊敬をしていた。



 ◇



 少し時間はさかのぼり開場前――


「アヤトくん、こっちだよ~」

「人の名前をでかい声で呼ぶんじゃねぇよ」


 ティエッタらより遅れて関係者専用出入り口に到着したアヤトは待ち合わせていたルビラと合流、そのまま闘技場内へ。


「でもよかった~」

「何がだ」

「カナリアさんからアヤトくんはサボり癖があるって聞いてたから、もしかしたら来ないんじゃないかなって心配してたんだ~」

「たく……」


 これまでの行いを自覚しているだけに余計な心配と返せずため息を吐くのみで。


「だから、よかった~だよ。お礼に用意した席が無駄にならないからね~」

「礼をされるほどの助言はしてねぇが、学院生会の代表さま二人が用意してくださったご厚意を無碍にするわけにもいかんしな」


 代わりにしっかり嫌味を含んだ物言いを返すあたりがアヤト、それでもルビラはニコニコ笑顔を崩さない。

 今回の序列戦について色々と相談している内に横柄な態度に馴れたのもあるが、直接会話をしたことでアヤトの為人を知れたのが大きい。

 偏屈ではあるが心根は真っ直ぐで純粋。故に噂されるほど悪い人ではなく、知れば知るほど他にない魅力に感じられて。

 また充分起爆剤になり得る実力のみならず、学院生のレベルを遙かに超えた頭脳はルビラも学ぶことが多く、むしろ話をするのが楽しいほど。

 故に今回も序列戦を通じて知見を広めたいと楽しみである一方、この不意打ちにどんな反応を見せるか興味深く。


「で、静かに見物できる席ってのはどこだ」

「もうすぐだよ~」


 階段を上り終え、内心ワクワクとルビラが扉を開けて――


「サボらず来たんですね」


「…………」


 事前打ち合わせの為、既に待機していたカナリアのお出迎えにアヤトは不機嫌な表情を。

 それもそのはず、カナリアが序列戦の解説を任されているのは知っている。なんせ進行役だけでなく、解説を交える方が良いと助言したのはアヤトだ。

 親善試合の結果から話題を独占した序列同士の戦い、特に精霊術は迫力もあって見応えも充分。だが精霊士の動きは持たぬ者からすれば遠目でも捉えらきれないほど速く、武芸に精通のない平民が見たところで面白みはない。


 それを補う為の解説役。出場する序列メンバーの何が優れているか、勝敗を分けたポイントなど詳しい解説があればより関心を持たれる。

 まあこの解説役をアヤトに打診したが断られ、ラタニに打診をすれば逃げられ、最終的に受け持つことになったカナリアは学院の卒業生で在学時は序列一位、親善試合に同行していたこともあり適任と言えるがそれはさておき。

 他にも整理券の配布法、対戦カードの決め方、入場者数を増やす為の改築案などアヤトは助言しているわけで。


「……チッ」


 解説席は周囲の歓声が邪魔にならないよう、フィールドに最も近い場所に隔離して設置されていた。他の座席よりも静かで、人混みも避けられるもその分()()()()()()()とも言える。

 つまりアヤトが嫌いな見世物状態。しかし舌打ちすれどそのままカナリアの隣りに着席。


「フケないんですか?」

「先ほどご厚意を無碍にせんと言ったばかりだ。俺に二言はねぇよ」


 意外にも素直に受け入れたことに疑問視するも、煩わしげな返答にカナリアは納得。

 一度決めたこと、約束したことをアヤトは必ず守る。

 ちなみに『さあな』や『どうだかな』は期待以下の返答なのでカナリアはその手の返答を聞く度に胃が痛くなる。

 とにかくこの扱いも一度受け入れたのなら不服だろうと受け入れるわけで。


「ただし解説はしねぇぞ」

「それはカナリアさんにお願いするからもちろんだよ~」


 やはり面白い反応を示したアヤトに満足しつつルビラはカナリアの逆隣りに着席。


「その代わりと言ってはなんだけど、アヤトくんの意見も聞きたいから個人的な質問してもいいかな~? もちろんお礼はするよ~」

「今回のような礼をすれば二度とテメェには関わらん」

「心得ました~」


 ルビラは変わらずポワポワ笑顔で返すも、本当にアヤトは言葉も交わしてくれないと理解するが故に二度とするつもりはない。若干賭けではあったがアヤトの意見を聞くことで知見を広めることが出来ると満足だ。


 ただちゃっかり自分だけ楽しむつもりでいたルビラに呆れつつ、カナリアもまた満足していた。

 ラタニと同じくカナリアも、モーエンもアヤトの過去、保護されてからの生き方を知るだけに、理不尽に奪われた時間を少しでも取り戻してほしいと望んでいたからで。


「なら暇つぶし程度に答えてやるよ」

「楽しみだな~」


 例え面倒げでも他人に興味を持ち、またアヤトを理解し受け入れてくれる同年代の友人が増えるのなら多少の面倒ごとも引き受ける覚悟はあった。


 もちろん出来るなら自重もして欲しいが……。



 ◇



 このような経緯からアヤトが解説席にいるのだが、知らぬ者からすれば違和感だらけ。

 しかし真意を問う暇もなく午後四時となり。


『これより精霊祭のメインイベント、序列戦を開催します!』


 グリードがフィールドの中央に立ち、風の精霊器で拡張した声で開始宣言。同時に闘技場内は大歓声に包まれ、熱気に満ちあふれていく。


『では最初に我が学院が誇る序列保持者の紹介から。まず序列十位、精霊術クラス一学生――ロロベリア=リーズベルト!』


 またイベントが故にこうした形式で期待感を煽るのも忘れず、西門からロロベリアが現れるなり歓声が更に大きくなる。

 本人は気恥ずかしくもこれも勤めと手を振り答えているが、ひときわ大きな歓声が起きたのはやはりエレノアとレイドの紹介だった。


 とにかく序列順にフィールド中央に並び立ち歓声に応えつつ、グリードは続いて審判役を務めるモーエン、司会進行のルビラ、解説のカナリアの紹介を。

 最後にアヤトは今回の序列戦に対して様々な協力をしたことで自分やルビラと同等の功労者として解説席に居ると説明したが、既に盛り上がりが最高潮の観客席は誰か分からずとも歓声で受け入れていた。


「……いらねぇよ」


 まあ結果として目立ってしまいアヤトはうんざり顔で吐き捨てるも、フィールドにいるグリードは気づくことなく進行を。


『続いて序列戦について説明をする! 序列戦とは本来三ヶ月に一度、選ばれた学院生が序列保持者に挑むものだが、事前に開示していたように今回のイベントは序列保持者同士が争うエキシビション、故に勝敗によって序列変動はない! もちろんエキシビションだろうと我ら学院生の日々の研鑽を知って頂けるよう、全力で挑む所存なので期待以上の試合になるのは約束する!』


「……さて、どんなカードになってるんだろうね」

「さあな」


『ではみなさんが気にしている対戦カードを発表しよう!』


 続く説明にレイドとカイルが苦笑するように、実のところ対戦カードは出場する序列保持者ですら知らない。

 知っているのは一対一の全五戦と事前に開示している情報のみ。故に相手が分からない以上、少しでも手の内を見せないよう序列戦の話が挙がってからは自主訓練も個別に、アヤトとの訓練も一人ずつ受けていた。

 観客側も誰と誰が対戦するかは最も興味を引く情報。なので闘技場内は期待感を募らせつつ静かに発表を待っていたが――


『まずはこちらをご覧ください!』


 グリードがポケットから取り出したのは一枚の木札。

 観覧席からは見えないが序列保持者には『一』の数字が書かれているのが確認できた。


『こちらの木札には一から十の数字が書かれている! そして公平を期す為に審判役のモーエン殿に引いてもらい、書かれた数字の序列同士が対戦、つまりクジ引きで対戦カードが決定する!』


 思わぬ決定方法に響めきが起こるも、安易に序列順同士が争うよりも面白い決め方だと拍手が。

 なんせ観戦する自分たちだけでなく、対戦する序列保持者も知らない完全な運任せ。

 ただ対戦カードをどうするべきかと悩んでいたルビラとグリードがアヤトに相談した際――


『所詮はどんぐりの背比べだ。どいつとどいつがやり合ったところで変わらんだろう。ならあみだくじにでもすればいいんじゃねぇか』


 との適当な助言からこの方法を思いついたりする。

 しかし最終戦のみ一試合分の猶予はあれど序列保持者は事前策を練れず、ギリギリまで分からないという期待感を煽ることに成功。

 そして全ての説明を終えるなり、手伝いの学院生が持ってきたクジ箱に十枚の木札が入れられた。


『ではモーエン殿、お願いします』


 闘技場の注目を一身に受けたモーエンがクジ箱に手を入れ、いよいよ序列戦が開始。



 気になる第一戦、その対戦カードは――




誰と誰でしょう(笑)。

とにかく第六章メインの一つ、序列戦がいよいよ始まります……が、その前に。

対戦カードはクジ引きで決定と作中で説明していますが、実のところ本当にクジ引きで決めていたりします。

ただ一組だけ作者が決めていたりします。というのも第六章で序列戦をする、という構想を決めたのは序列同士で戦わせておきたい組み合わせがあったからで。

逆を言えばその一組以外はどの組み合わせでも良いかなと、敢えてリアリティを追求……はい、どの組み合わせでも良いならクジで決めよ、との作者らしからぬノリで決めました。

ですが言い訳をするならどの組み合わせも面白そうですし、変に決めるよりは運任せの方が作者も含めて面白くなるかなとの考えでもあります。


まあ……まさかの組み合わせになりましたが。


それこそ神さまのお導きならぬマヤのお導きか? と作者も戸惑ったほど、脳内でマヤがクスクスしてる姿が思い浮かびました。

それはさておき、組み合わせこそ一組を除いてクジにしましたが、順番は作者が決めています(←それが当たり前)。

その方が序列戦全体の構成が練りやすいので……(←なら最初から自分で決めろ)。

とまあ、ツッコミどころ満載な序列戦ですが、みなさまもどの組み合わせが唯一決定していた組み合わせなのかを予想しつつお楽しみに!

もちろん最終戦の後書きでどの組み合わせだったかを発表します!


みなさまにお願いと感謝を。

少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして欲しいです!

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また感想、誤字の報告もぜひ!

作者のテンションがめちゃ上がります!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!

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