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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第六章 兆しの精霊祭編
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二人の撃退法

アクセスありがとうございます!



 二日目になると初日に比べて入場者が多く、それだけトラブルも増えるので運営陣、特に警備担当は大忙し。

 ただロロベリアは事あるごとにミラーが暴走しかけて別の意味で大忙しだった。というより揉め事ならまだしも迷子や道案内を頼まれただけでなぜ剣を抜く発想に行き着くのか。普段は真面目な一生懸命小動物系でも、ミラーの本質は戦闘狂かもしれない。

 とにかくロロベリアの奮闘により警備側が不祥事を犯す、という不名誉な事態は免れることに成功。


「じゃあロロベリアちゃん、また後でねー!」


 念のため生会室のある校舎まで送り届けたロロベリアの気苦労も知らずにミラーはぶんぶん手を振り校舎内へ。

 もうすぐ午後二時、これから一時間の休憩に入るのでミラーはここで遅い昼食を。ロロベリアは屋台で簡単に済ませるつもりだ。

 まあ屋台と言うより学食、もっと言えばアヤトとの接触が目的だったりする。

 そう、ランからもらったメモではアヤトも休憩に入る時間。あわよくば一緒に精霊祭を楽しめればとの望みを達成するためで。


 ちなみに休憩が重なったのは偶然でも運でもなく人為的なもの。

 なんせこの時間で休憩に入れるよう配慮したのはレイドらしい。恐らくランあたりからアヤトの予定時間を聞き出したのか、彼女が進言したのかは分からないがミラーから『レイドくんからせめてものお詫びって聞いたけどなにかあったの?』と質問されたので間違いない。

 どうもあの事を気にされていたらしい。そこまで気にする必要もないとは思うがレイドの計らいにロロベリアは後ほどお礼を述べようと誓ったのは言うまでもない。


「……どうなったかな」


 ただ昨日の混み具合から今日も休憩を取らない可能性もある。

 アヤトが改善策を練るなら、上手く休憩も回せるようにしているだろうが念のためマヤに確認しようと学食へ向かいながらポケットのブローチに触れて――


「ねえねえ、そこの綺麗な白髪の彼女~」

「ここの学院生でしょ?」

「ちょっといいかな?」


 念じるより先に突然三人組の男性が行く手を阻むように現れ立ち止まった。


「……なんでしょう」


 恐らく二〇前後の若い三人はそれなりに身なりが良く、穏やかな笑みを向けている。

 しかし隠れた下卑た感情や甘ったるい声音に嫌悪を感じつつ、何か困っていて学院生の自分に声を掛けた可能性も捨てきれないロロベリアは仕方なく返答を。


「俺たち初めて精霊祭に来たんだけど、どこに何があるのか良くわかんなくてさ」

「良かったら色々と案内してくんない?」

「もちお礼に好きなものご馳走しちゃうよ? なんならお友達も呼んでくれてかまわないし」


 まくし立てる用件に杞憂だったと後悔のため息一つ。

 ロロベリアの容姿は珍しい乳白色の髪も相まって、神秘的な美しさがありとにかく人目を集める。初日はニコレスカ姉弟が常に一緒。先ほどまでは警備の腕章を付けてミラーと一緒だったが休憩中で腕章を外し、一人で歩いていればナンパ目的で訪れた者が声を掛けたくなるのも仕方のないこと。

 ラナクスの住民なら珍しい髪色から白髪の学院生は序列十位のロロベリアとして名だけでなく容姿も知れ渡っている。

 つまりこうした輩も実力を知るが故に安易に声を掛けないのだが、知らなければ狙われるのは当然で。


 まあ自分の魅力を自覚してない本人は単純に目立つ髪色から興味本位で声を掛けてくると捉えているのだが。


「あれー? 聞こえなかったのかな?」

「俺たち困ってるんだけど」

「それともお友達のところに案内してくれてるの?」


 こうした輩は相手にしないのが一番とロロベリアは無視して通り過ぎるも、三人は諦めずしつこく声を掛けてくる。

 精霊祭の雰囲気に当てられているにしても悪質な行為、付きまとわれるとマヤに連絡が取れない。

 なによりアヤトと一緒に精霊祭を楽しむ、という目的を邪魔されているようでロロベリアは多少痛い目に遭わせてから運営に突き出そうと決意。


「いい加減に――」


「たく、ここに居やがったか」


「――し…………へ?」


 実行する寸前、周囲の喧騒や男らの声の中からとても聞き慣れた声に苛立ちが吹き飛んだ。

 声の主は言うまでもなくアヤト。無駄に良い動きで人混みの間をすり抜けながら近づいてくる。

 先ほどの発言も踏まえるなら自分を探していたらしいが、なぜと疑問視するロロベリア。

 対し三人組は珍しい黒髪黒目と、多少涼しくなったとはいえ黒一色の見た目暑苦しいロングコート姿のアヤトが現れ呆気に取られてしまう。

 その間にもアヤトはロロベリアの前で立ち止まり、訝しむ三人を一瞥してからロロベリアへ視線を向ける。


「一応聞くが、まだお仕事中か」

「え? あ……休憩、だけど」

「ならそこにいる奴らは知り合いか」

「……知らない人」

「結構。なら行くぞ」


 わざわざ確認するあたりが律義でも、返答も聞かずさっさと歩き出すのもアヤトだった。

 しかしこの扱いも馴れたもの、ロロベリアは考えるよりも先に後を追う。


「いやいや、それは違うでしょ?」


 まあ質の悪い三人組が素直に引き下がるわけもなく、自分たちの狙っていた子を突然現れ連れて行くアヤトの態度も相まって男が不快感をあらわに呼び止める。


「俺たちがその子と一緒に楽しむ約束してんだけど」

「勝手に連れて行くとかおかしくない?」


 だが三人の言い分にこそロロベリアはおかしさしかない。

 約束もしてなければ勝手も何も、そちらの許可は必要ない。人数的に勝っているから横柄な態度になるのも分かるが、あまりに自己中すぎる。

 しかし三人に詰め寄られたところでアヤトが動じるわけもなく。


「だ、そうだが?」

「いや、してないから」

「らしいぞ」


 いちいち確認するなとロロベリアはジト目を向けて否定を。


「そもそも()()()()()()()()

「――っ」


 …………したのだが、苛立つ三人組に向けてアヤトが放った一言に全身が熱くなる。

 まさかの不意打ち俺のだ宣言、予想外すぎるがロロベリアの耳に強く残るインパクトで。

 もちろん悪い気はしないし、こうしたシチュエーションでアヤトが宣言してくれるのは乙女的にむしろ良い。

 しかし心の準備やら、せめてそういった宣言をするときくらい白いのではなく名前で呼んで欲しい――


「つーか俺に許可なく()()()()連れ回そうとするんじゃねぇよ」


「「「…………は?」」」


 などと浮かれていれば、アヤトはとても無粋でアレな忠告を。

 これには三人組も耳を疑い。


「…………」


 浮かれていたロロベリアは冷水を被ったように全身の火照りが冷えていく。


「なんだ聞こえなかったのか。飼い主の許可なく飼い犬を連れ回すなと言ったんだ」


 明らかに奇妙な空気が漂うもそこはアヤト、知ったことかと律義に言い直す。


「あなたはなに言ってるのよ!」


 なので三人組よりも先にロロベリアが別の意味で顔を赤くして突っこんだ。


「あん? だから飼い主に許可無く――」

「そうじゃなくて! 公衆の面前でとんでもない宣言するなって言ってるの!」

「言ってねぇだろ。つーかなにキレてんだ? 俺を飼い主、自分は飼い犬とお前も認めただろう」

「確かに認めたけども! でも! それはあくまで比喩でしょう!? 経緯を知らない人が聞いたら変な勘違いしちゃうのよ!」

「ギャーギャーうるせぇ……。そもそも変な勘違いとはなんだ」

「それ聞くっ? 私に聞くっ?」

「テメェが言い出したんだろうが」


 自分の宣言がどう捉えられるか全く理解していないアヤトに錯乱状態で喚くロロベリアは周囲から何事かと注目され、結果墓穴を掘りまくっていることに気づくことなく。



「「「お邪魔しました……」」」



 その間にも完璧に勘違いした三人組が関わりなくないと去って行くことにも気づいていなかったがそれはさておき。

 元より人混みを好まず注目されるのを嫌うアヤトはロロベリアの癇癪に付き合うはずもなく。


「……もういい。行くぞ」

「ちょ、アヤト!」


 これまた無駄に良い動きで野次馬の間をすり抜け先に行くのでロロベリアも慌てて追いかける。


「待ちなさいアヤト!」

「無駄にでかい声ださなくとも聞こえている。つーか無駄にでかい声で人の名前を呼ぶんじゃねぇよ」

「無駄は余計だし……そもそも誰のせいよ」

「お前のせいだろ」

「あなたのせいよ! ……で、行くってどこへ?」


 批判と共に質問するロロベリアに人混みを抜けたアヤトは不意に立ち止まり。


「さて、どこへ行くんだろうな」


「…………は?」




アヤトとロロらしいナンパの撃退法でした。

何と言いますか……この二人はなぜまともなラブコメをしてくれない……。

ですがアヤトは特に深い意味もなく本当に比喩として口にしています。つまりガチでロロが何にキレたのか分かっていませんし、間違いなくリースも変に捉えず『ロロを犬扱いするな』とキレるピュアッ子です。

なのでアレな想像をしてしまう分ロロの方がぶっちゃけ妄想力がたくましいのでは?


それはさておき……本当にどこへ行くんでしょう?


みなさまにお願いと感謝を。

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