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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第六章 兆しの精霊祭編
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精霊祭、始まる

アクセスありがとうございます!



 精霊祭当日。


 今日から三日間、学院を開放して行われる学院の祭事。

 初日と二日目は午前十時から午後四時まで、最終日のみ午後七時まで。また初日はラナクスの住民のみと、地元優先の入場規制がされている。

 来場者数が多く、ラナクス中の宿屋が満室状態。

 実家が食堂のランや宿屋のディーンが曰く年一の稼ぎ時らしい。ただ人が集まればそれだけ問題が起こるのでラナクスの警備隊も年一で忙しくなるらしいが。


 とにかく主催側に回らない学院生は基本楽しむ側。しかし当日は学院生会の手伝いとして雑用や警備に回る。ヘルプのようなもので三日間の内、一日のみで他の二日は休養日扱いと少しでも運営に関わらせるためで。

 一学生は初めての精霊祭。入場規制で他より来場者数の少ない初日を避けた二日目か三日目になりロロベリア、リース、ユースは二日目に割り当てられていた。

 故に初日は純粋に楽しむべく開始時間に合わせて制服姿で学院へ。

 ちなみにアヤトは仕込みがあるので起きた時点で既に姿はなく、用意していた朝食を三人で食べていたのだがそれはさておき。


「去年も思ったけど……」

「初日からすげー人だな」

「……うざい」


 精霊祭の名にちなみ、四大精霊をモチーフに描かれた看板が掲げられた校門前で三人は見ているだけで疲れていた。

 道中から多くの住民が学院へ向かっていたが、敷地内は既に人で溢れている。去年は下見もかねて二日目に参加したが、ラナクスの住民のみでも充分多い。

 しかも今年のメインイベントとして序列保持者のエキシビションが控えている。加えて精霊祭は三日目が最も来場者数が多いと聞く。

 事前通知から親善試合に勝利した王国代表を一目見ようと既に話題に上がっているだけに、闘技場には多くの観覧者が訪れるだろう。

 これには出場するロロベリアは緊張感が走るところだが。


「最初はやっぱりアヤトのお店に行きましょうか」


 今さら緊張しても仕方がないと割り切っていた。



 ◇



 アヤトが代表を務めて開くのは学食を利用したカフェと、校門から真っ直ぐ向かったところにある噴水広場で出店する屋台の二カ所。

 まずロロベリアらは校門から近い屋台の様子見に。


「いらっしゃい! いらっしゃい! 良かったら何か買ってってよ!」


 噴水広場が見えてくると人混みの中からランの元気な呼び込みが聞こえてくる。

 更に近づけば他よりも集客率の高い屋台が目に入り、確認するまでもなくそこが目的地と歩を進めた。


「あ、みんな来たんだ」

「来た」

「盛況のようですね」

「ただ……なんつーか、珍しい組み合わせっすね」


 お客が引いたタイミングを狙って近づけばランが手を振り迎え入れてくれるも、屋台には他にフロイスの姿が。

 ランがいるなら屋台担当はディーンと思っていただけに予想外で。

 また屋台と聞いていたのに並べているのは一口サイズのケーキや飴などの菓子類。他の屋台に比べて匂いで引くことは出来ないが華やかな彩りはお客の目を引くだろう。


「あはは……これはアヤトの狙いというか、悪知恵というか……」


 ランは苦笑しつつフロイスが接客をしている隙に距離を取り、三人にだけ聞こえるように囁きかけた。


「ほら、学食って人通りが少ないでしょ。で、フロイスさんってビジュアル良いし従者もしてて人当たりも丁寧だからって」

「……つまり屋台はあくまで客寄せ、メインは学食っすか」


 学食は講師陣の校舎裏にあり人目に付きづらいが、噴水広場は屋台を開くに一番の立地条件。屋台でお客を呼び込み、メインの学食で出している菓子類の味と共にそちらにも興味を向けさせるのが狙いの二カ所出店。

 またフロイスは長身で顔立ちも目を引くわけで。


「いらっしゃいませ。どちらをお望みでしょうか」

「えとえと……そちらの砂糖菓子を」

「私はカップケーキを……」


 現に執事然としたフロイスの対応に若い女性客が顔を赤らめ購入している。

 ランは食堂の娘だけありメンバー内で一番気さく。本人は無自覚だろうが同じく見目も良い。

 なにより二人は今現在学院で最も注目されている序列保持者。様々な面を考慮して最初にこの二人を屋台に回したのか。こうした商才はクローネが気に入るだけある。


「そういうこと。でもせっかくだから三人ともお買い上げよろしくね。このお菓子本当に美味しいから」

「もらう」

「毎度あり~」


 などと感心しつつロロベリアやユースも購入したのだが。


「それとロロベリアにはこれを」

「なんですか?」


 包みと一緒に折りたたまれたメモ用紙を渡され首を傾げるロロベリアにランは顔を寄せた。


「アヤトの休憩時間を書いといたから有効に使って」

「…………」

「せっかくの精霊祭だもん。思い出、作りたいでしょ?」


 顔を放して微笑みかけるランにコクコクと頷いたロロベリアがとても感謝し、更に売り上げに貢献したのは言うまでもない。


 とにかく価格設定も原価ギリギリとまさに客寄せ何とやら。アヤトの抜け目ない商戦に感心しつつそのまま学食へ向かった。


「「まさかの……」」


 のだが、学食の状況にロロベリアとユースは唖然。

 なぜなら改装で増えた席がほぼ満席状態。立地の悪さと開始からまだ一時間も経過していないのを踏まえれば充分な繁盛ぶりだ。


「よう、三人とも来たんだな」


 席を探していればディーンが声を掛けてくる。制服で売り子をしていたフロイスやランとは違い執事服姿で。

 よく見れば給仕として忙しなく動いているケーリッヒも執事服。更にはシルヴィやフィーナ、ティエッタまでメイド服を着用していた。

 まあロロベリアがマヤの悪ふざけで着る羽目になった扇情的なものとは違い、普通のデザインだが伯爵家の令嬢にメイド服を着せてもいいのだろうか。


「それはアヤトの狙いっつーか、悪ふざけっつーか……」


 そんな疑問に対し呆れたようにディーンからは先ほど聞いたような台詞が。


「まあ俺やランが事前に宣伝しといたのもあるけど、こんな場所に来るのはほとんど平民だろ? んで、お前らみたいな貴族には分からないかも知れねーけど、俺ら平民は執事やメイドってのに憧れがあるんだよ。それに価格設定も押さえてるのにめっちゃ美味いし」

「つまり気分だけでも味わえるようにってわけっすか」

「ちなみにこの服、ティエッタ先輩んところのを借りてきた本物だぜ?」

「……ティエッタさんやご実家の方はなにも言わなかったんですか?」

「様々な立場を経験することも真の強者に必要なことってむしろノリノリだった」


 相変わらずティエッタの価値観は意味不明なのはさておいて。地元民で宿屋や食堂と顔の広い二人に宣伝させただけでなく、客層を考慮した発想も見事な商戦。


「あいつもう商会でも開けば良いんじゃね?」

「俺もそう思う。とにかくあそこ空いてるから座ってくれ。いい加減、仕事に戻らないとあいつにどやされる」


 隅のテーブルを指さしカウンターへ向かうディーンにお礼を告げて三人は席に着き、少ししてティエッタが注文を取りに来た。


「いらっしゃいませですわ。ご主人さま、お嬢さま方。こちらメニューになっておりますの」

「「…………」」

「ありがとうです」


 さすが普段から従者を身近で見ているだけあり見事な所作。しかし伯爵家の令嬢にされては微妙に申し訳なく思うロロベリアとユースを余所にリースは気にせずぺこり。


「こちらでは飲み物やお菓子は自由にお選びできますの。ですが飲み物、またはお菓子をお選び頂ければ、それに合った物をお勧めさせていただきますわ」


 ただ本人はディーンの言う通りノリノリの接客だった。

 それはさておきメニューには飲み物や菓子類だけでなく軽食も書かれていて、価格も平民に合わせてかなり安めの設定。

 加えてティエッタが説明する通りお茶に合った菓子類を給仕が勧めてくれるとも書いてあったが、これはエニシから譲り受けたレシピを参考にアヤトがアレンジを加えたのだろうとロロベリアは察した。


「では私はミルクティーで、お菓子はお任せします」

「オレはコーヒーを。あまり甘くない物のお勧めも」

「ケーキ類を全部。飲み物は何でもいい」

「かしこまりましたわ。では少々お待ちくださいな」


 最後までノリノリのティエッタがカウンターに向かい、改めて室内を見回せば誰もが満足げな笑顔で。

 アヤトの腕を知るだけに、これから出てくる料理は楽しみでもあるが。


「……大丈夫かな」


 開始早々この繁盛ぶりから、アヤトと精霊祭を楽しむ時間があるのか。

 加えて最も来場者数が多い最終日に序列保持者の四人が抜けて人手が足りるのだろうかとロロベリアは危惧していた。




ランがロロの恋を応援する為にメモを渡すやり取りが今作で今までにない学生っぽさ(笑)。


みなさまにお願いと感謝を。

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