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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第六章 兆しの精霊祭編
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蚊帳の外

アクセスありがとうございます!



 火精霊の周季から風精霊の周季に変わるとうだるような暑さが柔らかな風と共に大陸を流れ去り、徐々に過ごしやすい気候になる中、マイレーヌ学院は逆に熱気が帯び始めていた。

 精霊祭まで十日を切ると催し物を行う学院生らが割り当てられた敷地や施設で準備を始め、学院終了後も遅くまで残る者が多くなるからだ。

 もちろん講習に支障の無い場所や程度。しかし休養日を挟んだ三日前からは完全な準備期間に入るのである種当日よりも賑やかになる。

 まあロロベリアたち一学生にはあまり関係の無いこと。多くの学院生が催し物を開いて参加するが、それは学院生会を始めとする二、三学生が主体。入学したばかりの一学生は純粋に精霊祭を楽しむのが通例なのだ。

 故に上級生と余程の繋がりが無ければ主催側として参加することもない。


「……なんで?」


 はずなのに学院終了後、いつものようにニコレスカ姉弟と学食の清掃に向かったロロベリアは耳を疑った。

 なぜならいつもは訓練を申し出る序列保持者がいれば先に帰宅して相手をするアヤトがいた。

 ちなみに申し出がなくても先に帰宅して読書か掃除をしている。ロロベリアとしては一緒に帰宅しても良いと思うがそれはさておき。


「聞こえなかったのか。精霊祭まで掃除はしなくていいから帰っていいぞ」

「聞こえたから()()()なの。私は精霊祭であなたがお店を出すなんて聞いてない。しかも先輩方と一緒に」


 面倒気にアヤトが言い直すもそこではないとロロベリアは語気を強める。

 そう、学食にいたのはアヤトだけでなくティエッタ、フロイス、ラン、ディーンと騎士クラスと精霊学クラスの一学生が一人ずつ。今はケーリッヒに学食の清掃について説明を受けていた。

 しかもこの六人とケーリッヒは精霊祭でアヤトを中心に学食でカフェを開き、更に屋台も出すらしい。その打ち合わせや準備もかねて精霊祭まで早朝と夕方はロロベリアに代わり清掃を担当する。

 つまり学院生会にも事前に申請を出しているわけで、締め切りが半月前なのにどうして自分が聞かされていないのか。

 なのより学食を利用してケーリッヒと参加するのにどうして自分が頭数に入らず、この六人が加わっているのか。


「それをお前に報告する必要があるのか」

「あるでしょ。私も学食で働いてるのよ、教えてくれても良くない?」

「俺は秘密主義で白いのをからかうのが趣味らしいからな」

「……まだ根に持ってたの?」


 嫌味たっぷり肩を竦めるアヤトにロロベリアは脱力。どうやら一月前の失言が未だ尾を引いているようだ。

 それについては散々謝罪した。そもそも間違ってないのだから批判される謂われはない。


「だとしても……どうしてティエッタさんたちに声を掛けて、私が蚊帳の外なの」

「お約束の構ってちゃんが。問題のある奴に譲ってやれと言っただろう」

「……なおさら分からないんだけど」


 お約束をお約束で返されるが言うまでもなくティエッタは伯爵家、フロイスは専属従者なので自分以上に働く必要がない。ランとディーンは平民だが実家はラナクスでも人気の宿屋と食堂、アヤトに雇われなくても実家で働けばいい。

 更に騎士クラスのシルヴィ=モンドメルは父が騎士で、精霊学クラスのフィーナ=メェルファは両親が研究者と聞いている。二人も苦学生と言うほどでもないはず。

 故に納得できないロロベリアだが――


「俺が秘密主義以前に、あいつらの問題を話すわけにもいかんだろう」


 正論を言われては返す言葉もなく、納得できずとも従うしかなかった。



 ――しかしそれはそれ、これはこれでもやもやする。



 確かにティエッタ、フロイス、ラン、ディーンは休養日にしか来ていないエレノアやミューズ、学院生会の仕事で忙しくまだ一度しか来れらていないレイドやカイルと違って良く訓練に参加し、たまに夕食を共にしたりと交流を深めている。同じくらいシャルツも参加しているが彼は友人らと精霊祭に主催側として参加するから声を掛けなかったのは分かる。

 だが自分は別に誰かと何かをしようと声を掛けられてもなくて当日はもちろん暇、まあ精霊祭の最終日に序列持ちとしてルビラ、グリード主導のエキシビションに参加するがそれはティエッタたちも同じはず。

 それ以前に毎日朝食を共にして(なのに一緒に登校してくれない。いくら学食の仕込みがあるとはいえケーリッヒが居るからたまには午前の講習も出席すれば良いのにそして一緒に登校しても良いのに)昼食を共にして(学食のまかないでケーリッヒも一緒だが)夕食も共にしている仲、訓練だって毎日受けているし(新しい訓練が始まってからリースとユースはたまに休みがある)、学食の仕事で唯一雇われている(学院生としては)。なにより一番時間を共有しているはずなのに、精霊祭の出店で仲間はずれにされればもやもやして当然。

 しかもシルヴィとフィーナ。シルヴィはアヤトが騎士クラスの実技訓練に始めて参加した際、最初にボッコボコにされて以降、騎士クラスの中では一番交流があるのは聞いている。一番ボッコボコにされているとも聞いているし学食にも良く来ているから顔なじみになり尊敬しているのは感じているがそれはそれで同じクラスで一緒に訓練を受けているのは羨ましくてもやもやする。

 それにフィーナはアヤトが選抜戦で精霊力の解放の新たな見解を示したことで興味を持ち、幼なじみのシルヴィに頼んで最近学食に来ているから顔なじみとなり同じく尊敬しているらしいがやはりそれはそれでアヤトと知的な会話が出来るのも羨ましくてもやもやする。

 もちろん少しずつアヤトの良さを理解し、少しずつ慕う者が増えるのは喜ばしいこと。こうして学院にも少しずつ馴染んでくれるのは自分のことのように嬉しい。


 ――が、妙に女性比率が高くないだろうか?


 恐らく男性は同じ男としてアヤトの良さを受け入れきれない男の子の妙なプライドが邪魔をして素直に仲良く出来ないのかもしれない。

 なによりアヤトは目付きが悪いもすごく格好いい(←ロロベリア基準)。

 性格も気むずかしくて警戒心は強くて秘密主義で人をからかって無愛想で口も悪くて自己中だけども最近そこも可愛いと思えるようになってきた(←重症)。

 そして他の誰とも違う温かな優しさが良い、つまりアヤトの良さを理解すれば理解するほど女性が放っておかないのも分かるからもやもやする(杞憂?)。

 加えて精霊祭を一緒に楽しむつもりだったのに出店すればお仕事熱心で律義なアヤトのこと、まずお仕事優先になるだろうつまり一緒に楽しめないからもやもやする。

 なんせ精霊祭と言えばお祭りで場の一緒に回る男女の仲が雰囲気も後押しして進展したり、なにより言い伝えもあってカップルが増えるのだ。

 もちろん二人きりでなくリース、ユースも一緒に回るつもりでいたから男女の仲が進展とかアヤトが雰囲気に流されるとか微塵も思っていないがせめて最初の精霊祭くらい思い出を作りたいもちろん来年再来年も作るつもりだがそれはそれで出店すれば些細な望みが完全に絶たれてもやもやする。

 というのに主催に回れば同じ目標を共有し準備という共同作業からやっぱり男女の仲が進展したりするからもしがある。いや、ティエッタにはフロイスがいるし、ランにはディーンがいるから安心しているしやっぱりアヤトが共同作業を共にした程度でアレな感情は生まれないだろう。生まれるなら足手まといなりに何度も共同作業を共にした自分に抱くはず、なのに抱いていないのならやはり生まれないそれはそれでもやもやよりも悲しくなる。

 それは後の課題として今はシルヴィとフィーナだ。学食に来ても仕事中のアヤトは業務以外のお喋りをしない。なのに同じ騎士クラスのシルヴィはまだしもフィーナとはいつどこで精霊祭の出店に参加させるまでの仲になったのか。そして二人に良い人がいるとはまだ知らないがもし好意を寄せるようになったらライバルが増えるからもやもやする。

 そもそも精霊祭の話などいつしたのか。四六時中一緒にいるわけでもないし、そもそもアヤトの交友関係に口出しする立場でもないから報告する義務もないけども秘密にされるともやもやする。

 まあアヤトの秘密主義はいつものこと。それに今回は自分も秘密にしていることがあるからお相子だけどもやっぱりもやもやする――



()()()なぁ……姫ちゃん」

「あいつロロを振り回してばかりでむかつく」


 従っても納得できていないが故に帰宅中のロロベリアは終始無言、負のオーラにニコレスカ姉弟は心底同情していた。


「……まあ、考えても仕方ないわ。今はやるべきことをやりましょう」

「お? 復活したぞ」


 だが切り替えの良さもロロベリアの長所。アヤトに振り回されるのも馴れたものと前を見据える。

 精霊祭を一緒に回れないのは残念だがちょくちょく顔を出しに行けばいいし、少しでも時間が空いていれば誘えばいい。

 それに浮かれてばかりもいられない。エキシビションとはいえ先輩方は本気で出場する。例え唯一の一学生で序列最下位だろうとこちらも負けるわけにはいかない。


「どうせなら気持ちよく()()()()()()()()()()()()


 なら本番まで出来る限り対策と訓練をしておくのが今ロロベリアのやるべきこと。




すっかり定番となったロロのもやもやシリーズを執筆すると『この子大丈夫かしら……』と心配しつつとっても愛おしく感じてしまう作者です。

そして精霊祭に出店するのにアヤトがこの布陣を選んだのにもちゃんとした理由はあります。そちらについては後ほどですし、ロロの秘密のイベントももちろん後ほど分かります。


みなさまにお願いと感謝を。

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