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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第六章 兆しの精霊祭編
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言い伝え

アクセスありがとうございます!



 ルビラとグリードに妙な疑惑を持たれるよりは良いと判断し、アヤトの実力を話すことになった。

 もちろん関係のない経歴は省き、アヤトは序列保持者を圧倒するほど強く、合同訓練では稽古を付けてもらったこと。

 加えてラタニが学院生の今後を憂い、起爆剤として呼び寄せた意図も。


 当然持たぬ者のアヤトがそれほどの強さを得たかは疑問視されたが、ロロベリアらもラタニとの訓練については知らない。

 ただラタニがアヤトの才覚を見出し鍛えた結果と他のメンバーが知る情報のみを。


 最後に序列保持者が訓練を受けていることは悪目立ちになるから広めないようレイドが口止めをしてアヤト、リース、ユースの不参加が決定したことで序列保持者のみの企画案を練るルビラとグリードを残して解散することに。

 話し合いで遅くなるとロロベリアら事前に課題を終わらせていたので学食の清掃のみ済ませて帰宅を。


「そんなことよりも、あたしのこと『お姉ちゃん』って呼ぶ約束はどーなったのかにゃ~?」


 からの、ようやく軍務が一段落したラタニが帰宅(?)していたのでロロベリアがルビラとグリードにある程度でも話してしまったことを報告すれば興味なしと一蹴されてしまった。

 ちなみにリースとユースは現在アヤトの訓練中。というのもラタニと一緒にラナクスへ訪れたカナリアを治療役として使えるとアヤトが指名したのだ。


 帝国遠征時、ラタニだけでなくアヤトの尻ぬぐいをさせられた褒美として手に入れた特別休を利用して共同生活の様子を見にきたらしいが、帝国も王国も関係なくカナリアは振り回されていた。

 まあ本人もアヤトが訓練しているとは聞いているので手伝いも兼ねていた様子だったが、本当に面倒見が良いのはさておいて。


「学院外であたしをお姉ちゃん、って呼ばないならそろそろペナルティを与えちゃうぞ~?」

「……呼んでますが?」


 アヤトの素性はあまり知られたくないはずなのにそんなことよりもで一蹴されてしまうのは後で聞くとして、先ほどもアヤトの前で恥ずかしいのを我慢してお姉ちゃん呼びしたのになぜ批判されるのか。


「少なくともここであたしの話題が上がってる時は『アーメリさま』呼びしてるって聞いてるよ?」

「誰に聞い……マヤちゃん以外に居ませんね」


 王都に居たラタニにそんな告げ口が出来るのは他に居ないと、隣りで興味深そうに話を聞いているマヤにジト目を。


「将来姉様となるラタニさまとの約束を違えるのはそれこそ将来に関わるかと、お節介ながらも報告しています」

「……だから、将来とか……姉とか、よりも……そんな報告しなくても」

「マヤ、ロロちゃんが約束やぶる度に恥ずかしい思いする的な何かを神気で造れんかね」

「そんなお手軽に神気を使わせようとしないでください!」

「わたくしの力に制限があるのはご存じでしょう? 複雑な物は少し……せいぜいロロベリアさまにお渡ししたブローチが輝く、くらいですね」

「マヤちゃんもお手軽に変な機能付けようとしない!」

「なら今後はお約束を守るように。あたしも未来の妹にお仕置きするのは気が引けるんよ」

「こういうのは馴れですよ、ロロベリアさま」

「…………はい」


 ラタニとマヤのコンビもかなり面倒で振り回されるロロベリアだった。

 とにかく改めて約束を取り付けて満足したのか、ソファに身体を預けてラタニが話題を戻す。


「まーそっちについては気にしなくてもいいよん。つーかカナちゃんやモーちゃんが神経質なだけで、あたしは元よりアヤトがそれなりに強いのは隠すつもりないし。じゃなきゃひよっこ共の目を覚まさせる為にあの子呼ばないって」

「でも……悪目立ちしすぎると」

「あの子はじゅーぶん悪目立ちしまくりでしょ」


 ケラケラと笑われて返す言葉が見つからないとロロベリアは押し黙る。


「あたしの次に強いってばれちゃうと多少は面倒。どーせ持たぬ者がどーのーとか、どんなズルして強くなったんだーとかギャーギャー喚くバカが押し寄せてくる。可能性は低くともくそったれな真実に行き着くかもしんない」


 でも――とラタニはロロベリアの背後、訓練場へと視線を向けて。


「だからってあの子の頑張りを知られないまま、ってのはちょっちねー」

「…………」

「あの子の強さはくそったれな時間過ごして、色んなもん犠牲にして手に入れたんだ。お姉ちゃんとしてそこはどーかなーって複雑だけど、あの子がただのクソ生意気なガキって思われるくらいなら……頑張って手に入れたもんくらいは知って欲しいわけよ」


 視線は訓練場にいるアヤトに向けているのだろう。

 普段から柔和で、コロコロと表情の変わるラタニがこの表情を見せるのはいつもアヤトについて語る時で。


「まあ? あの子は別に知られようと知られまいとどーでも良いし、誰かに知って欲しいから頑張ったわけでもない。なら実力云々を知られるのも知られないのもあの子の好きにすれば良い。面倒ごとになったら、あたしらが守ってやれば良いだけだからねん」


 姉として弟の身を案じるような、姉として弟の成長を誇らしく思う特別な優しい笑みは本当に大切なんだと言葉以上に感じさせる。

 アヤトが常識を覆すまでの努力を知るからこそ、本人の望むようにさせてあげたい。だから他とは違って、実力を知られようとそんなことで済ませられる。


 そして口にはしないが、アヤトもそんなラタニだからこそ誰よりも信頼している。

 実力だけでなく様々な面でも二人は隣り合っていると、二人の間には特別な絆があると思わせた。


「だから気にせんでいいよん。まあもし面倒になればカナちゃんが居るし、あの子はアヤトの尻ぬぐいをさせたら右に出るものはいない言い訳の天才だ」

「……カナリアさまが不憫です」


 故に最後はお惚けで締めるラタニに苦笑しつつもロロベリアは少しだけ悔しい。

 以前マヤが口にしたようにアヤトを最も理解しているのはラタニだと、こうして絆を見せつけられると痛感する。


「アヤトだけでなく、お姉ちゃんの尻ぬぐいまでさせられてるんですから」

「あたしはあいつほどさせてないって」


 ただ嫉妬以上に憧れを抱ける人だからこそロロベリアも悔しくとも笑顔を向けられる。


「とにかくお姉ちゃんがそこまで言うなら私も気にしません」

「そうしときんさい。つーかロロちゃんはもっと気にすることあるでしょうに、精霊祭と言えばクソ恥ずかしい思春期大好きな言い伝えがあんでしょ?」

「……言い方」

「あらあら、ロロベリアさまが気になさる精霊祭の言い伝えとはどのようなものでしょう。実に興味をそそりますわ」


 のだが、この話は終いと話題を変えられロロベリアは肩を落しつつ、面白そうな話題が大好きなマヤに説明することに。

 ラタニの指しているのは精霊祭の締めとして最終日の夜に打ち上げられる花火のこと。学院生会が中心で準備するが毎年学院生の催しとは思えないほど見事で、まさに最後を彩るに相応しいと有名なのだが『最後の花火を手を取り合い、一緒に見上げた男女は末永く結ばれる』との言い伝えも同じく有名。

 なんでも先代国王陛下と王妃が精霊祭の夜に結ばれた際、共に花火を見上げていたことから始まったらしく、王族の真似をしたい、あやかりたいとの憧憬から言い伝えとして残っている。


「なんともロマンチックで、他力本願な人間が好みそうな言い伝えですね」

「マヤちゃんは褒めたいの? 貶したいの?」

「いやいや、マヤの気持ちも分かるって。お手々繋いで花火みたら末永くお幸せって……クソ恥ずかしい以外のなんなんよ。だいたいその言い伝えにあやかってお幸せになったカップルって何組いるのかね~」

「少なくともお義父さまとお義母さま、国王さまもお幸せですけど……」


 ラタニがぼやくように所詮は言い伝え、しかし言い伝えを批判していればキリがない。なによりこうした言い伝えを切っ掛けに勇気を出す者もいるわけで、現に学院内外関係なく精霊祭の最終日に多くのカップルが誕生しているのだ。

 まあ恐らく幸せなカップルよりも破局したカップルの方が多いだろうが、こうしたロマンチックな言い伝えが大好きなロロベリアは夢のない物言いに反論せずにいられない。


「じゃあロロちゃんもあやかるんでしょ? ならあたしも協力したげるよん。可愛い未来の妹の為だ、あいつボッコボコにして適当にポイしておくからお手々繋いで花火見るといい」


 そして協力してくれる気持ちは嬉しいが可愛い未来の妹よりもまず弟の身体を心配して欲しいし、当然アヤトは反撃するだろう。二人が本気でやり合えば間違いなく精霊祭どころではなくなる。

 なによりボッコボコにして適当にポイされたアヤトとお手々繋いで花火を見上げる光景は全くロマンチックじゃないし、あやかるどころか不安な未来になりそうだ。


「いくらラタニさまでも兄様をボッコボコにするのは容易ではないかと。わたくしで宜しければお力添えいたしますが? もちろん対価は頂きますが」

「……遠慮しておく」


 更にマヤが申し出るも神に対価を払ってというのは何か違うし、どんな方法でお力添えをするのかが想像も付かないだけに怖い。

 そもそもなぜこの二人はロマンチックな言い伝えを力業で叶えようとするのか。変なところで気が合うと呆れてしまうはさておいて。

 協力と言うより、ラタニに相談したいことがあったロロベリアは良い機会と。


「その精霊祭ですが、お姉ちゃんも知ってますよね?」

「ん? なにをかにゃー」

「最終日が――」


「やれやれ」


「…………」


 切り出す寸前、訓練場からアヤトが現れ言葉を飲み込んだ。


「おやアヤチン。もう遊び疲れたんかい?」

「誰がアヤチンだ。飯の支度があるからカナリアにお守りを任せたんだよ」


 声をかけるラタニに答えつつアヤトは脱いだコートを椅子に掛け、朧月と新月をカウンターに立てかける。


「本物の精霊術士との手合わせはあいつらにも良い経験になるしな」

「んじゃ、あたしもお守りしてこようかねぇ。アヤトのご飯も久しぶりだし、お腹ペコリンにしとかないと」

「お前は本物のバケモノだろうが」

「同じバケモノに言われたくねー」

「とにかく腹空かしたいなら白いのと掃除でもしてろ。両方とも使えねぇからな」


 その通りだが微妙に傷つくロロベリアを無視してエプロンを身につけキッチンへ。


「と……ごみんごみん。ロロちゃんの話が途中だった」

「……お気になさらず」

「そう? ならお姉ちゃんと仲良くお掃除だ。もち、マヤも一緒にねん」

「了解です」


 ラタニがしばらく滞在するならまた機会もあるだろうとロロベリアは首を振り、夕食が出来上がるまでマヤを交えた三人で掃除をすることになった。




アヤトとラタニも大概ですが、マヤとラタニという組み合わせも質が悪い……というよりこの三人が揃うと色んな意味で最強説。


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