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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第五章 帝国の英雄編
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言葉足らず

アクセスありがとうございます!



 出来ることなら今すぐアヤトに色々と問い詰めたいロロベリアだが、場が場なだけにぐっと堪えることに。

 そんな我慢をしている中、改めてエニシがお茶の用意を。刀の扱いも見事だが執事としての技量もかなりの物で一連の手つきは優雅で淀みがない。


「爺やの煎れる茶は口に合うかのう」

「はい……とても美味しいです」


 レイドやエレノアの屋敷にいる従者の煎れたお茶も美味しいが、エニシのは更に美味しくロロベリアの表情と緊張感が自然と緩むほど。


「そうであろう? なんせ爺やの煎れる茶は帝国一じゃ」

「お嬢さま、褒めても焼き菓子しかお出しできませんよ?」

「菓子の腕前もまた帝国一なら充分じゃろうて」


 賞賛を聞いたサクラは自身のことのように喜び上機嫌に焼き菓子を頬張る。その所作はおよそ皇女とは思えないが、エニシとの態度は主従と言うより友人のように気さくで。

 呆気にとられるロロベリアを余所にサクラは一人のんびり茶と菓子を楽しむアヤトに視線を向ける。


「アヤトはどうじゃ?」

「見事としか言いようがねぇよ」

「そうじゃろうそうじゃろう」

「特にこの焼き菓子。隠し味の果汁が茶の味を引き立てているな」

「お気づきになりましたか」

「出来れば作り方をご教授してもらいたいものだ」

「ではお帰りの際にメモをお渡ししましょう」

「すまんな」


 さすが料理が得意なだけあり興味を示すアヤトに、自身の仕事に気づいてもらえたエニシは嬉しそうだがサクラは意外そうに眺めていて。


「アヤトは菓子作りをするのか」

「たまに、だがな」

「こう言ってはなんじゃが、意外なものよ。ロロベリアは食うたことはあるのか?」

「焼き菓子はありませんが、普通の料理なら。アヤトは学食の調理師をしているので」


 むしろお菓子も作るのかと新たに知り是非食べてみたいと内心思っていたが、この返答にサクラとエニシは顔を見合わせ――


「学食の調理師、でございますか?」

「お主は騎士クラス所属と聞いたが?」


 疑問の視線を同時に向けられ、ロロベリアは余計な情報を口にしたと後悔してしまう。

 二人がアヤトを知ったのは代表に関する資料。なら特別学院生や学食で働いているまでは記載されていない。加えて事情を説明すれば、変に勘ぐられるとは予想できる。


 だが無視するわけにもいかず、仕方なくアヤトが学院に訪れた経緯を説明することに。


「……選抜戦前になって急にか。これでは妙な憶測を抱いてしまうのう」


 疑問は解消されたが、やはりとロロベリアは項垂れる。

 ラタニ経由で赴任したまではいい。二人が師弟関係との情報は謁見時に伝えている。

 しかし調理師として呼ばれたアヤトが選抜戦前に特別学院制度を利用して騎士クラスに所属。こうして代表に選ばれたのなら裏があると思われるのも仕方ない。

 まさか国王の依頼が関係しているなどと言えるはずもなく、そもそもロロベリアはどう関係しているかも知らないので返答に窮してしまう。

 ちなみに当のアヤトは我関せずとエニシに茶のおかわりを頼むマイペースっぷりで。


「まあ妾が気にしても仕方がないか。それよりもお主の料理か……どれほどのものか食べてみたいのう」


 だがサクラが首を振り、別に興味を向けてくれて安堵を。


「皇女さまのお口に合うものでもねぇよ」

「どうも爺やが言うようにお主はいけずのようじゃ。ロロベリア、実際はどうなんじゃ?」

「元々は人気のない学食でしたが、アヤトが赴任してから繁盛するようになったので美味しいと自信を持ってお勧めできます」

「ほれ、そこでお主もなにも出んといわんか」


 知られたなら良いだろうと開き直ってロロベリアが絶賛すればサクラから妙な物言い。

 どうも自分たちのやり取りをアヤトにも求めているらしいが、当然乗るはずもなくむしろ冷ややかな視線を向けられる。


「アホか。お前は俺に何を望んでんだ」

「やはりいけずめ……」


 皇女相手にこの返し、まあサクラが気にしないのなら口を挟むまでもないとロロベリアは気にせず焼き菓子に手を伸ばし――


「ところで今回の席にロロベリアを同行させるのが条件と口にしたそうじゃが、そもそもお主らはどのような関係かのう」

「飼い主と飼い犬だ」

「……は?」


「アヤトっ?」


 思わぬ返しにサクラがキョトン、さすがのロロベリアも口を挟む。


「なんだ、違うのか」

「違うでしょう! 私たちは……その……」


 しかしからかうアヤトに言葉が出てこない。


 友人と呼べないこともないが、それにしてはお互いを知らなさすぎるし否定されると辛い。

 共に住んでいた家族……これもアヤトがクロの記憶を失い、過去と決別したことで何か違う。更に言えばこの内容をサクラに知られれば先ほど以上に厄介な説明をするはめになるので口に出来ない。

 学食の調理師と従業員……の関係程度で皇女のお茶会に同行させるのも違う。

 考えてみればアヤトとの関係は難しく、どう言葉にしてもしっくりこない。

 そもそも飼い主と飼い犬はどうだろう? 確かにそんな扱いは受けているし、気にしてはいないがもやもやする。好きと伝えているのに相変わらず信じてもらえないのは実力不足や成し遂げた積み重ねが少ないので仕方がないとはいえ少しずつ認めてくれている素振りを見せる。信頼もしてくれるのも嬉しい……が、ならもっと態度で示して欲しくてもやもやする。

 先ほどの意味深な発言もそうだ。サクラやエニシに触れさせるのを拒むほど大切な朧月を触れるどころか使わせてくれてるし思わせぶりな発言や態度も少しずつ増えて嬉しいけどもっとハッキリと現してくれないからもやもやする。

 だからみんなから特別な存在を言われても素直に受け入れられず戸惑いばかりで嬉しいよりももやもやするし、今のやり取りならここでアヤトにとって自分がどんな存在か、または関係かを答えてくれてもいいじゃないか。

 大切な人なんて期待はしてない、友人と口にしてくれるだけでも認めてくれるんだと喜ぶのに、こうした肝心な時に交わすのはアヤトの悪い癖でもやもやする。


 などとアヤトの態度でもやもやしていたロロベリアが出した結論は――


「遊び相手でしょう!」


 とても言葉足らずで安直なものだった。


「……どうやら、あまり踏み込んではならん関係らしいのう」

「違うんですサクラさま!」


 故にサクラも顔を赤らめどん引き、この反応でロロベリアも我に返る。


「遊び相手というのは訓練というか……アヤトは模擬戦を遊びと称するので……つまりですね、私はアヤトに鍛えてもらっているんです!」


 飼い主と飼い犬との発言から遊び相手とくれば邪推してくださいと言っているようなもの。いくらもやもやからの勢い発言とはいえこれはないと身振り手振りで説明を。


「そ、そうか……。しかしお主は精霊術士であろう? 妾と同じ持たぬ者であるアヤトに鍛えてもらっているというのはいささか信じがたいのじゃが」


 お陰で誤解は解けたが新たな疑問を抱かれてしまう。

 精霊力を持つ者を相手にできるのは精霊力を持つ者のみ、これは国関係ない常識。

 だがロロベリアの言い分ではアヤトの方が強いと言っているようなもの。

 ロロベリアの安直な発言にも動じずお茶を楽しんでいたアヤトをサクラは探るような視線を向けて。


「聞けばお主はあのラタニ=アーメリの弟子らしいが、真意はどうなんじゃ?」

「戦い方を教わった、との意味なら間違ってねぇよ」


 お茶を飲み干したアヤトは煩わしげな視線を返し。


「つーか腹の探り合いはもういいだろう。美味い茶と菓子の礼代わりにお前の目的をひとつ叶えてやるよ」


 直球な物言いにサクラだけでなくエニシの瞳も大きく見開かれるが構わず続けた。


「持たぬ者の俺がどれほどのモノか、実際に確かめたいんだろう」

「……確かめさせてくれると?」

「ま、補欠で出場機会がないとは言え一応代表だからな。情報を漏らさんと約束できるのなら、そこの爺さんと遊んでも構わんとラタニにも許可を得ている」

「どうやら……話が早いのはラタニ=アーメリも同じのようじゃ。ほんに妾らをどこまで知っておるのやら」


 いつの間にラタニからそんな許可を得たのだろう、と疑問に思うロロベリアも次の展開は簡単に予想できる。


「俺もあいつもお前の目的が何かまでは知らんし、さほど興味もねぇから安心しろ」

「少しは興味を抱いて欲しいものじゃが……お言葉に甘えさせてもらうぞ」


 アヤトが興味を示していた強者――エニシとの手合わせが実現すると。




ロロのもやもやシリーズが入れられて作者満足。


みなさまにお願いと感謝を。

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また感想もぜひ!

作者のテンションがめちゃ上がります!

読んでいただき、ありがとうございました!

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