挑発
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いくら許しを得てもラタニの態度は行き過ぎていた。
だが精霊力も解放していない相手で大使でもある、攻撃を仕掛けては国際問題は免れない。
なのでリルクは二人の間に割って入りベルーザに跪き、緊張の面持ちで進言を。
「これ以上はどうか! どうかおやめください!」
「…………ふん。部下の言葉を聞き入れるのも次期皇帝の勤めか」
頭を垂れた必死な訴えに、興が冷めたと言わんばかりにベルーザは精霊力を解除。
しかし一度火のついた怒りは納まらず最悪な事態を免れて安堵するリルクからラタニへと戻す瞳には明らかな敵意が表れていた。
「だがラタニ=アーメリよ。先ほどの失言、撤回する気はないか」
「失言した覚えないんで、撤回もなにもねぇ」
そんな敵意も無視で相変わらず不遜な態度を崩さないラタニだったが、青を通り越して白くなっていくリルクを一瞥して仕方ないとため息一つ。
「でもまあ? そんなに遊んで欲しければひよっこじゃないって示してくれれば、考えなくもないけど」
「……つまり王国のひよっこ共を圧倒すれば良いのだな」
「できるかにゃー」
「造作もない」
リルクへの配慮が功を奏し、ベルーザの表情は怒りから喜色に変わった。
「なんせ王国は持たぬ者を代表にする程まで人材不足らしい。勝てぬと理解し言い訳に走るような弱者の集まりなど、それこそひよっこ共ではないか!」
そのままラタニの背後を見据え演説するように両手を広げ、レイドら王国代表を完全に見下した物言い。
この発言にリルクが再び項垂れるも侮辱を受けたレイドらから反論は上がらない。
「図星を指されて何も言い返せないか。それとも遠吠えすら忘れたのか。どちらにせよ親善試合はつまらぬ物になりそうだ」
この反応に自分の実力を目の当たりにして臆していると捉えたベルーザは更に煽るも、ようやく学院生の制服を着ているのが一一人しか居ないことに気づき。
更に壁面にもたれ掛かり青い糸を指に絡ませている人物を見つけるなり嘲笑する。
「……お前が王国の言い訳か」
制服ではなく黒いコートを羽織っているも、ここに居るメンバーで唯一精霊力を感じないことからそれが王国代表の持たぬ者――アヤトだと理解し。
「何をしているか知らんが、まさに仲間はずれだな。我ら精霊に認められ、寵愛を受けた選ばれし者と見向きもされない雑魚よ」
「…………」
「それにしても言い訳の扱いと知りながらよく我が領土を訪れたものだ」
「…………」
「お前にはプライドというものがないのか……それとも王国から言い訳になる変わりに報酬を積まれたのか?」
「…………」
「おい、何か言ったらどうだ?」
「…………」
「キサマ……精霊に見向きもされない雑魚の分際で……」
「…………」
「精霊の寵愛を受けし私を侮辱しているのかっ!」
これ見よがしに煽るも返答どころか顔すら上げない完全無視、ラタニどころか持たぬ者にまでこのような態度を受けてベルーザは再熱した怒りのまま歩み寄る。
侮辱も何もアヤトに、持たぬ者に対して王国なら処罰クラスの差別的な侮辱発言をベルーザがしているのだがそれはさておき。
口を開こうが開かまいが結局問題を起こすのかと嘆息しつつカナリアが予定通りの言い訳で取り繕うとするより先にロロベリアが動いた。
「――彼は喉を悪くし言葉を発せられないだけです」
アヤトのところに行かせまいとベルーザの前に立ちふさがり、変わりにこの場を収めてくれたとカナリアも安堵を。
「それよりもベルーザ殿下、進言を宜しいでしょうか」
「許そう」
「では――本物の強者とは己の力を安易に誇示しないものです」
したのだがロロベリアはベルーザを真っ直ぐ見据えて。
「少なくとも私の知る本物の強者は己の力を見せびらかすような真似も、自らケンカを売るような安い真似もしません」
あろう事か不敵な笑みまで浮かべて挑発。
「なのでご自身を強者だと自惚れるのなら、少し弁えては如何ですか?」
「…………」
これにはカナリアも『なぜあなたがやらかす』と裏切られた気分に。
それはさておき、ロロベリアの挑発まがいな忠告にベルーザは唖然となり。
「はっはっは! なるほど、王国にはラタニ=アーメリ以外に変わり者が居るようだ。私に対してその進言」
更に怒るどころか上機嫌でロロベリアの乳白色の髪や顔を観察するように注視を。
「見目も悪くない……気に入った」
「……どうもです」
「だが強者だからこそ手の内を隠さず堂々とするものだろう」
その視線に悪寒を感じるロロベリアを余所にニヤリと口角を上げてベルーザは踵を返す。
「故に私たち帝国代表の実力を包み隠さずお見せしようではないか。我々は帝国軍屋外演習場で調整を行っている。いつでも偵察に来ると良い」
最後まで傲慢な態度を正すことなく、帝国代表メンバーに目配せして共に闘技場を去った。
「……申し訳ありませんでした」
「お気になさらず」
微妙な空気の中、リルクが疲れ切ったように王国メンバーへと頭を下げると、カナリアが首を振り。
「隊長も大概でしたからここは痛み分けということで」
「えー。皇子が良いって言ったからなのにー」
「「……はぁ」」
共に苦労する上司を持つ者同士の深いため息が重なった。
ロロベリアも随分と感化されています。
みなさまにお願いと感謝を。
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作者のテンションがめちゃ上がります!
読んでいただき、ありがとうございました!