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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第五章 帝国の英雄編
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実力と評価

アクセスありがとうございます!



 代表同士の顔合わせは貴賓室で行われる予定だった。


 しかし場所どころか予定時刻も早くベルーザを先頭に帝国代表の所属するガルディス学院の学院生が東門の陰から次々と現れる。

 マイレーヌ学院と同じように創立当時の皇帝が精霊士だったこともあり、ベルーザを加えた一二人はアメジストのような紫を主体としたデザインの制服を纏っている。

 ただマイレーヌ学院とは違いガルディス学院には二種類の制服が存在する。

 デザインや色合いは同じでも、制服の袖に精霊力を持つ学院生には金糸の刺繍があり、持たぬ者の学院生にはない。

 些細な違いだが、この違いこそ精霊士や精霊術士を尊重する、実力主義な帝国の一面を表していると言えるだろう。


 そしてここにいる帝国代表の学院生全ての袖には金糸の刺繍が、言うまでもなく全員が精霊術クラスや精霊騎士クラスに在籍している学院生で。


「殿下、なぜここにっ?」


 とにかく予定を無視した登場、隠すことない挑発的な態度に慌ててリルクが間に入る。

 しかしベルーザは態度を改めようともせず、高圧的な笑みを浮かべた。


「よいではないか。それよりもラタニ=アーメリといえば我が帝国にまで名を轟かせる最強の精霊術士であると同時に、少々変わり者と聞いているが……拍子抜けだ」

「王国代表としての立場もありますから」


 横柄な物言いをされてもラタニは涼しい表情、ただ芝居くさい一礼でにっこりと。


「殿下がお許し頂けるなら別ですけど」

「許そう」


 許しを得るなり笑みだけでなく、雰囲気までも普段の人を食ったようなそれへと変わり。


「では遠慮なく――そちらさんは何しに来たのかにゃー?」


「隊長っ?」

「アーメリ殿っ?」


 口調を含めて完全に本性をさらけ出し、カナリアだけでなくリルクまでも驚愕。

 先に挑発したのはベルーザ、しかしいくら相手側が先でも、学院生だろうと皇族相手にこの対応は帝国内では完全に不敬罪。

 故に他の面々も驚き、帝国側の代表は不快を露わにするも、一瞬呆気に取られたベルーザはすぐさま笑みを取り戻す。


「私が許したのだ、よい」


 本人から念を押されれば止めるわけにもいかず周囲が見守る中、ベルーザが一人歩を進めてラタニと向き合い。


「なに、早く顔合わせをしておきたいと出向いたまでだ」

「それはまたせっかちなことで。まあ? それだけでもないんじゃまいか?」

「分かっているではないか。王国最強がどれほどのものか、次期皇帝としてこの機会に確かめたくてな」

「つまり狭いお部屋で遊べないから、ここで遊ぼうと足を運んだと」

「やはり分かっている」


 両方とも笑顔を絶やさず繰り広げるやり取りは実に心臓に悪く、特にカナリアとリルクは顔色が悪くお腹に手を当てていた。

 まあこんな状況下に置いてリースは平然と、アヤトに至っては完全無視で一人集団から離れ壁面に寄りかかりあやとりを始めていた。

 それはさておき、微妙な空気も何のその。実力だけでなく変わり者との評価も帝国まで轟かせるラタニは留まることを知らず。


「でもねぇ……今回は学院生同士の試合――ひよっこ共のケンカにお付き合いしちゃったらあたしが国王さまに怒られるんで」


 ベルーザの挑戦状を、完全に眼中にないとの物言い。

 この行き過ぎた発言に今度こそカナリアが止めに入ろうとするも――


「くくく……そうか、私をひよっこと呼ぶか。なるほど、少々どころではない変わり者にみえる」


 不快どころか感心したようにベルーザは笑い、紫がかった銀髪と青い瞳がルビーよりも鮮やかな紅へと変わった。

 同時に溢れる精霊力は王国代表で最も保有量のあるリースと同等、いやそれ以上か。


 更に当然の解放に戸惑う周囲を余所にベルーザは両手を掲げ――


『――()()


 精霊力を込めた声と共に両手から火柱が立ち上った。


「これでもまだ私をひよっこと口にできるかな?」


 燃え盛る火柱を掲げてベルーザが得意げに問いかける。

 この火柱は言霊で顕現した精霊術によるもの。

 しかし意味のないかけ声で発動させた。

 これは合同訓練時にラタニが見せたオリジナルの発動法の一つ。


 それを学院生で可能としたベルーザの実力は噂通り天才と呼ぶに相応しい。


 さすがにリースも含めた王国側は言葉を失う。

 ただベルーザを含めた帝国側は、未知の発動法に驚いていると勘違いしているのか嘲笑の笑みを浮かべている。

 もちろん知る知らない関係なくラタニのみが可能とする発動法をベルーザが扱えただけでも驚嘆に値するのだが。


「なーるほーどねー。こりゃ凄い」


 目的のラタニが驚くどころか眉一つ動かさず、むしろ興味なさげで。


「これなら王国うちのひよっこ共と違って、卵のカラは取れてるひよっこと訂正しないとダメかにゃー」

「……ほう」


 更に評価を変えても結局ひよっこ扱い、これにはベルーザも目を細める。


「さすがは王国最強と謳われるだけあり、度胸もあるようだ」

「そりゃどうも」

「しかしこの程度の遊戯で私を判断するのは少々早計ではないか?」

「確かに先入観はいかんね。ひよっこにもクチバシあるし、突かれたら痛そうだ」


『ならば――』


 どこまでも淡々とした態度にベルーザは目を見開き、心情を表すようにゴウッと火柱が更に激しく燃え盛る。


「痛いで済むか、その身で味わったらどうかなっ!?」

「いや、だからひよっことケンカしたら国王さまに怒られるんだって」


「まだ言うか……っ」


 それでも相手にしないラタニに、ついには臨戦態勢に入り――


「殿下!」


 一触即発な状況下に痺れを切らしたリルクの叫び声が闘技場内に響き渡った。




みなさまにお願いと感謝を。

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読んでいただき、ありがとうございました!

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