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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
外伝 はじまりの物語
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序章 邂逅

アクセスありがとうございます!



 始まりは偶然だった。


 王国内のとある町で孤児院や教会で保護されなかった孤児、ストリートチルドレンが姿を消した。

 それだけなら特に問題視されなかっただろう。いや、自警団もストリートチルドレンの訴えを気にしていればキリがないと問題にすらならないのが日常で。

 ただその町にたまたま軍務帰りに立ち寄った一人の精霊術士が問題にしたのだ。

 若いながらも実力は王国随一。しかし若い故か変わり者で国王に忠誠はあれど有力貴族に煙たれているある意味問題児の精霊術士、ラタニ=アーメリが。


「お友達がいなくなっちゃったの……」


 見窄らしい格好をした幼い少女が自警団に相手にされず泣いているところを目撃したラタニは手を伸ばした。

 同僚や先輩らは咎めることなくラタニの行動に呆れるのみ。

 変わり者なのは今さらなので格調高い上位精霊術士の証でもあるローブで少女の顔を拭く行為に注意もしない。

 彼女の奇行は日常茶飯事、注意していればキリがない。

 職務に真面目ならそれでいい。

 これがラタニを知る者の共通認識で。

 少女にお友達を探す約束をして別れた後、本当に探すつもりかと問いかけた際も。


「いやいや、頑張ってみるとは約束したけどさすがにね~。お嬢ちゃんのお話しで国が動いてたらキリないっしょ」


 しれっと少女に対する一時しのぎの優しさを口にするラタニにやはり同僚や先輩らは呆れていた。

 ただ返答に含まれていたラタニの真意に気づかないまま。


 この僅か二ヶ月足らずでその真意が明らかになる。


 少女の訴えで国が動いていればキリがない。

 だから国が動くに足る理由をラタニは探った。

 と言ってもラタニも最初は少女に頑張ってみると言った手前、とりあえず一人で頑張ってみた結果で。

 ただその一人が王国最強の精霊術士で、学院生が故に軍務は非常勤と時間的にも余裕があったに過ぎず加えて精霊術以外の能力があり過ぎた。


 つまり様々な面で優秀で、時間に余裕のある彼女が一人で頑張れば下手な大規模捜査よりも効率が良く、更に単独行動が故に目立つことなく調べることができて。

 少女の話を聞いた町以外でも、一定の期間でストリートチルドレンが姿を消していたとの情報。

 この一定の期間と各町や村の範囲、タイミングを照らし合わせればまるで怪しまれない程度に計算されているように感じたラタニは孤児という共通点から、更に捜査の足を伸ばしたのが孤児院や教会。

 王国各地の孤児院や教会でも、一定の期間で同年代の少年少女が引き取られていた。これだけなら当然なにも問題はない。

 ただ同じように範囲、タイミングを照らし合わせれば遠くの町で暮らすからと引き取られて以降、なんの便りもないという共通点に加えて全てが持たぬ者という事実が発覚。

 しかも調べた限りでもこの三年で二〇〇人以上の少年少女が消息を絶っていた。


 さすがに不信感を抱いたラタニは更に本腰を入れて時間と精霊力の許す限り捜査を続けた。


 僅かな情報、足取り、共通点を探り続けた結果――亡くなった両親と親しかった貴族と、その領地が怪しいとまで結論づけ。

 更に調べ上げた結果、ついに真相にたどり着いた。

 

 王国内で人工的に精霊術士を生み出す非合法な実験が行われていると。


 真相にたどり着いたラタニはすぐさま行動に移した。

 調べ上げた全ての情報、証拠を秘密裏に国王へ報告。

 精霊が神聖化されている世界でこの実験が明るみに出れば王国の立場が危うくなるとの判断ができる辺りがラタニ。

 故にほぼ単独で続けたことも評価されたのだが、とにかく国王もこの実験を重く捕らえ、すぐさま裏付けを取り討伐部隊を編成。

 貴族と研究施設の同時摘発。情報漏洩を防ぐために最少人数で、しかし最大戦力を注ぎ込んだ。


 貴族家の摘発には王国最強の精霊騎士、サーヴェル=フィン=ニコレスカを中心とした精霊騎士団を数名。


 そして領内外れの地下にあると推測される研究施設の襲撃には今回の功労者であり王国最強の精霊術士、ラタニ=アーメリを中心とした精霊術士団を十数名。


 深夜の内に行われた秘密裏の作戦は貴族家の摘発のみ上手くいった。

 しかし襲撃班が闇夜に紛れて機会を窺っている中、その研究施設があるであろうポイントから轟音と共に火柱が上がった。

 何かの事故か、それとも作戦に気づかれて証拠隠滅を計ったか。

 分からないながらも、ここでもラタニがすぐさま動いた。

 他のメンバーの制止を振り切り飛翔術を駆使して火柱の上がった場所まで移動。

 相当の威力だったのか周辺の木々は薙ぎ倒され、爆心地は抉れて大きなクレーターが出来ていた。

 悲惨な状況を目の当たりにしたラタニは気持ちを切り替え、生存者の捜索に移ろうとした。


 ただ言い表せない悪寒が走り、ラタニは無意識に薙ぎ倒された木々に視線を向けた。


「…………っ」


 そこで闇夜に紛れるかのようにたたずむ少年が見上げていた。

 王国でも珍しい特徴を持つ少年の黒い瞳と視線が交わる。


 ボロボロの黒いローブのような物を羽織り、乱雑に伸ばした珍しい黒髪の隙間から見える黒い瞳は虚空を眺めているように虚無、なのに刃のような鋭さを感じる。


 年齢的に被害者の一人だろうか。

 もし生存者ならば保護をする必要がある。


 だがラタニは警戒も含めて数メル離れた場所に着地。

 精霊力を全く感じないなら持たぬ者。

 しかしラタニは元より精霊力で相手を判断しない。

 自分の直感を信じるならば、この少年は何かがヤバイと告げている。


「……あんたは誰だい?」


 故に緊張感を絶やさず、臨戦態勢も崩さず問いかけた。


「テメェこそ誰だ」


 すると声変わりもしていない少年のとても面倒げな質問が返される。

 それだけでラタニの背中に冷や汗が。

 いったい自分は何に怯えているのか。

 分からないながらもラタニは更に警戒心を上げて対話を試みる。


「……は?」


 ようとした矢先、目の前の少年がまるで糸が切れた操り人形のようにドサリと倒れてしまった。

 余りに見事な倒れっぷりにさすがのラタニも呆気に取られてしまうも――


『あらあら、ようやく助けが来たと安心して緊張の糸が切れたようですね』


「――っ! だ、誰だいっ?」


 不意に聞こえる声にすぐさま緊張感を上げて周囲を見回す。

 しかし誰もいない。

 気配も、精霊力も感じない。


『誰……と言われましても』


 なのにハッキリと聞こえる。

 男のようでいて女のようで、困ったように感じるのに無機質に聞こえる奇妙な声が。

 いや、聞こえると言うより脳内に直接語りかけるように響く。

 謎の少年、不可解な現象の数々に戦慄を覚えるラタニを余所に。


『そうですね……あなた方人間で言うところの、神と呼ばれる存在でしょうか』


 脳内にそう語りかけられ。


『それよりもそこで倒れている人間を早く助けてくれませんか? せっかく契約を結べたのに死なれては面白くないので』


「神……契約……?」


『そろそろあなたのお友達らしき人間が到着するようなので、詳しくは後ほど。ええ、わたくしの契約者を救ってくださるならば、ささやかなお礼として教えてさしあげます』


 戸惑いも無視して一方的な要求を告げて。


『神の名に誓って……なんて』


 クスクスと笑った。




読んで頂いた通り外伝の内容はラタニとアヤトの出会いがメインです。

ザックリと描きますが楽しんで頂ければなと思います。


また本編とは関係ないのですが明日から新作を投稿予定。

タイトルは『夢は叶うのものですか? ~タネや仕掛けで叶えましょう~』と本作や別作品とは違い残念なキャラとハイテンションな主人公が田舎で繰り広げるドタバタ劇です。

わりとサクッと読める内容なので是非ともよろしくお願いします!

もちろん今作も滞らないよう必死に執筆中なので……。


みなさまにお願いと感謝を。

少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークへの登録、評価の☆を★へ!

また感想もぜひ!

作者のテンションがめちゃ上がります!

読んでいただき、ありがとうございました!


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