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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第四章 つかの間の休息編
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終章 月下舞踏

アクセスありがとうございます!



 サーヴェルに案内されるままロロベリアは壮行会を抜け出した。

 途中すれ違う使用人や護衛もサーヴェルが夜風に当たらせると話せば納得してくれて問題なく屋外へ。


「我はここで待っておるが、気にせず楽しんでくるといい」

「ありがとうございます。お義父さま」


 屋外闘技場の前でサーヴェルに背を押されロロベリアはお礼を告げて門を開ける。

 待たせてしまうのは申し訳ないが、我が儘を叶えてくれる父の気持ちを汲むなら遠慮なく二人の時間を過ごすべきで。

 灯りのない通路。しかし距離は短くなにより今夜は満月。

 月明かりに導かれるようにロロベリアは訓練場内へと足を運び――


「あん? なぜ白いのがここにいる」


 クローネの読み通り既にアヤトはいた。

 出入り口すぐ横の壁面に腰掛けあやとりを興じつつ、視線も向けずに察する辺りはさすがで。


「お義父さまが急なお仕事で来られないから、それを伝えに。後は私が代理を勤めようと思ったの」

「……代理ねぇ」


 ここに来るまでに考えた言い訳を述べるとあやとりの紐を乱雑にコートのポケットに入れてアヤトは立ち上がり。


「その割には手ぶらのようだが?」

「……あ」


 一瞥するなり鋭い指摘が。

 久しぶりにアヤトと二人で会えること、会話を交わせること、訓練ができることに浮かれてしまい肝心な物を忘れていた。

 瑠璃姫は屋敷に置いているが、せめて訓練用の剣を借りてくるべきだった。


「更に言えばその格好で代理を務めるのか」

「えっと……」

「俺はおっさんにダンスの相手を頼んでないが」

「…………」


 更なる指摘と嫌味にロロベリアは言い訳もできないと口を閉じる。

 ドレスはクローネに了承を得ているのでこの際いい。

 ピンヒールも脱げば問題ないがやはり手ぶらなのが痛い。

 本当に浮かれていた。

 反省で俯くロロベリアにアヤトはため息を吐きつつ腰に手を回した。


「仕方ねぇ……白いの、受け取れ」


 朧月を鞘ごと差し出されてロロベリアは目を見開く。

 つまり朧月を使わせてくれるわけで。


「……いいの?」


 まさか愛刀を貸してくれるとは思わず戸惑もアヤトは苦笑。


「おっさんが仕事なら他に相手もいないしな。それに白いのは構ってちゃんだ、少しは遊んでやらんと拗ねるだろう」

「なら……遠慮なく」


 皮肉にも反応せずロロベリアは朧月を受け取る。

 何気に初めて手にするそれは見た目に反して瑠璃姫より少し重い程度。

 また抜いた刀身は淡い月光を反射させ美しい輝きを放っている。

 間近でゆっくり見たことがいだけに心を奪われるロロベリアを余所にアヤトは距離を取る。


「ま、安心しろ。感触確かめる程度の遊びだ。その綺麗なお召し物までボロッボロにならんだろう」

「……綺麗って」

「なんだ?」

「なんでも……」


 ドレス姿を褒められていない。自分に言ったわけでもないと分かっていても頬が熱くなり、我に返ったロロベリアはドレスの腰紐に鞘を括り付け。

 その間にアヤトも腰後ろに手を回し、新しい武器を手にした。


「それが新しい刀……名前は?」

「『新月(しんげつ)』だがそれがどうした」


 朧月と同じ刀は目測で少し短めで反りもほとんどない。しかし柄から刀身までが全て黒。

 今日のように月明かりのない闇夜のような刀は新月という名にふさわしく。


「やっぱりこの朧月を作成した人が?」

「たく……毎度毎度質問の多い構ってちゃんが。お前やリスの得物を作った奴だ」

「つまり朧月とは違う。そういえばどうしてリースに……て、質問したらまた呆れられそうね」

「もう呆れている」


 つい質問攻めしてしまい、いつものように呆れられてしまうがこれは仕方ないこと。

 好きな人のことを少しでも知りたい気持ちは当然で。


「つーか遊ぶ気がないならさっさと戻れ」

「まさか。朧月を貸してもらえたのに今さら引けないわよ」

「ならさっさと始めるか。ああ、おっさんに急なお仕事がなくなったら来いと伝えておけ。それと遊んでやるが壮行会が終わるまでだ」

「……やっぱり気づいてた?」

「白いのが構ってちゃんなのはとっくにな」


 少しでも会いたくて両親に我がままを言ってしまうのも当然の感情と、気づかれてもロロベリアは開き直って精霊力を解放。


「なら合同訓練で相手してもらえなかった分も遊んでもらうわよ!」

「やはり拗ねていたか」


 月明かりに照らされて白銀と漆黒の刃が交じり合った。



 ◇



「兄様とロロベリアさまったら。とても楽しそうに踊られて、無邪気なことですわ」


 外壁の上に腰掛け、アヤトとロロベリアが久しぶりに楽しむ時間を眺めていたマヤはクスクスと微笑む。

 刃引きもされていない白銀と漆黒の刀で立ち回る二人はまるで演舞のように優雅で美しい。

 いつまでも見ていたい楽しげな時間。

 しかしマヤは視線を上げた。


「さてさて、兄様とロロベリアさまが帝国に……きっと素敵な時間になるでしょうね」


 視線の遙か先にある帝国領で待ち受ける時間の方がマヤにとって興味深い。

 国王の依頼もあるが、この二人が共に他国へ訪れて平穏な時間を過ごせるはずがない。

 故にマヤはアヤトの、ロロベリアの運命に興味を向けている。


「本当に楽しみで仕方ありませんわ」




これにて四章も終幕……ではなく、次回更新のもう一つの終章で終幕になります。


みなさまにお願いと感謝を。

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また感想もぜひ!

作者のテンションがめちゃ上がります!

読んでいただき、ありがとうございました!

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