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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第四章 つかの間の休息編
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報酬の使い道

アクセスありがとうございます!



 二日目以降はタッグ戦の向上にラタニ、アヤトの指導による個々の能力向上と順調に訓練が続いた。


 ちなみに終了後はラタニもアヤトも残らず帰宅。若干の不満は上がるも自由なので仕方なく。またロロベリアは本当に最後までアヤトとの訓練はなく、変わりにユースが一番地獄を見る結果となった。


「今日までお疲れ様でした。みなさんに勝利があらんことを」


 そして五日目、カナリアの宣言で合同訓練も無事終了。

 隊長のラタニや最年長のモーエンではなくカナリアが最後まで訓練を主導していたので労いを込めてみなは一礼を。

 いつもならこのまま個人訓練を行う者、帰宅する者(と言ってもラタニとアヤト、監視をしないカナリアかモーエンだけだが)と別れるが。


「また夜にな」

「それと準備も忘れずに」


 カナリアとモーエンが注意するように今日は全員帰宅。

 なぜなら今夜は王城で壮行会が開かれ、翌日帝国に向かう船に乗る予定。

 帝国行きの準備は既に終えているものの王城での壮行会、国王自ら激励を受けるとなればさすがに正装する必要があるので個人訓練をする時間はないとそれぞれ素直に帰宅することになっていた。


「……アヤト、来るよね」


 徒歩で屋敷に向かいつつロロベリアは新たな心配事を。

 訓練中は一度も言葉を交わせず、律義なので訓練終了までは残るも宣言するなり消えているので壮行会に出席するよう念を押すことができず終い。


「どうだろうな」

「来ないに一票」


 個人指導で話せるチャンスがあったユースも一応念を押してはいるが明確な返答はなく、リースからは身もふたもない言葉が漏れて心配が更に募る。

 壮行会には有力貴族の出席もあるが国王の激励もある。そんな名誉ある場を代表メンバーがサボるものなら批判は免れない。まあ国王に関してはお茶を飲む仲、不敬を買うこともないだろうが他は違う。

 なのでブローチでマヤへ連絡を取ってみたが相手が出ず、本当に便利な道具も持ち主次第と呆れるしかく。

 どこまでもアヤトの自由奔放な性格に振り回されつつ三人は寄り道せず帰宅を。

 サーヴェルは既に王城へ、クローネは商会の仕事で留守中と、三人はまず壮行会へ出席する準備があった。


「お母さまが?」


 しかし自室で一息つくなり使用人から留守中のクローネがリースを呼んでいると聞き三人はキョトンとなる。

 理由は分からないがロロベリアとユースも挨拶をするべく執務室へ。


「おかえり。早速だけどリースにお届け物よ」


 おざなりな挨拶後、執務机に座るクローネは来客用テーブルを指さす。

 そこには赤い布に包まれた細長で二メル近い何かが置かれていた。


「……これは?」

「開ければ分かるわ」


 首を傾げるリースにクローネは説明せず促すのみで、とりあえず荷物を解いていく。

 布の中は上等な木箱が、ロロベリアとユースが見つめる中リースが蓋を開けて――


「これは……」


 思わぬ中身にリースは戸惑いを見せる。

 木箱同様上等な布に収まっているのは一本の槍。

 柄の部分が白く、刃は鮮やかな朱。

 装飾のないシンプルな作り。しかし工芸品として飾っても遜色ないほどに美しく、ロロベリアやユースも見惚れてしまうほど。


「お届け物と言ったでしょう。アヤトちゃんからね」


「「「アヤトから?」」」


「やっぱり聞いてないのね。まあアヤトちゃんらしいけど」


 予想外の名に三人が視線を向ければクローネは微笑み、この贈り物の経緯について説明を。

 というのもサーヴェルの依頼に対する報酬がこの槍に関する費用を負担するというもので。加えてロロベリアがプレゼントされた瑠璃姫と同じ職人が制作した物で、どこの誰かは謎のままでクローネも知らないらしい。

 ただつい先ほどクローネの商会に訪れたアヤトに渡されたので仕事を一時中断して届けに来たという。


「柄に『炎覇(えんは)』という名が掘ってるらしいわよ。まあ私には読めないけど」

「……炎覇」


 クローネの言葉にリースは柄に掘られている文字を指でなぞる。

 ロロベリアの瑠璃姫と似た文字は読めないが感覚からこの槍に相応しいと思えた。


「ちなみにアヤトちゃんが言うにはその刃は灯石。なのに強度はロロの瑠璃姫なみって……本当にどんな職人なのかしら。会ってみたいわ」

「灯石? それにしては綺麗な紅。少し重い……けど、むしろこれくらいが理想的」


 軽く振るだけでこれまで好んで使用していた槍よりも手に馴染みリースは眠そうながらも目をキラキラさせた。

 しかしロロベリアの瑠璃姫に然り、合同訓練中もフロイスに見合った長さの見極めに然り、炎覇もリースに合っているらしい。良く相手の動きを見るだけで理想の得物を見極められるものだ。

 それ以前になぜ自分の報酬がリースの槍になるのか。


「アヤトちゃんが武器を新調するらしいから、そのついでと言ってたけど理由までは知らないわ」


 この疑問にクローネはおざなりな返答。


「あいつの新しい武器も気になるけど……どうしてわたしの分も?」


 自分の武器は恐らく刀だろうが、なぜついでにリースの槍になるのか。

 ロロベリアの瑠璃姫も踏まえて急なプレゼントをするアヤトの意図がよく分からない。


「ただ、それほどの武器が十日ほどで完成するわけないでしょう? つまりアヤトちゃんはずいぶん前から準備していたんじゃないかしら」


 意図は分からないがクローネの言う通り。

 王都周辺の町村で作成したとしても選抜戦後に二本も作り始めては間に合わない。なら少なくともリースの訓練を始めたころに準備を進めていたわけで。

 選抜戦用に新調するわけでもなく、親善試合に向けてとしても補欠メンバーなら違和感がある。


「詳しくはアヤトちゃんに聞きなさい。お礼もちゃんと伝えるのよ。私はそろそろ仕事に戻るから」


 考えたところで答えが出るわけでもなく、一時抜けしていたクローネは足早に執務室を後にした。


「相変わらず何を考えているのか分からない奴」

「でも、お義母さまが言っていたようにお礼すること」

「……それは言う」


 これは言ってしまえば無理矢理の贈り物。

 しかしこれほどの業物で、リースも気に入っているならお礼は当然。

 なので多少の抵抗はあるもこくりと頷くリースだが、炎覇を手にしてどこかウズウズしていて。


「でも……うう、凄く手に馴染む。訓練で使いたかった。ロロ、ユース、早速練武館で――」


「「壮行会の準備があるから我慢する」」


 ロロベリアとユースの即答も当然だった。




もちろんこの贈り物にはアヤトなりの理由はあります。


みなさまにお願いと感謝を。

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また感想もぜひ!

作者のテンションがめちゃ上がります!

読んでいただき、ありがとうございました!

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