【1話】妃奈乃と陽菜乃
「いや、陽菜乃は私の敵だから。」
「いや、妃奈乃は私の敵だから。」
私は高校一年生、上杉妃奈乃。こっちは高校一年生、武田陽菜乃。陽菜乃と私は敵同士。
幼稚園の頃からずっと一緒の私たちは、昔は仲が良かった。だけど、ある友達の発言がきっかけで私たちは敵同士になった。
以下がその問題発言。
「二人ってさ、今ちょっと話題になってる百合ップルみたいだよね!」
...納得がいかなかった。しかも、その友達いわく私がお嫁さんで陽菜乃が旦那ポジだとか。...はぁ?陽菜乃が旦那になって私を守る?納得いかない。いかない!まぁ確かに頻繁に陽菜乃に頼ってはいたけどさ、甘えてはいたけどさ、それとこれとは別問題なのさ。実際は私の方が上だから。百歩譲って対等。私が陽菜乃に守ってもらう必要はナッシング。そう思い始めると人って不思議だよね、相手の嫌なところが目につき始める。なんか陽菜乃の斜に構えた風体がもう~、許せない。っていうか陽菜乃って名前からもう納得がいかない。同じ読み方ってだけで納得いかないけど、極めつけがその漢字。なにさ太陽の下の菜の花って。なんでそんな明るく可愛い名前なんだ。私なんて妃だぞ、いつの時代さ、ひれ伏せ。
今日のお昼休みもバトル。私がちょっと女子力を磨こうとマドレーヌを作ってきたら、陽菜乃がクッキーを作ってきた。
「あ、今日マドレーヌ作ってきてみたんだけど、良かったらみんなで…」
と、見ろよこの女子力をよぉ、と思いながらマドレーヌをカバンから出そうとしたら
「え、私クッキー作ってきたんだけど…。」
と、陽菜乃。なんでこう私が一歩リードしようとしたらすぐに並走してくるのさ、本当に。
「え、二人ともお菓子作ってきたの?すごーい!」
「食べたい、食べたい!あ、じゃあ一つもらうね。」
私も、陽菜乃の作ってきたクッキーをおそるおそる一口。
サクッ
程良い甘さ、舌の上でやわらかく溶けていく砂糖、甘い香りが鼻から抜けていって…いや、そんな美味しくないから。デパ地下のクッキーの方が美味しいから。よーし、帰りに買って帰ろ。…やっぱりこっちのほうが美味しいかもだけど。
「ひなのクッキー、美味しい!」
「ひなっちのマドレーヌもいいね、あったかい味!」
陽菜乃は美味しくて、私のは温かい味…。はぁ、なんか褒められてる気がしないなぁ。
「それにしてもひなっちとひな、一緒にお菓子作ってくるなんてさぁ、本当に仲い」
「「いや、違うから。」」
被ったぁ…。これじゃ仲いいと思われちゃう。いや、思い過ぎかな?
「あ、被った!やっぱ仲いいね、親友って感じ!」
思い過ぎではなかった。早く訂正しなきゃ。
「いや、陽菜乃は私の敵だから。」
「いや、妃奈乃は私の敵だから。」
…もう、嫌。
「まぁ二人はおいといて、そろそろ体育館行こうよ。」
「あ、もうそんな時間?早く行こ!」
次の授業は体育。確か、今日はバトミントンだったはず。バトミントンは、私は苦手ではないが、陽菜乃にはどうしても勝てない。別にバトミントン部に入ってるわけではないのに、やたらとうまい。悔しい、勝たねば。
ピッ
「よし、勝った~!」
「もう、すっごい汗かいちゃった~。」
各々がそれぞれの相手と勝負して、喜んだり、悔しがったりしている。そんな中、いよいよ私たちの番が来た。
「ひな~、ひなっち~、入って~。」
「…よろしく。」ギュッ
「…よろしく。」ギュッ
軽く握手を交わして得意な立ち位置に行く。サーブは向こうから。だから私はコートの後ろのほうに立つ。なぜなら…
「それっ!」ビュンッ
ほら、やっぱりコートの手前ギリギリ狙ってきた。誘導さ、誘導。それをやすやすと…
「そ、それっ!」ポンッ
…ちょっとギリギリを装って返す私。おかしいなぁ、予想はできてたのに。ただ運が味方したのか、よれた球はネットすれすれの場所に、
ポトッ
「よし、先制!」
「もう…」
うん、狙い通り。これが作戦。運を味方につけるっていう作戦。しかし、運が味方についたのは最初だけで、そのあとは、2-1、5-2、7-3…、どんどん点差が広がっていく。
「妃奈乃、どうしたの?早く本気出してよ。」
「ふんっ…」
挑発してくる陽菜乃。でも、これも予定通り。陽菜乃は最初の勢いはすごいが、途中から集中力が切れて弱くなるのを私は知っている。だから、ゲームセットにならない限り粘り勝ちの芽はある。だから、この程度の点差なんて痛くない。…ちょっとだけしか。私の読みの通り陽菜乃の勢いは徐々に弱まっていった。8-5、9-7、そしていよいよ、10-10。デュースにまで持ち込んだ。
「陽菜乃、どしたの?デュースになっちゃったけど。」
「…別に。」
よし、流れは私にあるし、挑発も決まった。メンタルから壊していくのは大事、うん。
「それ!」ポンッ
「あっ…」
挑発が効いたのか、陽菜乃は私の普通のサーブすらこぼしてしまった。これは、本当に勝てるかも…。でも、油断しないように、油断しないように…。いつもデュースから盛り返されて負けてるし、油断というか、浮つくというか、それが私の弱点。だからこそ、集中、集中…。でも、本当に勝てるかも…。陽菜乃にバトミントンで勝つなんて、久々かも…!勝ったら、どうしよっかな?なんて言おうかな?思いっきり見下してやろうか。それともあえてのフォロー?いや、喜びすぎてそれどころじゃないかも…。
「…妃奈乃、集中してる?」
「…いや、陽菜乃に心配されるほどじゃないし…」
図星だよ。何さ、いいじゃん、ちょっとぐらい妄想にふけっても。…でも、それでいつも負けてたんだった。助言、どうも。
「…それっ!」ビュンッ
ズバッ
うわっ、コートぎりぎり…、全然目で追えなかった…。またデュースかと思ったそのとき…
「アウト!!」
…え?………え!?!?やった、やった!!勝った、勝った、勝ったぁぁああ!!嬉しすぎて心の中で何度も叫んでしまう。
「勝ったぁああ!!!!」
と、ついでに心の外でも叫んでしまう。はぁ、でも嬉しい…!久々に勝った…!!握手を求めてきた陽菜乃に対して有頂天の私は、
「まったく、陽菜乃は。途中から手を抜くからこんなことになるんだよ。」
よし、挑発も決まった。今日は最高の一日!そう思ってたのに…
「え、あっ、……ごめん。」
…今日一日あったことを部屋の中で反芻する。…ごめん、ってなにさ、ごめんって。じゃあ、途中まで手を抜いてたってこと?ひょっとして、最後のミスも?…あんだけ喜んでた私、バカみたい…。なんで、陽菜乃はあんなことをさ…。私のことをなめてるから?そんなに私を掌で躍らせるのが楽しいの?じゃあ、良かったね、滑稽な私の姿が見れて。
「妃奈乃、入るよ。」
「…お姉ちゃん、何?」
「いや、漫画返しにきただけだけど…。なんか機嫌悪そうだね。」
はい、すこぶる機嫌悪いです。もう最悪です。だから早く出て行って欲しいのに…
「何かあったの?」
詮索してくる姉。まぁ、お姉ちゃんに八つ当たりするのも、おかしいかぁ。
「…今日、バトミントンの試合があって、私、ギリギリ勝てたの。それで、すごく喜んでたのに、相手の人、手加減してたみたいで…。バカみたい…」
「あ、陽菜乃ちゃんとバトミントンしたんだ。」
名前は出してないのに、エスパー?それとも影で試合見てた?ストーキングされてた?
「陽菜乃はどんだけ私をバカにすれば気が済むの…」
「え?普通に負けちゃったんじゃない?あるとしても、妃奈乃の喜ぶ顔が見たかったか。バカにしたいとか、そんな性格悪い子じゃないでしょ。」
と、あっさりと答えて、
「ごめん、私漫画の続き読みたいから、もう行くよ。あ、5巻と6巻借りてくね~。」
そう言って悩み相談は終了、部屋から出て行ってしまった。いや、聞いてきたのそっちなんだけど。っていうか…
喜ぶ顔が見たいって…。
…馬鹿じゃないの。何その趣味、本当、馬鹿じゃないの…。そんなことされても、私は喜べないし…。接待されても、私は嬉しくないし…。…いつもそう、陽菜乃は子供を見る目で私を見守っている感じがする。いや、同い年だから、そんな眼差し、いらないから…。全然、嬉しくないから…。
「ふぅ。よしっ...」
そんな悔しさを吹っ切るように立ち上がる。...わかった。陽菜乃がその気ならこっちだって考えがある。要は、接待する余裕も無いぐらい私が完膚なきまでに陽菜乃に勝てばいいんだ。圧勝すればいいんだ。そうと決まればやることは一つ...
・
・
・
ガラッ
「あ、ひなっち。おはよ~。」
「うん、おはよ。」
朝の教室。他の友達とのあいさつをそっけなくかわしてまっすぐ陽菜乃の元へ。
「陽菜乃。」
「…なに?」
「次の定期テスト、勝負しよ。これだったら陽菜乃も手を抜くなんてできないでしょ?」
成績的に私と陽菜乃は五分五分。これなら、陽菜乃だって、手加減とか見守るとかそんなこと、できないでしょ。
「クスッ、いいよ、望むところ。」
と、余裕交じりで承諾する陽菜乃。今に見てなよ、その余裕そうな顔も定期テスト終わりには涙垂れ流しの顔に変わるって、私知ってるから。
待ってなよ、陽菜乃。絶対勝つから。
~
~
「いや、妃奈乃は私の敵だから。」
「いや、陽菜乃は私の敵だから。」
私は高校一年生、武田陽菜乃。こっちは高校一年生、上杉妃奈乃。妃奈乃と私は敵同士。
幼稚園の頃からずっと一緒の私たちは、昔は仲が良かった気がする。だけど、ある友達の発言がきっかけで私たちは敵同士になった。
確か、こんな発言だったかな…。
「二人ってさ、今ちょっと話題になってる百合ップルみたいだよね!」
最初は百合ップルという言葉を知らなかったけど、調べてみて、納得というか、憤慨というか…。妃奈乃とカップル、いやいや。私はずっと妃奈乃の面倒を見てきた、幼稚園,小学校、中学校頭...。それがカップルとか、それじゃあまるで私と妃奈乃が対等みたいじゃないですか。無理です、そんな付き合い私は望んでいません。いつまでも妃奈乃は私の後ろにいればいいんです。...と思ってたのにこの発言きっかけで妃奈乃は私に対抗するようになって...、はぁ、もう、妃奈乃の子どもっぽさが煩わしい。っていうか妃奈乃って名前からしてもう、妃って。妃様ですよ。じゃあ私は側近ですか?それとも妃様を喜ばせる陽の下の菜っ葉ですか?はぁ…、私は所詮菜っ葉というか草なのに、妃奈乃は妃様。雑草魂、なめないでよ。
せっかくのお昼休みもバトってしまった。私が気まぐれにクッキーを作ってきたら、妃奈乃がマドレーヌを作ってきた。
「あ、今日マドレーヌ作ってきてみたんだけど、良かったらみんなで…」
と、いきなり妃奈乃が切り出して…。え?本当に?いやいや、私がクッキー出そうとタイミング伺ってたのに。
「え、私クッキー作ってきたんだけど…。」
とりあえず、後手だけど言わないよりマシでしょと思って言っておく。そうですよ、後手ですよ。でも言わないよりマシでしょ?再確認。
「え、二人ともお菓子作ってきたの?すごーい!」
「食べたい、食べたい!あ、じゃあ一つもらうね。」
私も、妃奈乃の作ってきたマドレーヌをおそるおそる口の中へ。
フワッ
…なんだろう、ちょっと素人っぽさが残って、格別美味しいとは言えない。でも、心が満たされるというか、落ち着くというか、温まるというか…。はぁ、ずるいなぁ、妃奈乃は。私がストレートで勝負しようとしても別角度から攻めてくる。こんなの、お店じゃ買えないじゃん。…一つ家に持って帰ろうかな…。
「ひなのクッキー、美味しい!」
「ひなっちのマドレーヌもいいね、あったかい味!」
妃奈乃の温かい味は、私には出せる気がしない…。はぁ、ちょっと遠い、妃奈乃が。
「それにしてもひなっちとひな、一緒にお菓子作ってくるなんてさぁ、本当に仲い」
「「いや、違うから。」」
被ってしまった。俗に言う阿吽の呼吸ですか?いや、違うよ?別にそういうのじゃ...
「あ、被った!やっぱ仲いいね、親友って感じ!」
あ、うん。そうなりますよね。早く訂正しなければ。
「いや、妃奈乃は私の敵だから。」
「いや、陽菜乃は私の敵だから。」
…訂正は諦めました。
「まぁ二人はおいといて、そろそろ体育館行こうよ。」
「あ、もうそんな時間?早く行こ!」
次の授業は体育。今日はバトミントン、かな。バトミントンは、私の得意種目。ただ、妃奈乃もなかなかに上手なため、油断はできない。今のところは私が勝ち越しているがいつまで続くやら...。いや、今日で終わりとかないけどね。
ピッ
「よし、勝った~!」
「もう、すっごい汗かいちゃった~。」
みんなが汗をかいて楽しそうに試合をしているか、いよいよ私たちの番が来た。
「ひな~、ひなっち~、入って~。」
「…よろしく。」ギュッ
「…よろしく。」ギュッ
軽く握手を交わして得意な立ち位置に行く。サーブは私から。妃奈乃はコートの後ろの方に立つ。それなら…
「それっ!」ビュンッ
コートの手前ギリギリ狙ったサーブ。当たり前、だって妃奈乃はそこに球が来るのを待ってるから。行くよ、真正面から。妃奈乃はそれをやすやすと…
「そ、それっ!」ポンッ
普通に返してくる。まぁ予想通りのところに打ってるから返されるよね、うん予想通り。ただ予想外だったのは、妃奈乃の打った球はネットすれすれの場所に、
ポトッ
「よし、先制!」
「もう…」
...やられた、やるじゃん。様子見とか小手調べとか、妃奈乃には一切通じないなぁ。いいよ、本気出すから。そこから先は私がペースをつかんで、2-1、5-2、7-3…、と、どんどん点差を広げていった。
「妃奈乃、どうしたの?早く本気出してよ。」
「ふんっ…」
挑発もぶつけて、絶好調。でも、ここからが厳しい。私が序盤に強いのに対して妃奈乃はスロースターター。だから、ここからはいかに逃げ切るかが勝負。あと...どうしても妃奈乃とギリギリの勝負をしたくなる本能が勝負を邪魔するのは、うん、内緒にしておこ、拗ねそうだし。案の定、点差は縮まっていき、8-5、9-7、10-10...。デュースになってしまった。
「陽菜乃、どしたの?デュースになっちゃったけど。」
「…別に。」
ふんだ、ギリギリの戦いに持ち込みたかっただけだから。...だとしたら、点数あげ過ぎたかも、勝てるかな...。
「それ!」ポンッ
「あっ…」
やってしまった、完全に集中してなかった...。土壇場の集中力の無さは私の弱点だなぁ。…あと、あの嬉しそうな顔が集中力を削ぐんですよ。ほら、今もすごくうきうきしてる。どうせ勝ったらなんて言おうかなとか考えてるんだろうなぁ。妃奈乃、まだ勝ちは決まってないよ。
「…妃奈乃、集中してる?」
「…いや、陽菜乃に心配されるほどじゃないし…」
うん、図星っぽい。本当、わかりやすい人。...一瞬、勝ったら妃奈乃はどんな顔するんだろう...なんてどうでもいいことが頭をよぎる。いや、駄目駄目。わざと負けるとか、妃奈乃が絶対にして欲しくないことだし、私だってそんなことしたくない。うん、本気でやる。潰してしまおう。
「…それっ!」ビュンッ
ズバッ
見た、妃奈乃?これが私の本気。妃奈乃は私には勝てないよ。そうドヤ顔おばさんになってる私を尻目に審判が一言。
「アウト!!」
...あ、やってしまった。この大事な場面でミスとか、まだまだだな...。っていうか...
「勝ったぁああ!!!!」
バトミントンの試合でここまで喜ばれるとさぁ、なんか...悔しい。でもまぁ、たまには勝ちを譲ってあげるよ。その分、次の試合で完膚なきまでに叩きつぶすから。そして握手をしにいくと、妃奈乃から予想外の発言が...
「まったく、陽菜乃は。途中から手を抜くからこんなことになるんだよ。」
...あ、最後の一瞬の考え、ばれてた?いや、本当にあれは一瞬頭によぎっただけで油断なんて微塵も...。
「え、あっ、……ごめん。」
…今日一日あったことをお風呂の中で反芻する。というか、あの不用意な発言一言を何度も脳内で反復する。はぁ、なんであそこでそんなことないとか、取り繕えなかったんだろ…。あれじゃ本当にただ手を抜いて勝たせてやってるだけの人でしょ...。私って馬鹿だよなぁ。
「姉ちゃん、風呂まだー?入りたいんだけど。」
「もうちょい待ってー。」
本当に、あと1時間ぐらい待って、考え事してるから。いや、10分でいいや、のぼせちゃう。反省する項目は、二つかな。一つ目は、戦いへの姿勢。私達との戦いでの暗黙のルール、それは相手に勝ちを譲ること。相手への接待、それは相手をもう敵として見なしていないということに等しい。…私達は敵同士なんだから、ただの友達同士じゃないんだから、絶対やってはいけなかったのに…。
はぁ、と溜息をつきお風呂のお湯を顔に、お湯パック。そして目をつぶり、二つ目の反省点へ。私の駄目なところもう1つ、いつも妃奈乃の勢いに圧倒されてしまう。妃奈乃が勝ちを求めて全力で向かってくると、つい脇に避けようとしてしまう癖がある。負けず嫌いの癖に、勝ちに貪欲になれない所がある。…このままじゃ駄目だ。妃奈乃をドブに沈めてでも勝たなきゃ。
「…熱い。」
色々考え過ぎて、気がついたらお風呂の熱が私のキャパをオーバーしかけていた。うん、部屋に戻ろ。反省は重要。でも後悔する必要なんてない。今日のミスを次に繋げればいいだけだ。そして成長して、勝てばいいのだ。リセットアンドグローアップ。そう気持ちに踏ん切りをつけお風呂のドアに手をかけた時ふと思った。…そもそも今日のがきっかけでもう戦いに挑んでこなくなるのでは?今日が最終決戦だったのでは…?…次は、あるの?
…無言で、お風呂を後にした。
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・
・
ガラッ
「あ、ひなっち。おはよ~。」
「うん、おはよ。」
妃奈乃が、他の友達と挨拶を交わしている。昨日のこと、なんてa言おう…。そう思ってると妃奈乃がこちらに近づいてきて、
「陽菜乃。」
「…なに?」
「次の定期テスト、勝負しよ。これだったら陽菜乃も手を抜くなんてできないでしょ?」
…なんだ、考えすぎだったみたい。ちょっと安堵して、その勝負項目に頭を切り替える。…定期テストか、私の成績は妃奈乃の1歩下。いつもなら負けている。でも…
「クスッ、いいよ、望むところ。」
いや、だからこそ本気で挑める。全力で妃奈乃にぶつかることが出来る。余計なことなど一切考えなくていい。妃奈乃に全力でぶつかる、ただそれだけ。
受けて立つよ、妃奈乃。絶対勝つから。