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 幾度も、生命の危機に直面しました。

 幾度も、貞操の危機に直面しました。




 -*-




 目が覚めたのは薄暗い森の中。

 一糸まとわぬ生まれたままの姿で仰向けに倒れていた私は、いつまでたっても収まらない頭痛に顔をしかめながら瞳を開いたのです。

 すると、


『………ゴブ♪』

「いやぁああああああああああああああああああああああっ!?」


 醜悪な顔の人型モンスターが三体、私の顔を覗き込んでいました。

 ええ、はい、私を見るそいつらの目を見て直感しました。目覚めてすぐにバージンクライシスです。

 こいつらゴブリンじゃないですか―――!!!


 ファンタジーを題材にしたゲームでは雑魚キャラとしておなじみ、人より小柄で性欲しか頭になく、女と見ればセックスしか考えられないゴブリンといきなりご対面とか心臓に悪すぎます。

 しかもこいつら、頭だけおっきくてマッチ棒のような体型の私にすら性欲抱いてるじゃないですか!

 ヤダー! ロリコンかこいつら、穴さえあれば満足な変態ヤロー!

 左右から地面に腕を押さえつけられ、私の脚を肩に担いだゴブリンが恥垢にまみれてブツブツと大きなできものまでできてる醜悪な〇〇〇〇を〇〇〇〇に〇〇〇〇ようとしてますよ!? せめて綺麗に洗って出直してこーい! いっそちょん切ってしまえそんなモノー!


 目覚めるのが五秒遅ければ、眠ったまま一生忘れられないほど最悪なロストバージンを迎えていたのでしょうが、目が覚めても三匹がかりで拘束されてるんだから恐怖心スイッチがオンになっただけで状況は変わりません。

 ですが、そこはほら。神様から色んなチート能力を貰った私ですから、異常なほどに回転する灰色の脳細胞がこの危機を打破する解決策を導き出すはずです。イエスご都合主義!


「くっ、殺せ!」

『………ゴブ?』


 ちっが――――――――――――――――――――――――う!!!

 いえ、死ぬまでに一度は言ってみたい台詞マイベスト10に入る名言でしたが、いま言うセリフじゃ……あれ? 微妙にシチュエーション合致してますね? おお、グッドタイミング!




 そーじゃな――――――――――――――――――い!!!




 でも目の前にいるのは性欲モンスターのオークじゃないし虜囚じゃないし、むしろ逆説的に「覚悟完了!」と言ってるような気もしてきました。さすがにオークの反り返った〇〇〇がちっさな私の体に収まると思えませんけど……

 というか、初見殺しに注意しろとか言っときながら、こんな場所に転生させるなんて転生担当の神様の馬鹿―――! どちらかというと創造神様のちょんぼですよね、創造神様の阿保―――! あとで「絶対忘れない閻魔帳」に書き込んでやりますからね!?




 -*-


 創造神:「あれ? なんかいま寒気が……」


 -*-




 けど、この状況どうすればいいんですか!?

 異世界に転送直後に一番弱そうなゴブリン相手に貞操の危機とかどんなクソゲーですか。シナリオ担当呼んでください!

 せっかく私のおっぱいを大きくする希望が芽生えたのに! 成長できるようになったのに! モンスター倒して経験値稼がなきゃいけないのに! こんな、こんなところで………!




 あ、こいつら殺せばおっぱいの滋養になるんだ。

 最初の獲物はこいつらにしましょう。




『ゴブブブブブブ!?』


 というわけで活用しましょう。脚の筋力は手の三倍理論!

 なぜか私を見て怯んだ下半身側のゴブリンの首に脚を絡め、その背中に振り上げた踵を叩きつけます。


『ゴブハァ!?』


 うつぶせに倒れ込んだゴブリンの顔は太腿に挟まれたまま私の股の間へ。


 ―――ぐちゃ♪


 もしかしてこいつら、私の意識がない間に味見しましたね!? 濡れてるじゃないですかヤダー!

 けどまあ、とにもかくにもピンチをチャンスに。後はこのまま脚で首を締め付けて、窒息死したり頸椎が折れたりすればよし。デッドオアおっぱい。力勝負です!

 ……でも、そもそも私の筋力って幼児並みなんですけどね!?


『ゴブウッ!!!』


 ゴブリンが地面に手を突き、私の脚の戒めを強引に引きはがします。

 でもそれはわかっていた事! だからさっさと脚を解き、ゴブリンが体を起こしたところを見計らって胸の真ん中を蹴りつけてやりました。


『ゴブゴブッ!?』


 視界から消えたのでどうなったか判りませんが、ゴブリンはドスンと尻もちをついてすってんころりん。とりあえず一匹撃破。後は腕を押さえつけてる二匹です。


「えいえい!」


 ブンブン


「このこの!」


 スカスカ


 ……どうしよう。ひのきの棒のようなほっそい脚を振り上げても、ゴブリンたちに全然届きません。

 しかも私が暴れたからゴブリンたち怒ってるようです。腕に爪が食い込んで痛い!


 まずい……決定的にピンチです。ゴブリンたちも私の足掻きが届かないことを知り、私をあざ笑うかのように唇の端を吊り上げ、




『GURUAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』




 次の瞬間、森の木々を突き抜けるようにして急降下してきた巨大な鳥が二本の足でゴブリンの頭を一個づつ鷲摑み――鷲ではなかったんですけど――にして、現れた時と同様に一瞬で飛び去って行きました。


「………あれ? 私、助かったの?」


 なんだ、いま何が起こった!?

 まさかゴブリンがでっかい鳥にお持ち帰りされて助かるなんて、スゴい幸運……大丈夫? 大丈夫だよね? 次は私が鶏の餌になったりしないよね?

 体を起こしてきょろきょろしましたが、さっきの鳥が再び現れることはありません。まあ、あんなのに襲われたらどう警戒してたってどうしようもないので……ええ、男は度胸、女も度胸、合法ロリも度胸です。とにかくこの場を離れましょう。


『ゴ……ゴブゥ………』


 おっと、そういえば忘れてました。呻き声を聞いて、ゴブリン一匹倒してたのを思い出しました。


 蹴り飛ばしたゴブリンは、運悪く地面に頭をぶつけたようで倒れたままです。

 いつ襲われるのか分からないから立ち去ろうかとも考えたのですが……倒さなければ、いつまでたっても私のおっぱいは平らなままなのです。


 よし、ヤるかぁ!

 手ごろな石を見つけた私はそれを手にゴブリンへ近づき、


「おっぱいになれェ!!!」


 あ、違った。ご冥福をお祈りしようと思ったのに、つい本音が!

 でもまあいっか。第一投はよくも私の処女を奪おうとしたゴブリンの股間へ正確無慈悲に叩きつけられています。

 さすがにそこは痛いよねぇ……白目向いて悶絶してるので解釈してあげなきゃ。気を取り直して、せ~の、


「おっぱいになれぇ!!!」


 やばいですね。おっぱいに光明が見えた途端、本音が駄々洩れです。第二投へ頭へ叩きつけ、サクッと終わらせました。


「うう……返り血が気持ち悪い……」


 私の肌がゴブリンから飛び散った血で穢されます。……かなり、悪臭が……

 初めてモンスターを倒したことに罪悪感やら忌避感やらを感じはしましたが、か弱い――結構逞しい?――私には森の中は死の危険がいっぱいです。余計なことを考えている時間はありません。

 ここで死んでは私のおっぱいの野望が! せめてA! できればB! 理想はG! ついでに身長も!

 ゴブリンどもよ、我が野望を阻めるものなら全ておっぱいの糧にしてやるわ!


 と、甘いことを考えてたら、


『GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』


 どこか遠くからゴブリンよりも迫力のある咆哮が聞こえてきました。

 ひえええええええええ! ごめんなさいごめんなさいちょっと調子に乗っておりました!


 ゲームなどでは雑魚オブ雑魚の地位を不動のものにしているゴブリンを運よく倒せたぐらいで、この先ずっと簡単に生きていけるわけではありません。

 さっきのでっかい鳥のように、ゴブリンなんて比べ物にならないほど強そうなモンスターもいるのですから、安全の確保が最優先です。


 それにゴブリンの返り血の臭いはかなりきつく、嗅ぎつけた別のモンスターに襲われる危険性も無きにしも非ず。となると川や滝といった水場を探して返り血を洗い流さないと、臭いに誘われたモンスターに襲われてしまう可能性が高くなってしまいます。


 その危険を回避するためにも、そして飲み水を確保するためにも、まずは水場探しが急務です。

 ですが、その他の問題も山積みです。

 裸足で森の中を歩いたりしたら足の裏がすぐに血まみれになるし、衣服をなんとかしなければ枝で肌を傷つけ、体温も容赦なく奪いつくされてしまいます。

 ああ、文明社会が懐かしい。サバイバルキットとまではいかなくても、せめて何か道具があれば……そんなことを考えていると、いきなり頭の中でファンファーレが鳴りだしました。

 ぱんぱかぱーん♪……って、私が何か閃いたわけじゃなくて、妙にデジタルっぽい音源が……


 ……もしかして、私、壊れちゃった?


 そんな杞憂は脇に置いておくとしまして、ファンファーレです。ゲーム的に言えばお馴染みのクルッと回って前蹴りを決めながら鳴り響くアレです。

 私の記憶が確かならば、この音楽が流れた時はずばりアレでしょう……レベルアップです!




 -*-


【初回撃破ボーナス】

 モンスターを初めて倒した特典としてスキル≪危険察知Lv1≫≪隠密行動Lv1≫≪工作の心得Lv1≫≪調理の心得Lv1≫≪採取の心得Lv1≫≪探索の心得Lv1≫が与えられます。


【逆境撃破ボーナス】

 装備なし、スキルなし、アーツなしでモンスターを倒した特典としてスキル≪徒手格闘Lv1≫≪投石Lv1≫≪筋力向上Lv1≫≪敏捷性向上Lv1≫≪逃げ足Lv1≫≪超回復Lv1≫が与えられます。


 -*-




 レベルアップではありませんでした。だけどそれ以上に驚きというかなんというか……色んなものがズラズラッと脳内でアナウンスされ、目の前には四角い枠が表れて文字表示でもズラズラと。


 ………けど、ちょっと待ってください。この世界って何か事あるごとに頭の中で音楽が鳴ったり情報が羅列されたりするんですか?

 創造神様に弄られたせいか、なにか頭の中がとんでもなくヤバいことになってる気がします。もし「頭の中で変な声が聞こえるんです!」とか他の人にバレでもしたら、間違いなく電波を受信してる危ない人扱いされますよね!


「……このことは、誰にも喋らないようにしないと」


 ですが、ファンタジー世界の基本みたいなスキルを一通り入手できたのは幸運でした。

 体が貧弱だったせいで運動音痴の私にとって、能力底上げしてくれる効果は微々たるものでもとても助けになるでしょう。あと料理とかDIYも未経験なので……いや待て、浮かれるな。もしもさっきのように料理の知識とかが表示されても、私が実際に料理することになったら非常にマズいです。

 ………炊飯器を大爆発させてしまうかもしれません。




 -*-


【初心者ボーナス】

≪工作の心得Lv1≫が≪工作技能Lv1≫になりました。

≪調理の心得Lv1≫が≪調理技能Lv1≫になりました。

≪採取の心得Lv1≫が≪採取技能Lv1≫になりました。

≪探索の心得Lv1≫が≪探索技能Lv1≫になりました。


 -*-




 いやいや、初心者ってなに!?

 再び脳内アナウンスが時間差で流れたことにも驚きましたが……≪心得≫と≪技能≫ってどう違うんでしょうね?

 まあボーナスなんだから性能が悪くなったりはしていないでしょう。特に調理技能は私の生命線につながるかもしれませんし。


 ですが、スキルをどうやって使うのか、どういった効果があるのか、といったことを確かめるのはまた後です。

 さっき聞こえた咆哮からも、周囲にゴブリン以外のモンスターが存在しているのは確実なのでしょうから。

 だからまず第一に考えるべきは、この場を立ち去ること。

 第二に安全を確保する事。

 第三に食料や水の確保。

 ………うん、無理ゲーくさいけど、おっぱいを大きくするためにはこんなところで死んでいられません。目指せGカップ!


 それでは移動したいのですが……やっぱり全裸は恥ずかしい。いかにマッチ棒体型で性的魅力ゼロとはいえ、胸も股間も露出したままではいけない趣味に目覚めてしまいそうです……ハァハァ……

 そうならないためにも早く服の代わりになるものを見つけなきゃな~と考えながら両手で胸と股間を隠し、もじもじしながら歩き出そうとした矢先、とんでもないことに気づいてしまいました。


「おっぱいが……!?」


 慌てて両手を胸にあてがいます。

 相も変わらずまっ平らな胸で、最弱モンスターのゴブリン一匹倒したぐらいで大した変化なんて生まれるはずもありません。

 けれど「ほとんど変わらない」というのは「見た目にはわからなくて触ってもまず判らないけどミリ単位ナノ単位ミクロン単位のごくごく微小過ぎて誰も気づかない程度の変化がある」と言い換えることができるのです。私はそう信じて今まで生きてきました。

 だからこそ私だけにわかるのです。例え神なる存在であっても気づくことのない――いや、実際に会ってきた創造神様ならあるいは気づくかもしれませんが、これまで膨らみとは無縁だった絶壁のごとき我が胸に、ごく薄く、まるでヴェールのごとき薄さの柔らかい感触が生まれているではありませんか。


「あ……ああああああ………」


 これが……神の御業か……


 ショックのあまり、その場に跪き、崩れ落ちました。

 そして手足を投げ出し、地面に腹ばいになって額を地面に擦り付けて私は叫びます。心の底から、


「か゛み゛さ゛ま゛あ゛り゛が゛と゛う゛~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」


 ありがとうございます、私を生まれ変わらせてくれて!

 ありがとうございます、私の人生はここから始まるのです!

 ありがとうございます、やっぱり創造神様はおっぱい神様です!


 これで私にも生きていく気力が生まれました。ええ、目に見えなくても触れる成果があれば人間は生きていけるのですハッピーおっぱい!


『ゴブゴブゴブゥ!(ゴブ男ォ! 先に逝っちまいやがって……馬鹿野郎!)』

『ゴブゥウウウウ!(あいつがやったんか! 仇はとったるでぇぇぇ!!!)』

『ゴーブゴブゴブ!(ゴブ太とゴブ助はどこに!? 畜生、あの人間の女!)』


 ………しまった。まずは安全確保しなくちゃいけないんでした。


 茂みをかき分けて現れたゴブリンたち。その魔の手から逃れるべく、私は早速≪逃げ足≫を使ってその場から逃走を図ったのでした―――




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名前:大成育美

レベル:3

種族:人間

ステータス:とても貧弱

身長:114センチ

カップ:AAAAA+α

ポテンシャル:発育促進(絶大)


【スキル】

 ≪徒手格闘≫Lv1

 ≪投石≫Lv2

 ≪筋力向上≫Lv1

 ≪敏捷性向上≫Lv2

 ≪逃げ足≫Lv4

 ≪危険察知≫Lv2

 ≪隠密行動≫Lv1

 ≪工作技能≫Lv1

 ≪調理技能≫Lv1

 ≪採取技能≫Lv1

 ≪探索技能≫Lv2

 ≪超回復≫Lv1


【神の恩寵】

 ≪言語理解≫

 ≪基礎魔法≫

 ≪武芸才能(特大)≫(未開化)

 ≪魔法才能(特大)≫(未開化)

 ≪五大属性適応≫(未開化)

 ≪成長限界突破≫(未開化)

 ≪経験値三倍増≫

 ≪鑑定(特殊)≫

 ≪幸運≫

 ≪男運≫(未開化)

 ≪女運≫(未開化)

 ≪黄金律≫(未開化)

 ≪健康≫

 ≪状態異常無効≫(未開化)

 ≪不老≫(未開化)

 ≪長寿≫(未開化)

 ≪不死≫(未開化)

 ≪性欲増進≫(未開化)

 ≪性魔術≫(未開化)

 ≪神々との縁≫

 ≪創造神の祝福≫

 ≪????≫(未開化)


【固有才能】

 ≪仙姿玉質≫

 ≪????≫(未開化)
















































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「間゛に゛合゛っ゛た゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

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