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私は戦う!おっぱい大きくするために!  作者: 鶴
第一章「ラザレス王国動乱」
13/20

「傍迷惑な来訪者たち」-4

 一人が言った。


「モウ、ムリ、タスケ……ヒィ、ハァ……ゲホッ! グホッ! ゲホゲホゲホォ!」


 別の一人が言った。


「あの女、悪魔だ……あんなの持ち上げるなんて、人間業じゃ…ねえ!」


 さらに別の一人が言った。


「ぼぼぼぼぼかぁ! まだ! まっだまだぁ! 見ていてくださいオーナリィさん! ヤレ、ヤレます・……よォォオオオ!……ガクッ」




 そして全てを見ていた彼女は言った。


「兵隊のくせに貧弱よね……」






 -*-






「いやさ、俺も近づいてくるのがずっと見えてたわけだし、何事かって警戒もしてたから事情は分かってるつもりなんだけど……いったい何があったの、これってば」


 上陸部隊の副将のイリガルさんは、目の前にうず高く積み上げられたものを見上げて呆然としていた。

 半開きの口からだらしなく舌を覗かせているティラノもどき、四本腕のクマもどきにハゲタカもどき、未だ目を覚まさない金髪の将軍さんや途中で倒れた兵隊さん十一名(ほぼ全員)が四段重ねで急ごしらえの荷台に乗せられているのだから無理もない。ほとんど首を真上へ向けなければならないほどの大猟っぷりである。


 家に帰る前にゼドリックさんから是非にと頼まれた私は、海岸に設営された兵隊さんたちの拠点に立ち寄っていた。海岸は帰り道の途中なので軽い気持ちで了承したけれど、モンスターから守る代わりに荷運びを手伝うことになった兵隊さんたちが……まるで使えない。なんで荷台を手押しするだけであれほど疲労困憊するのだろう。

 岩場から下りてくる山道は荷台が通れなかったので私が持ち上げて運んだし、休憩させてくれると言うので海岸に出てから頑張ってもらったけど全員ダウンするとはなにごとか。最後まで後ろから押してくれたのが一番年上のゼドリックさんだけとか、キミたち本当に情けないよ。


「まだまだ若い物には負けませんとも。……あたた、腰が……」


 無茶しやがって……自生の薬草で作った痛み止めを後で持ってきてあげよう。

 ………ところで、なんで私は兵隊さんたちに取り囲まれてるの?


 荷台の上へ放り上げていた将軍さんたちが救助される中、妙に殺気を漲らせた兵士たちが私を包囲していた。

 ゼドリックさんが間に立って周囲を宥めてくれているから攻撃されたりはしていないが、これは……逆に怯えているのだろうか。


「お前たちは下がれ。オーナリィ殿に失礼ではないか」


「だけどゼドリックさん、こいつらは仲間を……!」


「この方は気を失っていた将軍を保護し、我らをここまで護衛してくださったのだ。感謝こそすれ、敵対するなどもってのほか!」


「なんでそっちの味方してんだよ! こっちは仲間をやられてんだぞ!?」


「あいつらは根本的に鍛え方が足り取らんのだ!」


 そう言うゼドリックさんも疲労で膝が少し笑っている。疲労回復の薬草も持ってくるか……悶絶するほど苦いけど、水で薄めて飲める飲める。


 しかしゼドリックさんが仲裁するほどに、反発して私に向けられる敵意は膨らんでいく。

 誰かが疲れ果てて動けなくなっただけで殺意を人に向けるのか……誤解があるのだろうけれど、なぶり殺しにする気満々な目で見られるのはどうにも居心地が悪い。

 これなら早く家に帰るほうが精神衛生的にマシだ。むしろ私がこの場にいることが空気を悪くする原因なのだから、早々に立ち去った方が問題も起きなくていいだろう。


「ゼドリックさん、私、もう行くね」


 荷台を引きながら発声練習していたので幾分滑らかに出るようになった声でそう告げると、ゼドリックさんが驚きの表情で振り返ってきた。


「お待ちください! 将軍ももうしばらくすれば目を覚まされるはず。それまでお待ちいただけましたら……あの者たちは私が説得します。ですから!」


「まあまあ、落ち着いて。一度家に帰って、獲物を置いてくるだけ。後でまた、顔を出しに来る。それに体、洗いたいし」


 逃げ回るティラノもどきを追いかけて走り回った体は汗にまみれ、砂にまみれ、返り血にもまみれている。正直、こんなところで足止めを食うぐらいなら一秒でも早く家に帰って水浴びがしたい

 海に入って体を洗う手もあるけれど、左右から岸壁が張り出して波が穏やかな入り江には巨大な軍艦が入ってきており、波打ち際には何艘もの小舟が乗り上げている。浜には五〇人か六〇人ほど、軍艦の船上にもこちらの騒動は何事かと眺めている人の目が無数にあり、そんな状況で水浴びするのは流石に遠慮したい。私に露出癖はないのだから。


(まあ、転生直後はずっと全裸で過ごしてたけどさぁ……)


 ともあれ、面倒ごとからは逃げるが勝ちだ。ゼドリックさんには申し訳ないけれど友好的とは言い難い兵士たちを押しのけて立ち去ろうとしたのだが、イリガルさんがボサボサの髪を掻き毟りながら私の前に立ち塞がった。


「悪いけど、あんたをこのまま返すわけにゃいかねえな。何者なのか洗いざらい吐いてもらうぜ」


 腰には剣を二本吊るし、その手には長柄の戦斧。取り囲んでいた兵士同様、私を敵と見据えている目だ。

 けれど兵士たちとは違い、無造作に見える立ち姿からは無駄な力が抜け落ちている。おそらく私がどんな動きをしても即応できるよう、臨戦態勢を取っているのだろう。


「俺達の人数やら装備なんかも見られた以上、拘束させてもらう。なに、手荒な真似はしねーよ。とりあえず船の一室に監禁ってとこかな」


「副将、それはあまりにも無体ではありませんか!? 彼女は何も罪は犯していません!」


「うるせぇゼドリック! お前は俺より下だろうが、いちいち口答えしてんじゃねえぞ!?」


「………っ!」


 ゼドリックさんの方が年上に見えるが、イリガルさんの方が立場が上なのだろう。副将と呼んでたし将軍の下、ここにいる兵士たちのNo.2というところか。

 だけどこいつ、私を威圧しながらこちらの胸とか太腿とかに視線を滑らせて鼻の下を伸ばしているあたり、好きになれそうにない。正直、不快過ぎてぶん殴りたい。部屋に閉じ込めて何しようって言うんだろうか。


「こっちは状況がさっぱりわかんねえんだ。ゼドリック、何があったか報告しろ。なんで魔竜(ギガバイト)があんな姿になってんだ」


「………はっ」


 軍隊という組織の中では上官の命令は絶対だ。そうでなければ何百何千何万という人間を統率することなどできないのだから。

 でも個人の感情は別だ。苦虫を噛み潰したような顔で口惜しさを隠しきれずにいるゼドリックさんは唇を噛み締めて俯き……イリガルの目が私を注視していて自分に向いていないのを知ってか知らずか、その口元をニヤリと釣り上げた。

 ………なにか悪いこと思いついたのかな?


「ご報告します。我々調査隊はクラエス島北東部の岩場にて、オーナリィ殿に保護されていた将軍を発見。目立った負傷は無し。この数日は徹夜続きだったこともあって今は熟睡中です」


「なんでこの状況で寝てられるんだよ、あの人は……豪胆過ぎんだろ……」


「発見後、即戦闘開始。軽くあしらわれ、負傷者は六名。全て軽症であり、行軍に差し支えありません」


「………ちょっと待て。あしらわれたって……誰にだ?」


「休憩を挟んだ後、帰還時の安全性を高めるためにオーナリィ殿と交渉。()()()()()()()ことを条件に同意を得られたため、同道していただきながら帰還いたしました」


「なんで俺の質問に答えてくれねえの!? てか、さっきからオーナリィって誰だよ!?」


「また友好の証として、オーナリィ殿が討伐された魔竜ギガバイトの心臓、肝、性器を譲り受けたたことも併せてご報告いたします」


「ぶっ!?」


 うわ、噴いた! 唾が飛んできたし! きたな~い!

 ええい畜生、体を洗いたい! 水浴びしたい! いい加減にしろぉおおおおおお!!!


 私のフラストレーションが限界に達する中、ゼドリックさんは自分の背負い袋から心臓などを個別に入れてティラノもどきの血で満たした壺を取り出した。


「竜の心臓に肝……マジ?」


「間違いなく本物です。魔竜の腹を開き、取り出される一部始終を私とカシムが見させていただきました。また、充填液の予備として竜の血も四壺いただいております」


「は、ははは……それ売ったら一生豪遊して暮らせるぞ……」


「ですな。しかしこれらは国王陛下に献上する方がよろしいかと。友好の証を横流しなどなさいませんよう」


「……わかってる。わかってるって。だからそんな胡散臭そうな目で俺を見るなって。俺だってそんなすぐさま足がつくような超々々々々希少品をくすねたりしないって!」


 あー、これはあれだ。ずぼらなダメ上司の典型と言うヤツではないだろうか。

 顔をにやつかせ、欲望丸出しの目で壺を見ている。口では横流しすることを否定するけれど、あれは必ず手を出すだろう。


「なんだよ! そんな不審がる目で俺を見るなよ! ホントだぞ!? ホントにくすねないって! だからその気前のいい旦那に俺を合わせてくれ! 俺も金になるもの欲しい! たしかオナn」


 最後まで言わすかぁ!!!


 堪忍袋の緒がブチッと盛大に音を立てて切れた私は、不精ひげを伸ばした男の襟首をすかさず掴むと、円を描くように私の胸の高さにまで引き倒し、三回転した勢いを乗せて真上へ放り投げてやった。


「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ……………ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!?!?!?」


 十数秒後、寸分違わず私のところに頭から落ちてきた。

 急接近する地面に激突して自分が死に至る光景を想像しているのか、涙と鼻水と涎を垂れ流しながら風圧に顔を歪ませ、()()()()()()()()()……その寸前で再び襟首を掴んで円を描くように振り回し、加速を打ち消してから砂浜に座らせた。


「………………あれ、おれ……いきてるの………?」


 普通に地面に立っていたのに空中遊泳を突然体験し、事態を飲み込めないまま死にかけたイリガルは体を震わせながらのろのろと左右を見回し、周囲にいる兵士たちに何があったのかと視線で問いかける。

 あと、言いたくはないのだけれど……イリガルのお尻の下の砂の色が湿り気を帯びて色を変えていた。


 気持ちはわかる。私も鳥型モンスターを狩ろうとして上空に連れ去られ、そのまま落下したことがあるから。

 今では慣れたけど、あの時の恐怖感ときたら……股間がキュッとするんだよねぇ……


「き、貴様、副将に何をヘブゥ!?」


 はい、正当防衛いただきました。

 ワンテンポもツーテンポも遅れて剣を抜いて切りかかってきた兵士。その顔を鷲摑みにすると足を払って後頭部を砂浜に叩きつけた。……うん、手加減が上手くなった。目を回してるけど死んでないから大丈夫だよね。


「このアマ、やりやがった!」

「やっちまえ! 敵討ちだ!」

「殺すなよ! 女に産まれたことを後悔させてやれ!」


 これだけのことを見せてあげたのに、まだ実力差が理解できていないらしい。

 兵士たちは次々に武器を手にして私へ襲い掛かってくる。勝手な思い込みで怒りを溜め込み、一方でこの島のモンスターへの怯えを振り払うように、弱者にしか見えない私にまとめてぶつけようとするとか







「黙れェ!!!!!!」







 長い黒髪が舞い上がり、爆発した私の感情が空間を威圧し、ギシリと軋ませる。

 まるで時が止まったかのような一瞬の静寂。……その直後、局所的に(ひず)んだ空間は瞬時に復元されるが衝撃を産み、同時に放たれた膨大な魔力を伴って周囲を打撃した。


「「「――――――――っ!?」」」


 兵士が吹き飛び、砂の上に波紋が奔り、打ち寄せる波が海岸に届く前に押し返される。

 不可視の攻撃。この世界には風の魔法もあるらしいから初見ではないだろうが、地面に倒れ伏し、海に叩き込まれた兵士たちは呆然と私の事を見上げていた。


 私の≪空間威圧≫はそれほど攻撃力のある技ではない。怒りに任せて発動させたので溜めもなかったし、効果範囲を絞った方が威力は増す。

 とはいえ、ちょっとした爆風ぐらいの威力がある効果範囲内で、私が何かすることを予見し、竜の心臓や肝やらを全力で庇ってその場に踏みとどまっていられたゼドリックさんはさすがと言うべきか。

 そしてもう一人、副将のイリガルはもっとも間近で≪空間威圧≫を受けたものの、後ろに手をついていたせいで吹き飛んでもいない。けれど体の下の湿り気はさらに広がっており、涙目でアゴをガクガクと打ち震わせていた。


 その様子を確かめてから、私は思いっきり極上の笑みを浮かべてその顔を覗き込んだ。


「はじめまして、私がオーナリィです♪」


 続けて、


「人の名前を二度と間違えんな。次は玉潰すよ?」


「………………………」


「返事は?」


「はひィイイイイイイイイ! 申し訳ありませんでした! 以後気を付けますので玉は、玉だけはご勘弁をぉ!!!」


「二個あるから一回ならセーフじゃないかな♪」


「すみませんごめんなさいだから手指をゴキゴキ言わせないでくださいぃいいいいいい!!!」


「何か私にお願いがあるんじゃなかった? 言ってみ? ほら、遠慮しないでいうだけ言ってみ?」


「もう言いません心を入れ替えてこれから真っ当な人生を歩みますんで、どうか、どうかお許しぉおおおおおお!!!」


 許すも許さないもなく、最初から玉を潰すつもりはない。(きたな)らしいモノを握りしめて潰すぐらいなら、石の大剣で股間ごと()()方が早い。

 けれど土下座して頭を地面に擦り付けながら泣いて許しを請う大人をこれ以上責める気にもならない。


 それでも、ここにいるのも限界だろう。

 先に喧嘩を売ってきたのはイリガルや兵士たちであっても、その仲間たちまで私に敵意や恐怖の表情を見せ始めている。

 ………仲の良かった幼友達が、何年も子供の姿のまま成長が止まってしまった私へ向けた、理解できないものへの恐れ、自分が巻き込まれるかもしれない怯え。そんなことを思い出してしまっては、この場に留まり続けることが苦痛になってしまう。


 だから早々に立ち去ろうと、獲物を乗せた荷台に足を進めたのだけれど、


「そうだ、言い忘れてた」


 すれ違い、私の視界から外れたイリガルに向けて一言告げる。


「本当に死にたくないならその手、それ以上伸ばさないほうがいいわよ」


 見えてはいない。けど、見えていなくても感じ取る方法はある。


 地面から少し頭を浮かせて私との距離を目測し、傍らに転がっている戦斧へゆっくりと手を伸ばしている。

 集中していないとここまで詳しくは普段ならわからない。憐れみを誘う態度から殺気をわずかに漏らしていなければ不意を打てたのだろうけれど、殺気の殺し方がまだまだ甘い。


 この島は天下御免の不意打ち王国だ。強い者が弱い者を蹂躙し、弱い者が強い者を奇襲する。弱肉強食ではない。双方相食とでも呼ぶべき食物連鎖が成り立っている世界がこの島なのだ。

 だからこの島で真の強者と呼べるものは、奇襲されても動じない圧倒的な強さを手に入れた一部の怪物だけだ。

 逆に転生直後の私は、この島で最も弱い者だった。それゆえに体を鍛えながらも常に罠を張り、策略を巡らせ、三年間を生き抜いてきたのだ。そんな私に気配も殺しきれずに奇襲を仕掛けようだなんて、無謀もいい所だ。


 だから教えておこう。この島では、こういう奇襲があるのだと。


「ゼドリックさん、悪いんだけど右に五歩移動してくれる?」


「五歩……これでよろしいですか?」


「うん、そこ。今からそこに出てくるから」


「………は?」


 ゼドリックさんが声を漏らした直後、足元の砂が盛り上がる。

 まるで波打つように砂浜が波打つ間に、私は荷台に歩み寄り、落ちないようにと差し込んでいたティラノもどきの胴体の下から愛用の大剣を引き抜いた。


「お、おいまさか!? 足元に何かいるのか!?」


 イリガルが慌てて立ち上がって周囲に警告を飛ばすけれど、対応が遅すぎる。

 次の瞬間には、ゼドリックさんの立っていた場所から土と砂とが間欠泉のように噴き上がっていた。その中から姿を現したのは茶色身を帯びた白色の巨大な芋虫とミミズを掛け合わせて巨大化させ、人を丸呑みにせんと筒状の口の中に生えた牙をギチギチ鳴らしている見た目最悪な巨大芋虫モドキだった。


 ―――けど、斬り倒しやすそうな胴体が目の前にあると、倒すのも楽である。


「本日四匹目ー!」


 左上から右下へ、ギザギザ刃の大剣を振り抜いて芋虫モドキの胴体をほぼ両断する。

 あえて薄皮一枚残す感じでぶった切らなかったのは、地中を掘り進んできた穴の中へ戻らないようにするためだ。例え虫でも貴重なタンパク質。海水を蒸発させて作った塩と乾燥ハーブとで輪切りを石焼ソテーにしたら弾力的な肉質と迸る肉汁で絶品の一言。それなのに後ろ半分逃がしたらもったいない。

 ちなみに、もしこいつが全身を外へ飛び出させて兵士さんたちに襲い掛かれば、拠点壊滅するのは言うまでもない。上空から見降ろし、ついばむように一人一人丸呑みにされ、あの牙だらけの筒状の口内でミンチにされてしまうのがオチだ。集団で挑んできても私程度に勝てないようじゃ、モンスターの良い餌にしかなりはしない。


 けどまあ、地中からの奇襲に対応さえできれば倒すのは簡単だ。斬られた直後は派手にのたうち回っていたけれど、傷から白い体液が流れ出るほどに目に見えて弱っていく。

 既にリソースは私に吸収されているけれど、こと切れるまで黙ってみていられるほど暇ではない。トドメを刺すべく大剣を担いで頭部に近づいたのだが、




 私が叩き潰すよりも先に、芋虫もどきの頭部が切り落とされた。




「おお……!?」


 まるで閃光が走ったかのような鋭い剣線。

 突然の襲撃に右往左往していた兵士などとは比べるまでもない。目を見張る技の冴えに思わず感嘆の声を漏らしてしまう。


 そして崩れ落ちた芋虫もどきの向こうにいたのは、手には淡く魔力光を放つ剣を手にした男の人が立っていた。

 金色の髪に整った顔立ち、強い意志を感じさせるけど決して威圧的ではない眼差しが印象的な男性だ。外から来た人間に失望していた私に強烈な印象を与えてくれる。


「―――改めて名乗らせていただく」


 しばし見つめ合っていると、海からの風に金色の髪をなびかせながら、彼は力みなく伸ばした背を折り曲げる。そして心臓のある左胸に手を当て、私へと深く頭を下げた。


「ラザレス王国第三軍統括将軍ラウル=ソル=ラザレス、この度は主神ヴィンデルカの神託に従い、貴女をお迎えに上がりました」


「………はい?」







 神託? お迎え? この変質者はなに言ってんだ?

 けれど彼――ラウルの言葉が、死の気配に満ちた安寧の無人島生活から波乱に満ちた世界へ飛び出す切っ掛けになるとは、この時の私は想像することも出来なかった。

そ、そろそろゲームのイベントに取り掛かりたいです……

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