38、シルヴィアとの決闘①
ナインさんのところからの帰りだろうか。
シルヴィアは北東にのびる道から、家の方へと向かっていた。
「シルヴィア……」
俺がギルドに引き返したときには、すでにナインさんやレナさん、シルヴィアの姿はなかった。
きっとあれから北の森に戻ったのだろう。
そう思っていた。
ギルドがもらったあの一千万エーンという報奨金は、それぞれの頑張りに応じてみんなに再分配されていた。
俺の取り分は百万エーン。一番の功績があったからだそうだが、一番多い額だった。でもナインさんやレナさん、シルヴィアにもきっとそれなりの額が支払われるはずだ。それだけ、みんなそれぞれに活躍していた。
シルヴィアは、自分の分の報奨金を手にしただろうか?
ギルドに寄ることなく帰ってきたのかどうか……わからない。
俺はシルヴィアに直接訊いてみることにした。
「おーい、シルヴィア!」
「ん?」
振り返ったシルヴィアは、なぜかいつにも増して美人に見えた。
激しい戦闘があったので、髪とか服とかまだボロボロなのに……なぜか俺にはそれがとても魅力的に見えて、どきりとした。
シルヴィアは、突然俺が現れたので驚いている。
「あ、アレックス!? も、もう村に帰ってたのね!」
「うん。シルヴィアこそ……。今まで、北の森に行ってたのか?」
「ええ、そうよ。ナインさんがもう一度修行するぞーって言いだしてね。レナさんと一緒に、だいぶしごかれたわ。ダンジョンであまり活躍できなかったのが悔しかったみたい」
「ああ……なるほど……」
悔しがるナインさんの姿がありありと想像できる。
俺は思わず苦笑した。
「ああ、そうだ。シルヴィア、あれからもう一度ギルドに寄った? 役所で直談判したら意外とたくさん報奨金がもらえてさ……」
「ええ。寄ったわ。わたしの分の報奨金ももらえた。ありがとう、アレックス」
「いや……みんなの力があったから、俺もあのラミアを倒せたんだし。なんにせよみんな無事で、討伐できて良かったよ」
シルヴィアがまた寂しげに笑っている。
やはり、ダンジョンマスターを自分が倒したかったんだろうか。ダンジョンコアも、自分が壊したかったんじゃないだろうか。
そうじゃなきゃ、冒険者じゃ……ないもんな……。
「シルヴィア!」
俺はもう一度、シルヴィアを強く呼び止めた。
「なに?」
すでに歩き出していたシルヴィアは、長い金髪を風になびかせて振り返る。
俺は……今の彼女に、こういうことしか言えなかった。
「シルヴィア。俺と……」
「え?」
「俺と……」
「……?」
「けっ、けっ……」
ダメだ。言うのが怖い。でも、言わなきゃ。
「けっ……決闘してくれッッ‼」
「決闘!?」
そう。決闘だ。
一対一で戦ってほしい。そうして、今の俺たちの差を比べたい。
誰かの助けなしに。
純粋に、自分たちだけの力を――。
シルヴィアは呆気にとられたような表情で俺を見ていた。
しばらくそうしていたが、ようやく我に返る。
「わかった……わ。わたしも、前からそうしてみたいと思ってたの」
シルヴィアは場所を移しましょう、と言って、俺とともに村はずれの丘へと移動した。
見渡す限り一面の草原。
村の畑や家々は、かなり遠くに存在している。
「ここならいいわ。結界の外だから……。モンスターが途中で邪魔してくるかもしれないけどね」
「ああ。でも……それも織り込み済みで、戦おう」
「ええ。やりましょう」
シルヴィアはそう言うと腰の剣を抜いて、俺に向かって構えてきた。
そして「ステータス・オープン!」と叫ぶ。
「まずは、今のわたしのステータスを見てもらいたいわ。そして、これが無謀な戦いではないことを理解して!」
半透明の窓が目の前に浮かびあがる。
その中に書かれていた数値を見て、俺は……決闘を申し込んだのは間違いじゃなかったと思った。
物語はあと数話で最終回となります。
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