34、ついに剣聖に
ダンジョンが崩壊をはじめる。
俺は、たった今ダンジョンコアを斬った。
空色のダンジョンコアは、二つに割れて、青い液体のようなものを広間の床に浸透させていく……。
結局、じゃんけんに勝ったのは俺だった。
シルヴィアは悔しそうに俺をにらみつけていたが、ルールはルールなのでしぶしぶ引き下がっていった。
そして、みんなは先に脱出し、俺だけここに残ったのだ。
「ヘイスト。それから……防御力アップ!」
俺は自分に補助魔法をかけ、走り出した。
階段はあふれ出したスケルトンたちで一杯だったが、そいつらの頭を踏みつけながら上を目指す。
今の俺はレベルアップをしたばかりで力がみなぎっていた。
光魔法を付与した剣で、スケルトンを薙ぎ払いながら進む。
やがて、ようやく地上に到達すると、ギルドのメンバーたちが俺を出迎えてくれた。
「あ、アレックス!」
「アレックス君!」
みんなの元へ駆け寄ると、背後でちょうどダンジョンの入り口が崩れ落ちたところだった。
幾体かのスケルトンたちも、ギリギリ外にまろび出る。
しかし、それらはすぐに騎士団の人たちに制圧された。
「はあ、ようやくこれで、ダンジョンを破壊できた……」
「あのラミア、けっこう厄介だったわねー」
「まさか雌雄変化できるとは」
みんなで戦いを振り返っていると、ギルド長のアシュリーさんが「よくやったな」と俺の肩を叩いてきた。
正直、じゃんけんで勝ちあがっても、本当にあの役目を任せてもらえるかはわからなかった。でも、アシュリーさんはちゃんと任せてくれた。今はそれにとても感謝している。
「なあアレックス君、さっそくどのくらいステータスがあがったか見せてくれないか?」
「はい。す、ステータス・オープン!」
「おおっ!」
そこには、一気にレベルアップしたステータスが並んでいた。
【名 前】 アレックス・ジットガマン
【性 別】 男
【年 齢】 17
【職 業】 農民 剣聖
【体 力】 1500
【魔 力】 1500
【物 攻】 1500
【魔 攻】 1500
【物 防】 1500
【魔 防】 1500
【スキル】 複数魔法付与剣技LV300 物理攻撃耐性LV300 炎・闇魔法耐性LV300 水・雷・風・土・光耐性LV200 毒耐性LV200 精神汚染耐性LV300 時間魔法耐性LV200 全属性魔法LV200 時間魔法LV200 回復魔法LV300
「各ステータスが上がってます。体力・魔力の基礎ステータスが千五百、それから……あれ? スキルレベルは、三百と二百があるな……」
「三百は、もともとアレックス君が自ら戦闘で得ていたレベルだろう。だが、あのダンジョンコアは、色からしてどう見てもレベル二百ほどしか上がらないものだった。だからそれ以上のレベルにはならなかったのだろう」
「なるほど……だからバラツキが出てるのか」
それでも大幅なレベルアップだったので、俺は嬉しかった。
「あれ? てか俺、いつの間にか職業が……『剣聖』になってる!?」
「ん? 気付いてなかったのか? ダンジョンマスターであるラミアを倒せた時点で、君はもう剣聖レベルにランクアップしていたんだぞ。じゃなきゃ私もダンジョンコアを破壊する役目を任せなかった」
「そんな……俺が、剣聖に?」
夢見ていた職業にランクアップしていた。
俺は感激のあまり、体が震える。
「……」
シルヴィアが、名残惜しそうにダンジョンの残骸を見つめていた。
俺と目が合うと、気まずそうに視線をそらす。
なんだか、胸に不思議な感覚がある。
これは……なんだ?
まあ、シルヴィアもレベルアップしたかったよな……。
でもじゃんけんでは俺が勝っちゃったし……。
うん、仕方ない。これだけはどうか恨まないでほしい、と思った。
「さあて。じゃあ、一旦王都に戻るか。クエスト達成の報告もしなくちゃだしな。今回は、きっとたんまり報奨金がもらえるぜー!」
リーダーさんがウキウキでそんなことを叫ぶ。
しかし、その空気に水を差すように、騎士団長さんが言った。
「おい、それを判断するのはお前たちじゃないぞ。果たして上は、お前たちの手柄と認めるかな?」
ナインさんがそれに同意するようにうなづく。
たしかに……ナインさんはここに来た当初、その点をアシュリーさんに指摘していた。
これはギルドが勝手に逸脱してやってることじゃないか、と。
その場合、報酬が得られるのか否か……。
俺はみんなと同様にそのことを心配しはじめたのだった。




