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30、ダンジョン攻略②

 俺は言葉を失っていた。

 この場にシルヴィアが来るなんて……しかも賢者のナインさんまで一緒に来ているなんて。

 ものすごく気まずいけど、どうやら彼らもこのイベントに加勢しにきたようだった。


「フン、ダンジョンとは厄介なものが近くにできたもんだな。さっさと片づけるぞ」


 賢者のナインさんはそう言って、すぐにダンジョン内に入ろうとする。

 しかし、それをギルド長のアシュリーさんが止めた。


「待たれよ賢者殿。これは我々ギルドが請け負った仕事。レナはこのために呼び戻したが、貴殿のことは呼んでいない」

「ふふ……話はだいたいレナから聞いてる。なあ、君たちだって、ダンジョンの破壊までは依頼されてないだろう? だったら俺もそっちも、同じような立場じゃないか」

「……! どうしてそれを」


 アシュリーさんは、ちらりと、白フードをかぶったレナさんへ視線を向けた。

 レナさんは困ったようにはにかむ。


「いやあ、師匠に訊かれちゃってさあ。このダンジョンのこと。近くにできてるって言ったら、じゃあちょっと見にいこうって話になっちゃってさ。阻止しきれなかったんだよう」

「レナ」

「しょうがないじゃないかー。この人、一度こうって決めたらなかなか引いてくれないんだもん」


 はあ、と大きくため息をつくアシュリーさんに、ナインさんが続ける。


「いいかね? 君たちは、『村の警護』しか依頼されてなかったはずだ。それなのにここまで出張るなんて……少々『依頼内容』を逸脱しすぎではないかね?」

「それもレナから聞いたのか? 我々は……『村を総合的に守るために』このダンジョンも破壊せねばならぬと判断しただけだ。ゆえに、部外者にどうこう言われる筋合いは――」

「それが逸脱しているというんだ」

「……何が、望みだ」

「ん?」

「そうまでして、貴殿もこのダンジョンを攻略をしたいということだろう。それは何故だ?」

「話が早いな」


 要はナインさんはシルヴィアの腕試しをここでやりたいということだった。

 シルヴィアは「そんなの聞いてない」とひどく困惑している。世話になってるギルドに迷惑をかけたくないのだろう。

 アシュリーさんはううむとうなった。


「そうか。実は、我々も……『若手の育成のため』という側面が少なからずあってな。なにせ、こういう機会はめったにないんだ。なら最大限有効活用せねば、だろう?」

「だと思ったよ。なら、ここはひとつ共闘といこう。周囲への被害は、君らも最小限に抑えたいはずだ」

「ああ。であれば、貴殿らの『協力』に感謝する」


 どうやら話はまとまったようだ。

 ギルド側からは、アシュリーさん、レナさん、リーダーさん、俺、その他二人。そしてナインさん側からはナインさんとシルヴィアという、合わせて八人が突入することになった。


「ちょっと待った!」


 しかし、ダンジョンに行こうとする俺たちを、またも阻む者が現れる。

 それは王都の騎士団の団長だった。


「ここから先は騎士団の管轄だ。ダンジョンから出てきて散らばったモンスターたちを倒してくれたのは助かった。だがあとはここをずっと見張っていればいい。別にダンジョンの中にまで入る必要はない」


 入り口付近に、騎士団のメンバーが集結する。

 彼らは一匹たりとも、そこから出てきたモンスターを討ち漏らさないという気迫でいた。

 だが、ギルド長は反論する。


「お言葉だが、ベック騎士団長。出てくるモンスターがスケルトンだけとは限らない。今後、より強力なモンスターが出てくることだってありえるぞ。そうした場合、この戦力で足りるのか? もしここを突破されて王都にでも向かわれたら、大惨事だぞ!」

「それは……」

「私はそういう例が過去にあったと、先代ギルド長から聞いている。だから、叩くなら先手で行かないといけない!」

「それには、俺も同感だ」


 ナインさんが二人の会話に割って入ってくる。


「あなたはもしや、賢者の中の賢者と言われる……?」

「ああ、ナインだ。中にはきっとモンスターたちを統率するダンジョンマスターがいるはずだ。そいつを叩かねば、この悪夢はいつまでも終わらない」

「……わかりました。ではこちらからも自分を含め、数人の騎士を連れていきます」


 そうして、騎士団長を含む四人の騎士が加わって、ダンジョン攻略パーティーは総勢十二名となった。

 残りの騎士たちとギルドメンバーは外で待機となる。


 俺たちは彼らを差し置いて、ダンジョンの中へと入っていった。

 洞穴のような入り口から進むと、広い階段が下へと続いている。俺たちはモンスターの出現に警戒しながらも、慎重に下っていった。


 レナさんは隊の先頭に立って、自分の杖の上部についている魔石を魔法で輝かせはじめる。

 周囲がぱっと明るくなって、格段に歩きやすくなった。パーティーメンバー全員に、周囲が良く見える補助魔法をかけてくれてもいる。


「レナさん、ありがとうございます」


 お礼を言うと、「これぐらいどうってことないよー」と前方から返事があった。

 いったい、どこまで下に降りるのだろう。

 静まり返った階段を下りきると、その先には広場があり、なんと巨大なモンスターが待ち受けていた。


「来たか、愚かな人間どもめ……。わらわはラミア。この中に立ち入ったこと、後悔させてやろうぞ!」

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