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19、何やってんの

シルヴィア視点の回です。

 その日、わたしはいつものように王都のギルドに行こうとしていた。

 身なりを整え表に出ると、なんとアレックスのお母さんがいる。


「えっ? おばさま? おはようございます。どうしたんですか?」

「ああ、おはよう、シルヴィアちゃん。あのね……アレックスのこと何か知らない?」

「アレックス、ですか? なにかあったんですか?」

「それがねえ、王都に行ってからもう三日も家に帰ってきてないんだよ。みんなもそろそろ王都に野菜を売りに行きたいって言っててね、どうしようかって昨日も話し合いをしたばかりなんだ。ねえ、何か知らないかい?」


 あのバカ。何をさっそくみんなに心配かけてんのよ。

 わたしはおばさまに気付かれないよう心の中で舌打ちすると、無理やり笑顔を作った。


「えっと……おとといギルドで見たときは、なんかわたしよりもいい修行をつけさせてくれる人を探してましたよ。きっと今頃はその人のところにいるんじゃないでしょうか」

「なんだいそれ……。あの子、シルヴィアちゃんとはもう訓練しないって言ったのかい?」

「ええ、まあ……」


 やっば。おばさまはまだアレックスからこの話を聞いてなかったんだ。

 ったく……マジで何やってんのよ。

 わたしとの訓練を辞めた理由くらいちゃんと話しておきなさいよね!


「すまないねえ、シルヴィアちゃん。あんな過酷な仕事、長い間引き受けてくれてたっていうのに……」

「いえ……いいんです。わたしとじゃもう、あいつのレベルアップはこれ以上望めませんから……。わたしが剣聖にならないかぎり、あいつのスキルレベルの上限突破はありえないんです。わたしは、アレックスの意志を尊重します」

「はあ……こんなにいい子なのに。うちの子が本当、すまないねえ」


 いい子……。

 それについては何も言えなかった。

 わたしたちは、おばさまに言われるまま、ただ訓練をしていたわけじゃない。あれは、だんだんとひどくなっていたのだ。


 わたしがアレックスを痛めつけることに快感を覚えるようになったのは、いつの頃からだっただろう。もはや彼をいたぶることが、わたしの趣味のようになっていた。

 本当は、もっと早くこの異常さに気付くべきだった。

 そうすればアレックスは……。


「とにかく。今日はわたしが、村のみなさんを王都まで護衛します。ちょうどこれから行くところでしたしね」

「そうかい。じゃあ頼むよ。アレックスももし見かけたらうちに連絡をよこすように言っておくれ」

「はい、わかりました」


 そうしてわたしは村のみんなとともに王都まで行くことになったのだった。


 途中スライムが数体出たけれど、幸いわたしの戦力だけでどうにかなった。村の人たちとは、王都につくとすぐに別れ、帰りの護衛はギルドの冒険者に頼むということになった。


 ギルドに寄り、その旨を受付嬢にお願いすると、わたしはわたしでさっそく受けられそうなモンスターの討伐クエストを探す。

 と、そこに、おととい会ったレナさんがやってきた。


「お、シルヴィアちゃん。三日ぶり~かな?」

「どうも。お元気そうで何よりです、レナさん」

「なになにー? なんかやれそうなクエスト探してるー?」

「はい。このクリスタル・アリゲーターの討伐クエストなんか特に気になってまして……」

「あー、これねー。希少な素材が取れるからかなり高額クエストになりそうだよねー。って、本当は別のことが気になってるんじゃなーい?」

「は?」


 クエストの発注書一覧を眺めていたわたしは、ぎくりとレナさんを振り返った。


「な、ななっ、何が気になってるって言うんですかっ?」

「またまたー。キミの幼馴染くんのことだよー。死んではないと思うけどー、あれから全然姿を見ないからねー。そろそろあたしも様子を見に行こうかなって思ってたところだったんだ。シルヴィアちゃんも行くー? あたしの師匠のところ」

「はっ? な、なんであたしが!? か、関係ないですからっ、もう!」

「そーお? ならいいんだけどー。じゃーねー」


 そう言って、レナさんはさっさとギルドを出ていく。

 どうしてあたしが……。

 たしかに、気になってないって言えばウソになる。でも、アレックスはもうわたしの顔も見たくないって思ってるだろうし、今更……。


「ああああっ、もうっ!」


 でも、アレックスのお母さんも心配していたし、やっぱり様子を見にいかなきゃと思った。

 慌てて外に出ると、レナさんが仁王立ちで待ち受けている。や、やられた……。


「あれれー? シルヴィアちゃん、どーしたのかなあ?」

「あー、その……。やっぱ行きます……」

「そっかー。うん。そーこなくっちゃ!」


 にんまりと笑ったレナさんに、わたしは複雑な気持ちになった。

 でも、この人しかアレックスの居場所を知っている人はいない。わたしはそれを、少し悔しく思いながらしぶしぶレナさんについていったのだった。

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