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16、師匠探し

 俺は王都のギルドで、剣聖か賢者レベルの人を紹介してもらおうとしていた。

 眼鏡の受付嬢は「えーと、ウチそういうあっせん業務ってしてないんですよねえ」と困ったように言う。


「あのですね……特定の冒険者の住所を他の冒険者に開示してしまうとですね、個人情報保護の問題が……」

「そこをなんとか」

「んー、そうですね……。あ、ギルド長とは昨日クエストご一緒してましたよね? ギルド長じゃダメなんですか?」

「あー。いや、できれば他の人を……。魔法が得意そうな人にお願いしたいんです」


 ギルド長のアシュリーさんは、確かに『剣聖』だ。

 でも昨日シルヴィアと似たような視線を向けられた気がしたので、ちょっとご遠慮したかった。


「んー。となると……もうこちらがしてあげられることはないですね」

「そんな! そこをどうにか、お願いします」

「そう言われましてもですね……」


 そんな押し問答を続けていると、玄関の方から見知った二人がやってきた。


「やあやあアレックスくーん! また会ったねえ」

「おはよう……アレックス」

「レナさん!? それにシルヴィアまで。どうして……」

「どうしてって、ついそこで偶然会ったんだよー」

「わたしも、いつものように仕事を探しにきただけよ。あんたを……別に追ってきたわけじゃないわ」

「そ、そうか……」

「なになにー、アレックスくん、なんか困ってるのー?」


 レナさんはどうも俺の様子が気になるようだった。一方シルヴィアは「まったく興味ありません」とばかりに視線をそらしている。無理にそうしているようにも見えたが、とりあえず今はそれどころじゃなかった。


「あ、実は俺……今までシルヴィアと訓練してきたんですが、これ以上強くなるためには剣聖か賢者レベルの人に修行をつけてもらわきゃいけなくって……。それで、そういう人をギルドで紹介してもらえないかなあ、と思って来たんです」

「はー、なるほどねー。でもそれはここではちょっと無理な相談かなー」

「やっぱそうですか……」


 しゅんと肩を落としていると、レナさんはいきなり自分の胸を叩いた。


「よっし! じゃあ、このレナさんに任せなさーい!」

「「えっ!?」」

「ツテがないこともないからね、なんとかできるかもー」


 俺はもとより、シルヴィアまでその発言に驚いていた。

 まさかレナさんがそんなことを言ってくれるとは思ってなかったのだ。昨日の、今日だぞ。出会ってまだ少ししか経っていないのに……なんて親切な人なんだ!


「なんとかって、誰か紹介してくださるんですか?」

「んー、あたしの師匠、なんだけどー。その人でよかったら」

「れ、レナさんの師匠?」

「うん。かなり偏屈、っていうか厄介な人だけどねー、腕は確かだよー。一応、『賢者の中の賢者』って呼ばれてたりしてるかな」

「賢者の中の賢者……すごい!」


 ようやく道が開けてきた、と俺は心の中でガッツポーズをした。

 でも、レナさんが急に不穏なことをつぶやく。


「あーでも……アレックスくん、無理だと思ったらすぐ引き返しなねー?」

「え?」

「本っ当に変わった人だから。まあ、アレックスくんぐらいの能力なら大丈夫だと思うけど……。あっ、そうそう。あたしはこれから用があるんで、アレックスくんを直接師匠に紹介しに行けないけど、いいかなー?」

「あっ、はい」


 レナさんは受付嬢から紙とペンをもらうと、さらさらと、地図と紹介状を書いてくれた。


「これ、持って行って。あとは、アレックスくん次第だよー!」

「ありがとうございます。なにからなにまで……」

「いいよー、別にたいしたことしてないしー」

「いえ。じゃあ、頑張ってきます!」

「うん。いってらっしゃーい」


 俺はレナさんに一礼すると、すぐにギルドを後にした。

 途中、ちらと横目でシルヴィアの様子をうかがう。一瞬目が合ったが、特に何も言われなかった。昨日あんな風に拒絶してしまったので、気まずいのかもしれなかった。けど、今彼女に構っているヒマはない。


 俺は地図と紹介状を懐にしまうと、王都を出た。


 向かうは北の森。

 地図を見た限り、そんなに遠くはなさそうだった。俺の村は王都から西へ行った所にあるから、距離的には割と近いかもしれない。これが東の方面だったらめちゃくちゃ遠く感じていた。


「まさかレナさんの師匠が『賢者』だったとは……よーし、なら魔法を重点的に教えてもらおう!」


 そうして、俺は北に向かったのだった。

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