プロローグ
突然だが俺、藤本直人は妹が欲しい。
いや、妹限定ではなく姉でも構わない。兄や弟は……なんか面倒そうだからやめておこう。
ただ俺は『兄妹』が欲しいのだ。
何故か?
俺はまだ幼稚園に通っていた頃に交通事故で親を二人とも亡くしてしまった。
その時まだ理解力の無かった俺は何も知らされず親戚のおじさんの家に預けられ、離婚で妻と子供がいなかったおじさんは俺の事を本当の息子の様に育ててくれた。親が帰らぬ人になってしまったと知ったのは4年後の小学2年生の時だった。
今でも泣きながら事実を伝えてくれた親戚のおじさんの顔を鮮明に思い出すことができるが、その時もう一つ知らなかったことを伝えてくれたのだ。
亡くなったお母さんのお腹の中には俺の妹になるはずだった子がいたという事を知らされた。
その時はなんとも思わなかったが学年が上がるにつれて妹が俺にいたらどうなったのだろう……仲良くできたかのかな?などと思い始めていた。
周りの『兄妹』を見るたびに『羨ましい』と思いどこか『寂しい』気持ちになる。
そんな日常に変化が訪れたのは俺が高二に上がり春が終わり、夏直前のことだった。
おじさんが再婚して、念願の妹ができたのだ。
「直人、新しい家族を紹介しようと思う」
「貴方が直人くん……初めまして、この人から事情は聞いているわ。 ご家族の件とても大変だったと思うけど、今日からよろしくね」
世間的に見ても美人といわれるであろう人に新しい親ですと急に言われてすぐ返答出来る人がどれほどいるだろうか。
だがそれよりも俺はもう一人の新しい家族の方が気になっていた。
「美野原真琴です。 今日から藤本真琴になりますけど、よろしくお願いします」
真琴は親譲りのとても綺麗な顔立ちだった。
「真琴ちゃん、でいいのかな? こちらこそよろしくね」
「はい、よろしくお願いします……えっと……お、お兄ちゃん」
顔を紅く染め小さな声で発せられた言葉で俺は改めて自覚する事が出来た。
ついに念願の妹が出来たのだと。