第六話
家に帰った俺は、近藤に電話をかけることにした。ボーリングは四人くらいいないと面白くならないだろう。決して近藤個人と遊びたいわけではないのだが、こいつ以外に誘えるほど仲の良い友達がいないというのが少々悔しい。
「もしもし?」
『あ?俺やけど何?』
お前に電話したんだからお前が出て当たり前だろうが。そもそも俺やけどって何の情報もない言葉を吐くな。
「今度、ボーリング行くんだけどお前も行くか?」
『あーあの玉転がしか。どうも性に合わなくてな。俺はパスさせてもらいますわ。』
そう言うと思ったぜ。
「そうか。一組の女子二人も来るしちょうどいいかなって思ったんだがな。」
思ったんだがな、と言い終わらないうちに彼は言葉を発していた。
『なんやお前。それを先に言えよ。ボーリング大好きやねん。しゃーないから行ったるわ。』
聞いたら関西人が憤慨しそうなエセ関西弁を聞かされた俺は、日程の希望を聴取して電話を切った。全く調子のいいやつである。
その後俺は、机に座ってパソコンを立ち上げたところであることに気づいた。水無瀬さんに日程を聞き忘れてしまったのだ。
近くの携帯を睨みつける。電話するしか手はないのだろうか。彼女、携帯自体をあまり手に取らないだろうから、ショートメールだと気づかないかもしれない。であれば……。
俺は、携帯を手にとり、登録したてホヤホヤの彼女の連絡先を選択する。そして受話器のマークを押した。
プルプという最初の呼び出し音に続けて、三回ほどコールが繰り返された後カチッという音がした。
「もしもし水無瀬さん?」
『はい。』
雑音と勘違いしてしまうような小さな声が聞こえた。
「あのさ、ボーリングの話なんだけど、いつがいいかな?」
少しの時間を経た。カレンダーを確認してるのかもしれない。
『学校ない日ならいつでも』
「そっか。わかった。決まったら連絡するね。」
『わかった。』
「じゃあね。」と言うと、彼女からも『うん』と返事があった。
そこで受話器を置くボタンをタップだ。
なんとなく、切るタイミングで迷ってしまうんじゃないか、と不安だったが、難なく終えて俺はほっと一息つくのだった。
その後、三枝にも電話をしてみると、『周りに合わせるよー』と言っていた。一番忙しそうな人間がそういう反応なのは非常に助かる。日程希望を出したのは最不要の近藤だけであった。
他の作品見てとてもニヤニヤしています。やっぱり小説っていいですね。