第三話
次の日の一年四組教室でのこと。
高校に入学したばかりの高校入学生と、すでに三年通い続けてある程度の派閥が形成されている内部進学生の雪解けはまだ先のようだ。
「なんでまたお前とクラスが一緒なんだろうな。」
大抵の会話は軽口から始まる。俺は近藤に話しかけた。
こいつとは中学も三年間、同じクラスなのだ。その上、近藤と冴島は『こ』と『さ』で常に前後関係を保ってしまう。席替えがまだ行われていないこのクラスは出席番号での席順であるため、俺の目の前に近藤が座る形となる。彼の茶髪はもう見飽きた。
「そりゃ運命だろうよ。」
気色が悪い。
「運命と言えば、これこそ運命だ! っていう話がある。」
「ほう。なんやそれは?」
彼は興味を持ったのか、席を回転させてこちらに体を向けた。
「お前がこういう状況に置かれたと思って聞いてくれ。ある放課後に呼び出された。僕っ娘が告白してきた、理由は最寄り駅が同じで優しそうだから。受け入れるか?」
首を両方にポキポキと傾けた彼は、落ち着いた声色でこう言った。
「ガッチリと受け入れるなぁ。それは。」
少しの間を経た。そうだ、この間をこう名付けよう。賢者タイムと。
「どうして?」
「普通に受け入れるさ。それだけ勇気を出してくれてるわけやし。てかそのストーリーは何から来たんだ?」
訝しげな視線を彼は送ってきたので、テキトウに返答する。
「死ぬほど売れ残っているつまらんラノベの序章だ。」
「なら話は変わってくるな。」
彼は俺の机に頬杖をついて、言った。
「俺、ハーレムは無理なんだよね。」
「それはまたどうして?」
俺は興味がないので、単語帳を開いてBGM程度に聞いてみる。
「売れないラノベって大体ハーレムやん。」
偏見すごいな。確かに最近そういう風潮あるけど!大体最初に登場したヒロインが勝ち抜くっていう雰囲気流れてるけど!
「ハーレムが無理な理由を聞いている。」
ああそっちな、と頷いて彼は言った。
「だって、他の女の子を悲しませるわけやろ?」
「むしろ他の女の子を救ったって考えるべきだろうな。」
「どういうことやお前。」
彼の言葉を無視して、俺は考えた。やっぱりあいつに相談しよう、と。