第9話 スケルトンmarkⅡ
僕の考えた最強の戦術があっけなく駄目になった翌日、目が覚めるとポヨポヨが分裂して2体になっていた。折角育てた巨体が半分になってしまったのだ。
「ポヨポヨ~! 何でだよ。折角大きくしたのに・・・・・・」
俺はポヨポヨを育ててドラゴンを一呑みにする巨大スライムにしようと頑張っていたのだ。それなのにこんな無残な姿になってしまうとは・・・・・・ガッカリだよ。
「スライムは成長限界に到達すると分裂するんですよ、マスター」
「半分になったら威力も半分だよな~、これでオークに勝てるのかね? まあいざとなったら2体同時攻撃で同じ重さになるよな・・・・・・!!!」
そこで俺は閃いた、俺はタマ~に良い考えが閃くのだ。
「ポヨポヨ!合体だ!合体するのだ」
「????」
ポヨポヨは触手を伸ばして器用にクエスチョンマークを作っていた、此奴はかなり頭が良いのだ、賢い犬や猫位の知能が有る様な気がする。これもヒトエに俺が魚をやったお陰かも知れない・・・・・・歌にも魚を食うと頭が良くなるって言ってたしな。
「違う違う! ポヨポヨ同士が合体するんじゃなくてスケルトンと合体するのだ。2体の力を合わせて無限のパワーを出すのだ。俺の世界では常識だったぞ」
ポヨポヨは分裂した2体で集まって合体しようとしていたが俺の考えは違うのだ、軽すぎて使えないスケルトンに物理耐性の有る重いスライムが筋肉の様に覆ってしまえばスケルトンの軽量過ぎて弱いって弱点が無くなると思ったのだ。そもそもスケルトンは不死族なのでバラバラに成っても直ぐに再生する、頭蓋骨を破壊されない限り死なないという魔物だ、武器を持たせても自重が軽すぎるので威力が無かったり相手の攻撃を受けると直ぐに吹き飛ばされてバラバラになっていたのだ。そこにスライムのポヨポヨが合体すれば物理耐性の有る丈夫なスケルトンになるはずなのだ。
「よ~し良いぞ、そのままスケルトンの全身を覆うのだ、そしてポヨポヨの核はスケルトンの頭蓋骨に隠すと完璧だぞ」
目の前でスケルトンが人間らしくなって行った。水色で中に骨が有る奇妙な魔物だった。抱えてみると大体70キロ位有る様だ、スケルトンの元の重さは10~20キロ位だったのでほぼオークに匹敵する体重の魔物になった。
「鉄の剣をやるから装備してみろ」
「・・・・・・」
スケルトンは嬉しそうに鉄の剣を受け取ると剣を振り始めた、今までなら体重が軽すぎてフラフラしていたが体重が増えたお陰かスライムの力が加わったせいなのか、風きり音がする程の鋭い素振りだった。
「お~! 良いんじゃない。来てるんじゃないのスケルトンとスライムの時代が」
「良し、早速実戦だな」
団扇係りのスケルトンは戦闘用になったので新しい団扇係りのスケルトンを召喚する、こいつも新型にすれば良さそうなのだが、今までの俺の計画は全て失敗に終わっているので慎重に行動する事にしたのだ。ハッキリ使えそうだと分かったら時に新たにポヨポヨと合体させれば良いのだな、俺は失敗から学ぶ人間なのだ。
団扇スケルトンが干物を焼いている間に戦闘体制へと移行する。と言っても何時も通り、ポヨポヨは天井新型スケルトンは剣を持って入口のすぐ脇、相手が入ってきたら暗闇に目が慣れないうちに剣で突き刺す係り、俺は奥のダンジョンに直ぐに逃げ込める様に一番奥に毒槍を持って仁王立ちだ。ふふふ、完璧な布陣だぜ、戦って良し逃げて良し、俺って天才じゃないだろうか。
「マスター今回珍しく逃げ腰ですね」
「失礼な! 慎重と言え、慎重と」
今までの計画が尽く失敗しているので俺は弱気になったのだ。強い魔物がいきなり入ってきたり、新型がまるで役に立たなかった場合でも自分の身の安全は守りたいのだ。幸いポイントは沢山あるので奥に逃げ込んで次の作戦を立てる位の事は出来るハズなのだ。何だかハズが多いな~、これってダメなんじゃないかな~なんて思ったりするのだ。
「オーク2体の侵入を確認、迎撃して下さい」
「あいよ! ポヨポヨ行け。新型も随時戦闘に移行せよ」
同空に入って来たオークは暗さの為に入口付近で立ち止まっている、そこに天井からポヨポヨが落ちてくる。半分になったとはいえ50キロ位あるものが天井から頭目掛けて落ちてくるのだからたまらない、オークは衝撃で地面に倒される、するとポヨポヨは口と鼻を塞いで耳や目に酸で攻撃しながらオークの吸収を始めるのだ。一旦倒されて顔に巻き付かれるともう逃げる術は無い、暴れると息切れするのが早くなって早く死ぬだけなのだ。
そして新型スケルトンは入口で棒立ちに成っているオークに素早く近づいて一撃で首を切り落とした。今までの鈍い動きが嘘の様なスピードと力強さだった。
「お~スゲ~! 本当に元はスケルトンなのか。人間の上級者みたいだな」
一撃でオークを倒した新型スケルトンは地面でもがいているオークにも剣を着き立てて始末した。素晴らしく鮮やかな手腕だった。
「素晴らしい! 素晴らしいぞ! 新型。俺が思った通りだぜ」
素晴らしい性能だったのでポヨポヨの半分にもスケルトンと合体してもらった。これでオークよりも遥かに強い新型が低予算で造れたって訳だ。
「新型スケルトンは素晴らしい働きをしたので名前を授ける。今日からスケルトンはスケルトンmarkⅡと名乗るが良い」
新型と言えばmarkⅡと言うのは定番だ。○ンダムしかりエル○イムしかり。markⅡになれば以前より遥かに強くなってお話の最後まで活躍出来る様になるのだ。
「珍しく計画が成功しましたね、マスター」
「ふふん、合体すると強くなるのは定番だからな。一人一人は火でも二人集まれば炎になるって教官が言っていた名作だって有るぐらいだからな。俺の居た世界では機械と人が合体して無敵になっていたのだ」
「え~、それって合体じゃなくて人が機械を操縦しているだけですよね!」
「こ、細け~事は良いんだよ! 勝てば良いんだよ、強ければそれで良いんだよ」
「大体それは合体でも何でもないですし、融合ですら無いのに無意味に強いから不思議です」
「それは多分2人の友情パワーだな」
子供の頃は合体すれば強くなる事に対して当たり前だと思っていたが、少し知能らしき物が芽生えてきたり大学で工学とかを勉強していたら、合体する分の無駄な機構の分だけ弱くなったり予算が高くなったりして駄目なんじゃないかと思ったりするのだ。つまり合体は見た目の派手さだけで無意味どころか有害な事に気が付いてしまうのだ。でも良いじゃないかそんな事、ここは異世界だから不思議パワーが有る事にしておけば良いのだ。
「さて、行くぞmarkⅡ達、ポイントをジャンジャン稼いで貯金するのだ」
こうして2対の使える僕を得た俺は再び狩を始めたのだ。備えあれば憂いなし、将来の不況に備えて貯金するのは日本人として当然の事だ、何せ日本には寄生虫が沢山いて増税ばかりするからな。