第6話 ダンジョンが2Kになった
昨日ゴブリンを13匹仕留めた俺は現在4万ポイントを持っている。過去最高記録更新なのだ、これの中にはスライムのポヨポヨが仕留めた2匹のゴブリンの分も入っている。俺でも従魔でも何でも良いのでこのダンジョンで死亡すれば俺にダンジョンポイントとして入ってくる様だ。何だか得をした気分になったが、よく考えてみるとダンジョンマスターが独りでダンジョン内で戦っているダンジョンなんて聞いた事が無いので当然なのだと後から気がついた。そして更に昨日ゴブリンを1匹倒した所でマスターレベルが2に上がった、最もレベルが上がっても強くなったりはしなかった。
「よ~し、コア君。今日はダンジョンを強化するぞ」
「了解ですマスター」
「所で何が出来るんだ?」
「部屋を増やして罠や魔物を召喚するのが一般的なダンジョン強化になります」
「よし! では先ず部屋を一部屋増やしてくれ」
ゴゴゴゴ・・・・・・
地面が軽く振動している、今いる6畳程の穴の奥に部屋が出来ていくのを感じる。ダンジョンマスターの能力なのかダンジョン内の事は意識していれば何となく分かる様だ。
洞窟の奥に次の部屋へと続く穴が開いている、高さ3m幅も同じく3m程の入口だ。
「出来ましたマスター、新しいダンジョンです」
「ふぇえ~凄いな、アットいう間に出来るんだな、流石は異世界って奴だな」
穴から入ってみるとそこは真っ暗な空間だった。大きさは100m四方部屋の高さは10m位は有りそうだ。
「凄く大きいな、真っ暗で何も見えないけど、何故か中がハッキリ分かる」
「ダンジョンとしては最低サイズです、ですがマスターの成長と共に中は広くなって行きます。大型のダンジョンだと10キロ四方とかザラにあります」
「成長する空間か~やっぱりダンジョンって不思議なもんなんだな」
考えても分からない物は考えない様にしているので次の行動に移る。この部屋を作ったのは自分の安全を確保する為なので部屋に侵入した敵を殲滅しなくては成らない。それも自分が逃げ出す程の強力な魔物に対抗するための舞台が必要なのだ。手軽で昔から狩に使われたものの代表はこれだろう、なにせマンモスを狩る時にも使われていたのだ。
「コア、落とし穴を頼む。出来るだけ深くな!」
「現在のマスターのレベルですと深さ2mまでの落とし穴しか出来ませんが宜しいですか?」
「え~、たったそれだけなのか・・・・・・がっかりだな」
どうやらマスターレベルって言う奴はダンジョンを改造出来る権利の事の様だった。現在がレベル2で落とし穴の深さが2メートル、レベル3なら3メートルに出来る様だった。
「深さ100mの落とし穴なら大概の敵は始末出来ると思ってたんだがな~、仕方ないな。じゃあ落とし穴の底に猛毒の着いたトゲトゲを生やしてくれ」
「ポイント不足です、猛毒の着いた棘は1本1万ポイントになります」
「何でもポイントかよ、世知辛いもんだな」
自分の考えた最強の仕掛けはポイント不足であえなく中途半端なものに成り果てた。結局出来たのは幅10m奥行4mの落とし穴だった。つまり落とし穴を10個つなげたのだ。これで使ったポイントは1万ポイント、残りは2万ポイントしかなかった。
「毒付きの棘は無理そうなので、自分で刺す事にする。槍と毒薬を出してくれ」
「鉄の槍1万ポイント、毒薬が2千ポイントですが宜しいですか?」
「うむ、宜しい。何でも自分でやれば安くなるな。貧乏暇なしってヤツだ」
強い魔物が出てきたら、取り合えず奥に逃げ込んで、落とし穴に落ちた魔物を毒付きの槍でブスブス刺せば何とかなるだろう。と言うか、何とかなって欲しい。これ以上の事は現状では難しい、魚を出すのもタダでは無いのだ。
「それではもう一つ、スケルトンを召喚してくれ」
「了解、スケルトンを5000ポイントで召喚します。残りは3000ポイントです」
召喚魔物スケルトン、まあハッキリ言えばただの動く骨だ。動きは鈍いし力も大した事はない。3000ポイントでゴブリンも召喚出来たのだが、ゴブリンは臭くて煩くて飯を食うのだ、その点スケルトンは無口で静かで飯を食わないから貧乏な俺の僕にぴったりなのだ。
「宜しくなホワイティ!」
カタカタ・カタ
スケルトンは白かったのでホワイティと名前をつけた、記念すべき僕2号だ。こいつは人型なので武器や武具を装備出来る様だ、剣や盾を持たせればそれなりに役に立ちそうな気がする、まあ、気がするだけなんだがな。そしてホワイトには棍棒を持たせて武装する、ゴブリン位には勝てる様になって欲しい。
そして新しく出来た部屋の一番奥にダンジョンコアを隠しておくことにした、このダンジョンの一番重要なアイテムなのだ、今までの様に入り口から見える位置にダンジョンコアが有ると言うのが異常だったのだ。ついでに地面を盛り上げて寝る場所とトイレを作った、やっと少しだけ人間らしい暮らしが出来そうだ、6畳一間の洞窟から広々としたリビングにパワーアップしたのだ。次に欲しいのは風呂だ、何としてでも風呂を手に入れてやるのだ。その為には又魔物を狩らなくてはなるまい。
パタパタパタ
俺の目の前でスケルトンが団扇を扇いでいる、さんまの煙を穴から追い出しているのだ。中々シュールな光景ではある、そしてもう一匹の相棒のポヨポヨは入り口の上に張り付いている。外敵が来たら頭上から襲い掛かる作戦の様だ、益々賢くなっていっている。そして俺はと言うと入り口の横に隠れている、侵入者が入ってくればいきなり殴りつける為だ、ハッキリ言って小悪党感丸出しだな、知り合いには見せられない光景だと思う。
だがこの一人と2匹の連携が上手く行きこの日もゴブリンを9匹倒す事が出来た。俺が6匹でポヨポヨが3匹だ。スケルトンは弱かった、見ての通り骨なのでゴブリンに体当たりされると吹き飛ぶのだ、そして字面に当たるとバラバラになってしまう訳だ。バラバラになっても頭が破壊されていなければ再生するのだが、軽すぎて攻撃力、防御力共に最低な魔物だった。でもまあ団扇で煙を出す役をやってくれるので俺が戦闘に専念出来るから役には立っていた。
「よ~し、今日はここまでにしよう。皆で奥にいって休むぞ」
「・・・・・・」
「カタカタカタ」
2匹を引き連れて奥の部屋に行く、入り口からからは遥かに離れているので何となく安心出来る、落とし穴を仕掛けているので更に心強いのだ。今日は大盤振る舞いで〇き屋の牛丼を出して食べた、うむ中々美味い、昔は〇の屋の牛丼ばかり食べていたが、値上げばかりするので替えたのだ。つぎはもっと稼いで唐揚げ弁当でも出したいと思う。