第43話 決戦!魔族四天王 その3
「駄目か~、溜息しか出ね~」
「そりゃあ、あの連中に落とし穴は効かないでしょうね」
「うむ、落とし穴に落ちても平気だし。我々クラスになると毒も効かないからな」
「吾輩とか飛べますから、落とし穴とか有る事に気がつきませんな」
魔族4天王から華麗に逃れた俺達はダンジョン最下層の俺の部屋で、俺達を追いかけてくる4天王と魔王を見ていたのだが、アイツ等に落とし穴は効かなかった。そして迷路も飛び越えられてしまって、俺のトラップは全て無効にされていた。この分だと前回勇者を倒した音波砲も効きそうにない感じだった。
「コア、地下9階層に宝箱を置いてくれ、トラップを仕掛けて音波砲で攻撃する」
「了解です、マスター。宝箱の中身は何にしますか?」
「薬草で良いんじゃね?」
「分かりました、薬草1束入れときますね」
地下9階層、以前勇者を始末した部屋に魔族達が入って来た、初めての宝箱に少し興奮しているようだ。勿論罠だと気づいているだろうが、これまでの罠は全て突破してきたので自信満々で宝箱を開けて、中身の薬草を見て激怒していた。
「音波砲発射!」
「音波砲発射します!」
「・・・・・・」
「だめか~」
丁度音波砲の焦点に魔族が居たのだが、大きな音に驚いて飛び上がっただけだった。多分4天王は防御力が高い・・・・・・まあ防衛軍のバリスタや魔法、キングの中級魔法攻撃を受けて無傷だったので予想の範囲内だったが。折角造った自慢の防御兵器が効かなかったから少し凹む。
「ダメじゃないですか、マスター」
「仕方無いよ、元々水中で威力が有る装置なんだから。空気は密度が低すぎてな」
「水中なら威力が有るのか?」
「まあ気温にもよるけど、600倍以上の威力が有るだろうな」
水中の方がこの装置の攻撃力が上がる事は当然知っていたので地下9階層を水没させようかとも思ったのだが、入口から水が漏れるので断念したのだ。この音波砲は途中に空気が入ると威力が無くなってしまうのだな。
「コア、地下10階層のボスキャラのポヨポヨ達を避難させろ。あいつらじゃ無理だわ、経験値にされるだけだからな。代わりに豪華な宝箱でも置いとけ」
「了解、ポヨポヨ達を回収します。豪華な宝箱の中身は何にしますか?」
「薬草2束!」
「「「セコ!」」」
魔族達は地下10階層の豪華な宝箱を発見してウキウキして開けて、そして激怒していた。まあそうだろうな、上げて落とすと怒るよな。
「あははは、あいつら馬鹿だわ! 敵の宝箱から良い物が出る訳ね~だろ阿呆!」
「まあそれはそうですけど・・・・・・」
「凄く良い顔をして笑っているな、こんなに嬉しそうな顔は久しぶりに見たぞ」
「素晴らしい煽りです邪王様」
「さて、そろそろ行くかな。コア! アイテムの準備だ、ジャンジャン出せ」
「はい! マスター」
俺が最下層に逃げて来たのは怖いからとか、相手と闘いたくないとか言う理由ではない。俺はここに敵に勝つために下がっただけなのだ。だから戦う準備をする、それもダンジョンマスターとしての戦い方でな!
「バル子、指出せ」
「うん?」
俺はバル子の指にジャンジャン指輪を嵌めて行く。HP上昇、魔力増強、攻撃力上昇、速度上昇等々、ダンジョンの宝箱から出る高額なマジックアイテムと呼ばれている物だ。これでバルキリーをフルチューンして戦うのだ。
「な!なんだこれは! こここ、婚約指輪なのか!?」
「阿呆、戦闘用マジックアイテムだ」
「・・・・・・勿論知っていたんだからね!勘違い何かしてないから!」
「コア子も付けれるだけ付けとけ、決戦だからな出し惜しみはしない」
「はい、マスター」
各種アイテムで限界まで強化したコア子とバル子にキングを連れて、敵が今いるダンジョン地下に転移する、怒り狂って正常な判断力が鈍ってるいまがチャンスなのだ。
豪華な宝箱から出た薬草を地面に叩きつけた魔族達5人は再び先に進みだした、5人とも怒りで我をわすれてバラバラに進んでいる。だから俺は一番後ろに居るヤツを狙う、編隊飛行でも行軍でも一番後ろに居るヤツは一番練度が低い、つまり一番弱いヤツなのでやり易いのだ。これもセオリーってやつだ。
「行け!バル子・コア!」
相手の上、そして後方からの2人による同時攻撃、先ず音速に近い速度でバルキリーの神剣バルムンクが相手の首を切り飛ばし、一瞬遅れてコア子の神槍ゲイボルクが頭を吹き飛ばした。僅か3秒ほどで相手の戦力が20%減ったのだ。
「キングやれ! コア、バル子戻れ!」
「「「はいマスター」」」
キングが強化した魔法をばら撒きけん制すると俺達は又直ぐに転移して最下層へと帰る。もう一人位はいけたと思うが冒険はしない、俺は冒険家では無くダンジョンマスターなのだから。
「よ~し、一人やったな」
「もう一人か二人位行けたと思います」
「うむ、あと一人は余裕でやれたな」
「ふふふ、ジワジワ苦しめる邪王様。流石ですな」
ほんの僅かな隙を突いた先制攻撃、僅か3秒で4天王の内の一人を撃破してやったので相手は相当動揺している。これからは相手も警戒しながら進むように成る、よって俺達は休息をする事にした。
「それじゃ飯でも食うか。一休みだな」
「良いのですか?」
「相手が警戒してるから、今行っても不意打ちに成らないからな。俺達は休息して、相手には疲れてもらおうぜ!」
「成程・・・・・・性格悪いな」
「素晴らしい!素晴らしいですぞ~!!邪王様」
そして以前よりも進み方が遅くなった魔族達4人、今は固まって砂漠地帯を飛んでいる。周りを見渡しながら少し不安そうな感じに成って来た様だ。
勿論そんな所に俺達は襲いかかる訳だが、幾ら警戒しても警戒しにくい場所や方角ってものが有るのだ。そこから俺達は襲いかかるわけだ。
「敵だ! 上から来るぞ~!!」
「「「どこだ!」」」
砂漠地帯の強烈な太陽を背にしてバルキリーが襲いかかる、今度は音速を超えた速度で2番めの標的を狙って急降下だ。そしてコア子もそれに続き3番目の敵にゲイボルクを投げつける、先頭の魔王にはキングが襲いかかっている。襲われないのは一番警戒していた最後の位置にいた者だけなのだ。
「撤収! 皆戻ってこい」
そして一撃を入れれば直ぐに転移して最下層へ、俺達は無傷で撤退する。俺達の戦い方に変わりは無い、1擊離脱戦法でいくのだ。
「どうだった?」
「マスター2名撃破です、ダンジョンポイント12億ゲットです! 儲かりました」
「うむ、流石はマジックアイテム10億ポイント分の威力は凄まじいな」
「すみません邪王様、魔王は仕留められませんでした。あやつ中々やるようです」
そして5人いた彼等は既に2人になっていた。さぞかし不安な事だろう、敵ながら可哀想なもんだ。不安になった彼等は今度はスピードに賭けた様で、速度を上げて移動し始めた。確かにいい考えだが何時までそんな速度が続くのかな? 速度が落ちた時が命取りに成る、アフターバーナーみたいな物はそんなに続くものでも無いのだ。
「さて休憩だ~、甘いものでも食べて観察だ」
「私イチゴのケーキが良いです」
「私は栗まんじゅうだな」
「吾輩は渋いお茶をもらえますかな」
魔族は入ってはいけない所に入り込んだ、ここを低レベルのダンジョンだと思っていたら、実はここは鬼が住んでいる地獄だったのだ。