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斜め上のダンジョンマスター  作者: ぴっぴ
第1章 ダンジョンマスターボッチ編
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第4話 優しくない世界

 ダンジョン生活2週間目、ポイント貯蓄を辞めたので毎日それなりの物を食べ始めた主人公。今日は何やら魚を焼いているようだ。


「サンマが1匹200ポイントかよ、高くなったもんだな~」


 サンマと言えば江戸時代からの庶民の魚として親しまれて来た訳だが最近は値上がりしていた。どういう訳か現代日本と妙にシンクロした値段を示すダンジョンの召喚ポイント、それも特売価格では無く定価で召喚されるので俺はウンザリしていた。


「マスター凄い煙ですね」


「だよな~、洞穴でサンマを焼いたらここまで凄いとは思わなかったぜ」


 晩飯のオカズとしてサンマを焼いたところ、洞窟の中は白煙で周りが見えない様になっていた。喜んでいるのはスライムのブルー、始めて食うサンマに興奮しているのか何時もより激しくプルプル震えていた。


 グギャ ギャ


「侵入者!侵入者! ダンジョンに侵入者です」


「へっ・・・・・・」


 2週間に渡る自堕落なダンジョン生活で俺はすっかり忘れていた、ここが異世界だって事を、そしてダンジョンコアが破壊されるかダンジョン外に持ち出されたら俺が破滅するって事を・・・・・・一体何故こんな重要な事を忘れていたのか、過去2週間の俺を説教してやりたい気分だ。

 いかんいかん、これも又現実逃避なのか? 嫌な現実から目を背ける癖が着いた様だ。


「マスター、侵入者はゴブリン。排除して下さい危険です」


「分かった!」


 魚を焼くのを辞めた俺は立ち上がりゴブリンを見る。煙で良くわからないが小柄で弱そうだ、このくらいなら何とか成るだろう。


 グぎゃ!!


 洞窟に入って来たゴブリンは俺よりサンマの方が気になる様だった、何せ美味そうな匂いをだしてジュウジュウ音を立てているのだ。


「この野郎!」


 いきなり動き出したゴブリンは俺のサンマに飛びついた、俺の晩飯を奪うつもりだ。反射的に脚をだしてゴブリンを蹴り飛ばす。そして倒れたゴブリンに俺は飛びかかった。


「いてててて!!!!」


 飛びついた俺の腕にゴブリンが噛み付いた、物凄く痛い。小柄でも噛む力は一人前の様だ、この時俺は焦っていたに違いない。倒れた相手にならそのまま首を踏みつけるか死ぬまで頭を蹴れば良かったのだと後から気がついたのだ。


「クソ! こうなれば」


 ガブ!


「グギャ! グギャ~!」


 いきなりの激痛にパニックに襲われた俺はゴブリンのクビに思いっきり噛み付いてやった、確か首に噛み付いた後は振り回わすのが正しい作法だと思った俺は思い切り首を振ってゴブリンを振り回した。後で考えてみれば人間の口は小さいのでイヌ科の攻撃方法は向いてない事に気がついたが、それはただの後知恵ってやつだった。


「ゴブリン殲滅を確認しました。ダンジョンポイント3000入手しました。マスターのレベルがOから1に上がりました、おめでとうございます」


「おいおい、ゴブリンって強いじゃねーか。見てくれ血だらけだぞ」


 ゴブリンに噛み付かれた腕からは血がダラダラ出ていてとても痛かった、ゴブリンは小さい癖に意外と牙が長かった、それに手の爪も驚異的だ、今回は血が出るくらいで済んだが、目でも抉られたら取り返しがつかない所だったのだ。噛み付かれた所も痛いが、爪で引っ掻かれた所もジクジク痛い。そのままにしておくと感染症で腕が晴れ上がるのは確実だ、獣の歯や爪って奴は雑菌だらけなのだ。


「コア! ポーションって幾らだ? 後は感染症が怖いから毒消し」


「下級ポーションが1000ポイント、毒消しも1000ポイントになります」


 仕方無く俺はポーションと毒消しを頼んで飲んだ、まあ病院に行けば結構な金が取られた挙句、物凄く待たされるので安いものだと思った。


 ゴブリンの襲撃で酷い目にあったが、何とか撃退した。そして俺の大事なサンマは焼け焦げて真っ黒になっていた。


「弱り目に祟り目か~、まあ世の中こんなものだよな」


「ほれ食え、ポヨポヨ」


 異世界に来てから2週間目、痛い目に合ったが此れくらいで済んで良かった。これからは現実逃避はやめてサバイバルに移行する時期になった様だ。痛い思いをしなければ本気に成らないのが俺の欠点なんだが、死ななかったので俺の勝ちだ、要は最後に笑えば良いのだ。


「武器が欲しい、今買えるのは何がある?」


「1000ポイントで買えるのは棍棒しかありませんね~、銅の剣が5千ポイント、鉄の剣が1万ポイントになってます」


「棍棒くれ、無いよりましだろ」


 喧嘩なら素手でも良いのだが此処は異世界、敵が襲って来れば殺し合いになる。素手で人を殺すのは簡単だが魔物は爪や牙が鋭いので素手で殺すのは難しい、人間らしく道具を使って戦うしかない様だ。余裕があれば毒や罠を使うのが安全で確実なのだがポイント不足でどうせ手に入らない。


 サンマを食いそびれた俺はそれから黙々と棍棒を振ってみた、素手よりも攻撃範囲が広がったのが利点だな、攻撃力自体は足で蹴るほうが有るが、安全靴が無いので前蹴りなどを使ったら足の指が骨折しそうで怖かった。昔を思い出して唐手の型をしてみたが、早い話全部忘れていた。一応型には意味が有って、相手と戦っている動きなのだが綺麗さっぱり忘れていた。まあ使わない知識なんてこんなもんだよな。両手の拳ダコもすっかり小さくなってしまって壁を殴ると痛かった。既に俺は普通の人間と変わらない様に成ったのだと思い知ったのだ。


「マスター、踊ってる場合じゃ無いですよ。ゴブリンが複数来たら危ないです」


「踊ってる訳じゃないんだがな、まあ、意味を忘れたから踊ってるみたいなもんか」


「なあコア、魔物って召喚できる?」


「まあスライムなら出来ますけど、防衛の役には立ちませんよ」


 その後コアと色々話合った結果、防衛の役に立ちそうな魔物は最低でも3000ポイント以上は必要な感じだった。スライムでも毒スライムになれば結構役に立つのだそうだ、だが俺が狙っているのはスケルトンだった、3000ポイントと安いのだが武装出来るので汎用性が高い様な気がする。因みにゴブリンも同じ値段で武装も可能なのだが、煩くて臭いので呼び出したく無かった。


 さて、なけなしのポイントで魔物を呼び込むとしよう、人間なんだから頭を使わないとな、力押しばかりでは魔物に負けてしまう、あいつらは肉体的には人間より頑丈そうだし理性が無い分人間より強そうだからな。





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