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斜め上のダンジョンマスター  作者: ぴっぴ
第3章 戦うダンジョン編
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第36話 旅に出ます

 机の上に書置きをした俺はキングを連れてダンジョンから出て来た。久しぶりの外は寒かった、どうやら季節的に秋の様な感じだ。


「小銭は持ったか? キング」


「吾輩、金は持っていませんぞ」


「俺はハモニカと小銭を持っているぞ」


「????」


「気にするな、唯の冗談だ」


 まあ良い、良く考えたらハモニカと小銭を持って家出するのは、異世界人にしか分からないんだった。それもオッサンやオバさんにしか分からないのだ。


「さて何処へ行こうか・・・・・・」


「マスター、乗り物を用意致しましょう」


「乗り物? そんな物が有るのか」


「ふふふ、一応これでも王ですから」


 キングが指を鳴らすと目の前に巨大な魔法陣が現れ、そこから首のない巨大な馬4頭に引かれた6輪の漆黒の馬車が現れた。


「おほ~ゴイス~!」


「下らぬ魔法です、マスターの極悪魔法から見ればほんの児戯でございます」


「なあキング、何で俺がお前の中で悪人になってるんだ? 俺って善人だぞ」


「ブワッハッハッハ~!!!! ご冗談を。あれだけの事をやらかして善人とは、吾輩心底マスターの事を恐ろしく思いますぞ! 正にマスターこそ吾輩の主に相応しい。そう、吾輩が不死者の王ならマスターは邪悪の王! 邪王でございます!」


「・・・・・・何だか人聞きが悪いな~、あの2人の前で言うなよ、アイツ等絶対喜んでその言い方をしだすからな」


「全ては邪王様の御心のままに」


 どういう訳だかノーライフキングのキングは俺の事を悪人だと思って尊敬しているのだ。人の考えを改めさせるのはメンドくさいので放置していたら、最近益々こじらせた様だ。まあ良いや、人に何と言われても平気だしな、でも世間体が悪くなりそうだよな~。


「ささ、邪王様! お乗り下さい」


「おう、凄く広いな。うほ~、ふかふかの椅子じゃん」


 キングの出した馬車は豪華仕様だった、流石は6輪。中の広さは4畳半程、豪華なソファーが付いた極上の空間だった。そして馬車の御者としてバンパイアを出し。更に馬車の護衛として馬に乗ったデスナイトを4体呼び出した。

 もうさ、キングが万能過ぎて益々落ち込んで来た。指を鳴らすだけで何でも出てくるんだぜ、反則だろ此奴。独りで国と喧嘩出来るって本当だったんだな。だが落ち込んでも遠慮なぞする俺では無い、駄目元で色々注文をつけるのだ。


「スゲ~なキング、何でも出来るじゃん! 綺麗なね~ちゃんも出してくれ」


「お任せ下さい、マスターの好みは知っていますぞ! 胸が大きいオナゴですな!」


「それそれ、良くわかってるな」


 そしてキングが手を振ると胸の大きな美女が出て来た、チョット青白いけど美人さんだ。吸血鬼とか言っていたけど気にしたら負けだ、胸だけ見れば良いのだ。しかし、青白い顔に真っ赤な唇、ちょっと牙が覗いてるけど・・・・・・いやいや気にしたら負けだ、ここは大人の対応、見ないふりをするのだ。


「キング様、私は何をすれば宜しいのでしょう?」


「貴様は、この方の世話をするのだ。この方は私の偉大なる主人、邪王様だ」


「はあ? こんな冴えない男の世話を私が・・・・・・」


「ば・ば・ば・馬鹿も~ん! 何を言う! 貴様殺されるぞ、それも一族全てを虐殺された後で10回位殺されるぞ!!!!」


「ヒィ~!!! そんな~!! お許し下さい。何でも致します」


「ああ・・・・・・まあ良いや、冴えないおっさんで御免な」


 あ~あ、折角の美人さんだったのに、恐怖でブルブル震えて顔色が悪くなっていた。折角仲良くしようと思ったのに第1印象が最悪になってしまった。だから邪王とか言うのは嫌なんだよ、イメージが悪くて仲良くしてくれなくなるから。


その後震えながら俺の世話をする吸血鬼のキュウちゃんとキングと一緒に馬車の旅をする事になった。洞窟の周りには魔族の軍隊が少しいたが、キングが指を鳴らすと塵に帰っていった。


「キング、見つけた魔族を直ぐに殺すのはやめろ」


「はて? いけませんでしたか」


「殺しまくっていたら警戒されるだろ、なるべく静かに偵察するのだ」


「おお! 邪神様お得意の(油断させて後ろからバッサリ作戦)ですな! 」

「ヒイ~ィィ!」


「まあそうだけど、他人聞きが悪いからもっとソフトに表現しろよ、電撃作戦とか奇襲とか色々あるだろ」


「成程、格好良く人を騙すのですな! 流石は邪王様、吾輩感動で前が見えませぬぞ」

「・・・・・・」


 駄目だ俺の評価がドンドン下がって行く、もう彼女は俺と目を合わせようとはしない。俺が少しでも動くとビックリして体を縮こませるのだ。それに引き換えキングはメモ帳を出して俺の台詞を一々メモしてた。暇になったら俺を主人公にした本を書くつもりなんだそうだ。もう何でも勝手にやってくれって感じだな。


 素晴らしい乗り心地の馬車に揺られながら国の中を走り回る、敵に見つからないように馬車にはキングの魔法が掛かっている。キングが有能すぎて怖い、何でも指を鳴らすだけで片付いちゃうのだ。キングが敵だったら俺なんか瞬殺だろうな。


「今日はここらで野営しよう」


「はい邪王様」

「ヒイィ!」


 キングもキュウちゃんも灯りが無くても平気で、食事しなくても良くて、寝なくても平気なスーパーマンなのだが、俺は飯を食って寝なくては死んでしまう。こうして考えてみると人間って凄く弱くて脆いな、よく今までアンデットに世界が乗っ取られ無かったな、まあ今魔王軍に人間や獣人達が負けそうなのはある意味当然、いや必然かも知れんな。干渉するのを止めようかな・・・・・・人間が滅ぶのは自然の理みたいな気がするし。


「キング、晩飯ラーメンで良いか?」


「何でも食べますぞ」

「ニンニクが入って無ければ食べられます」


「じゃあ、キュウちゃんにはウドンを出すわ、あっちは出汁と醤油だから食べやすいからな」


 箸で器用にラーメンを食べるキングと俺、一方キュウちゃんは箸に悪戦苦闘しながらうどんを食べていた。見た目が美人の人が鷲掴みで箸を持って、うどんを食べている姿は非常に見苦しい。今度はスパゲッティにしようと思った、それともパンとスープかな。


「それじゃお休みキング」


「お休み下され、吾輩が警戒します」

「・・・・・・」


 そして俺が毛布を掛けてゴソゴソしていると、青白い顔をしたキュウちゃんが全裸で俺の寝床に入って来た。


「ふつつか者ですが、夜伽致します邪王様」


「うひゃ!」


 吸血鬼のキュウちゃんの体は冷たかった、アンデットだから体温が無いのだ、つまり外気温と同じなのだ。見た目は素晴らしい、ちゃんと弾力も有るのだが冷たい。夏なら良いかもしれないが、一緒に寝ると風邪を引くぐらいならいいが、低体温で死ぬかも知れん。


「・・・・・・気持ちだけ受け取っておく、ゆっくり休むが良い」


「邪神様・・・・・・」


 寒くて寝られない俺は彼女を布団から追い出した、物凄く残念だ。凄い美人なんだ、スタイルも抜群、そして何でもさせてくれるのだ、だが冷たい・・・・・・気持ちが冷たいんじゃなくて全身冷たい、いくら俺に根性が有っても無理、こっちの体温まで無くなってしまいそうなのだ。こんな事なら彼女を出してもらわなければ良かった、見てるだけって言うのは物凄く辛いのだ。


「グフフフ、流石は主様。彼女の必死の思いを簡単踏みにじる、フフ、主に世界を捧げますぞ」

「ヒィ~!!!」


 こうしてダンジョンマスターの外出1日目が終わった、超便利部下キングのお陰で楽々魔族の支配地域を偵察しラーメンを食べて寝るという緊張感の一切ない偵察旅行であった。

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