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斜め上のダンジョンマスター  作者: ぴっぴ
第3章 戦うダンジョン編
30/45

第30話 マスターVS勇者 その4

 俺の仕掛けた罠で盗賊と僧侶はバラバラになり、かろうじて助かった魔法使いと重騎士はスケルトン部隊の火炎瓶攻撃の餌食となった。そして勇者はまだ健在だった。

 俺達は当初の予定通りに勇者からチームメンバーを剥ぎ取ったので一時撤退して今は地下10階層に降りてきた所だ。スコア的には俺が840万ポイントの利益で勇者は仲間を全員失ったので、一方的に俺が有利になった状態だった。


「勇者は今何してる?」


「仲間の傍で泣いてます」


「ふん! あの阿呆は今頃現実って奴に気がついたのか、救いようのない馬鹿だな」


 勇者は死んだ仲間の傍で泣いてるようだ、だが彼奴は馬鹿だから仲間が死んで悲しいだけだろう、自分が仲間を守れなかったとか、自分や仲間が死ぬ可能性が有ったとか言う現実については考えつかない馬鹿なのだ。


「よ~し、今がチャンスだ! 傷口に塩を擦込みに行くぞ~!」


「はふ~、マスターを敵に回すと厄介ですわね」

「仲間だと言うのに何故か心が痛むぞ」


「ふふん、貴様ら甘すぎるぞ! 俺達が死んでいた可能性も有ったんだぞ! 安心するのはまだ早い、安心するのは敵を殲滅した後でしろ!」


 非情かも知れないが自分や仲間を守るために俺は鬼になるのだ、何と思われようが構わない、言いたいやつには言わせておけば良い。何と言われようと自分と仲間を守り抜いてやるのだ。これが俺の覚悟って奴だ!そして全ての戦いが終わった後で後悔して、自己嫌悪に陥って泣けば良いのだ。


「お~い。クソ勇者。仲間が死んでどんな気分だ?」


「お前~! よくも仲間を殺したな! 許さんぞ~!」


「アホかお前、お前がそいつ等を殺したんだぞ! どうせ良い所を見せようと思ってたんだろ? カッコ良い所を見せようと思って連れてきたんだろが! 偽物が勇者の真似をするからアイツ等が犠牲になったんだぞ」


「・・・・・・僕は勇者なんだ! 強いんだ~!」


「仲間殺しが何を言う! お前が余計な事をしなければ良かったんだよ! 家に帰って部屋から出るな、お前みたいな奴が居ると周りが迷惑なんだよ!」


「クソ! お前も僕を邪魔者にするのか! チクショウ~!」


「今だ! 殺れデスナイト!」


 勇者の気を反らす事に成功したので、俺の仲間で一番強いデスナイトに後ろから襲いかからせる。多分駄目だろうと思うが念の為だ。


 ガギィ~ン!!!


 デスナイトの大剣による全力攻撃が跳ね返される、完全に油断していた勇者に当たったと思ったのだが、バリアの様なものが勇者の体を覆っていた。


「クソ! 流石は2千万、50万のデスナイトじゃ通じないか。よし、撤退!」


 勇者がいきなりの攻撃で驚いている間に撤退する、デスナイトの不意打ちが効かないので逃げるのだ。一応精神的ダメージは与えたので今は引くのだ。相手が弱ってる時はチャンスなのだ、こういう途切れない攻撃が相手の精神をゴリゴリ削って弱らせるのだ。


「コア、勇者の前に落とし穴を大量に作れ、スケルトン部隊は撤収!」


「アイ、マスター」

「また、逃げるのか! 戦わないのか?」


「阿呆! 普通の攻撃が効かないのに戦ってどうする、負けるだろうが。俺は勝つ戦いしかしね~からな」


「じゃあどうするんだ!!」


「それを今から考えるんだよ! 大急ぎでな!」


 又もや勇者の前から逃げ出した俺達、剣での攻撃は自動的に防御された様だった、これでまた勇者の防御はオートタイプなことが分かったのだ、だんだん相手の能力が分かってきたのだが攻撃手段が思い浮かばない、剣もクレイモアみたいな物理攻撃も効かない、魔法も駄目となるとどうすれば良いんだって話だ。


「くそ~、ネットが有ればな~。頭の良いヤツが何処かに落ちて無いかな」


 インターネットって便所の落書きって昔は言われていたけど、俺の見るサイトって頭の良い人間が多い気がする。特にそれで食ってる連中はテレビの解説者やコメンテーターより遥かに詳しく頭が良いのだ、おまけに人数が多いから驚く程的確な意見を言う人間が居るのだな、一人の考えななんて大した事無いので今回みたいな場合は応援してくれる人間が欲しかった。


「落とし穴に落ちても平気みたいですよ、マスター。槍ではダメージを受けないようです」

「どうするんだ! マスター」


「そのまま落とし穴を作り続けろ、時間を稼げ!」


 頑張れ俺の脳細胞! 俺は出来る子なのだ! やれば出来る!やらねば出来ぬ何事も! 兎に角事実を冷静に判断して・・・・・・魔法・・・・・・駄目、剣も駄目、落とし穴も駄目、火炎瓶は嫌がっていただけ・・・・・・う~む、無理っぽいな。


「やはり会話で嫌味を言って精神を折る・・・・・・!? 会話は出来ていたよな、つまり音は届く訳だな」


 会話は出来ていたのでコチラの声は届くようだ、届かなかったら会話が出来ないしな。それに空気も通さない防御だったら呼吸が出来ないので死んでしまうしな、考えてみれば当たり前だな。火炎瓶を嫌がっていたのは呼吸がしづらくなるからだったのだろうな。


「よし! コア、小部屋を作るぞ、特別構造のヤツだ。そこで勝負をかける」


「はいマスター!」


 俺は音波兵器を作ることにした、本来は水中の方が音が伝わりやすいのだが空気中でも出来ないことはない、音波は重ね合わせる事が出来るのだ、そして一つ一つは無害でも多くの音を重ね合わせると石でも砕く程の威力が出るのだ、古くは第2次大戦の時に日本軍が造っていたので有名だった。あれは確か対空兵器だったような記憶があるが、よく覚えていない。まあ仕事でフランス製の同じような原理の機械を扱って居たので馴染みは有った。

 要は沢山の音を出す装置の音波を1点に収束させれば良いだけだ、本来はターゲットに標的を置いて角度を合わせながら調節するのだが、今回は時間が無いからぶっつけ本番だ。まあ標的が大きいから多分当たるだろう。


「コア、小部屋の天井と壁をドーム状にしてくれ、そしてドームの壁に小さなドームを均等に配置だ。口では説明しにくいので俺のイメージを直接コアに飛ばす、頑張ってくれ」


「マスター、勇者が来たぞ!」


「時間を稼げ! スケルトン迎撃しろ、特殊装備に変更」


 勇者には剣や槍が通用しないのでスケルトンは剣と槍を捨て、火炎瓶や殺虫剤に装備を変更した。殺虫剤はそのまま相手に掛けて良し、火を付けて火炎放射器の代わりにしても良い使い勝手の良い道具だった。


「バルキリーも行け! 後少し時間を稼げ」


「了解した! 出来るだけ時間を稼いでみる」


 スケルトンが火炎瓶や殺虫剤で勇者に嫌がらせをしているが、どんどん数が減ってきている。元の性能が違い過ぎて戦いになっていないのだ、なにせ勇者はダメージ無しで戦えるチーターなのだ。バルキリーも本来の力を封じられて背中から斬りかかる位しか出来てなかった。


「出来ましたマスター!」


「良し、全ての小さなドームの底に爆発する宝箱を設置して待機、俺の合図と共に爆破せよ」


「了解ですマスター」


 全ての準備は整った、後は勇者を誘導するだけだ。あいつが食いつく餌には俺が一番だろう、あいつは俺を殺したくてウズウズしているだろう。


「スケルトン下がれ! バルキリーも下がれ。後は俺が殺る!」


「クソが~! 見つけたぞ! 殺してやる!」


 勇者の目は血走っていた、多分仲間を殺されて怒っているのだろう。まあそれか自分の事を全否定されて怒っているのかも知れないが・・・・・・まあそんな事はどうでも良い。此奴は今から殺す相手だしな。


「ふふん、お前に出来るかな?」


「僕は勇者だ! 魔法も物理攻撃も効かないんだ! 無敵なんだ~!」


 仁王立ちの俺の方へ一直線に向かってくる勇者、本当に此奴は最後まで人を疑うって事を知らないヤツだった。


「爆破!」


 ドン!と言う音が一度に聞こえた、本当は300箇所で爆発しているのだが同時点火なので一つの音に聞こえるのだ。そして一つ一つの衝撃波は大した事は無かったがそれが合わさった威力は凄まじかった。


「!!!!!!!」


 勇者の鎧が吹き飛び、勇者は目、鼻、耳から血を流して棒立ちになっていた。そして勇者の立って居た地面は50センチ程抉れていた。音響兵器の怖いところは人体の弱い部分を直接並びに間接に破壊する所ろなのだ、頭蓋骨を伝わった振動がそのまま脳にダメージを与え、血管を傷つけたせいで勇者の頭の中はボロボロになっているだろう。まだ生きているのが不思議な位だった。


「ポヨポヨ殺れ!」


 フラフラしている勇者に止めを刺してやる、苦しめるのは可哀想だからな。勇者が集まってきたポヨポヨに直ぐに飲み込まれて動かなくなった。反撃出来なくなった生き物はポヨポヨに肺の中に入られて窒息死してしまうのだ。どうやら俺達は勝った様だ。


「勇者の死亡確認、2千万ポイント入りました。おめでとうございますマスター」


「めでたくは無いな、後味が悪いぜ。弱いものイジメは好きじゃないんだよな」


「いやいや、勇者は強かったぞ、少なくとも私達だけなら負けていた」


「まあ、見かけだけな。中身が弱かった・・・・・・まあ、今更言ってもしょうがないけどな」


 こうして久しぶりの俺の戦闘は終わった、何とか仲間を守れた様だ。スケルトンがかなり減らされたが、彼等が時間を稼いでくれたお陰で俺達は勝てたのだ、殺られた仲間に敬礼!

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