第22話 ダンジョン斜め上に発展する
さてダンジョン村なのだが、最初は50人位で始まった村なのだが噂が広がって毎日獣人の家族がやって来る。滞在ポイントも最初は5万ポイント位だったのが今では20万ポイントを超える様に成ってきた、つまり今では村人が200人位居る様なのだ。俺はたまに遊びに行って尻尾の動かし方を村長に習っているのだがまだ上手く動かせない、兎族のネーチャンには耳の動かし方を習っているのだがこっちも無理っぽかった。人間得て不得手って物が有る様だ、俺は獣人にはなれないようだった。
「うむ、計画通りにポイントが貯まってるな、結構・結構」
「珍しく計画通りですねマスター。ブルン!」
「・・・・・・」
「胸を揺らすと必ずガン見しますね! マスター」
「うむ」
「それだけでは無いぞ! チラリ!」
「・・・・・・」
「太腿を見せてもマスターは必ず見るのだ」
「うむ!」
「マスターって全然悪びれませんよね、当然の様な顔してますよね」
「動物が動くものを見るのは当然なのだ、自然の摂理って奴だ。いくら俺が賢者でもしょがないのだ。そして動物は動かない物には興味が沸かないのだ、つまり俺は悪くないって訳だな」
今日も俺は護衛の2人を連れてダンジョンの見回りをしている、護衛の2人は襲撃が無く暇なので俺に色々チョッカイを仕掛けてくるのだ、だが俺は真面目な賢者だからダンジョンの見回りをしながらでも彼女達の相手はしてやっているのだ。
「賢者様~! 一杯どうですか?」
「仕方無いな~、点検の途中なんだけどな~住民との触れ合いは大切だからな~うん、仕方無い」
「またですか、毎日宴会してますよね」
「私は構わんぞ、美味しいものが食えるからな。マスター、ハンバーガーとコー○を頼む」
「うむ、ビッグ○ックは高いからダメだぞ、普通の奴だけだ。コー○は安いからドンドン飲むが良い」
ダンジョンマスターなのにダンジョン内の人間や獣人と毎日宴会をしてくつろいでいるのは、正直自分でもどうかと思うのだが、彼等がダンジョンの中に居るお陰で俺はポイントが儲かっているので彼等を害する気は全く無かった。だが人が多くなると悪人って奴が必ず混ざってくるのだな、そういう連中はスケルトンを使って密かに始末していたのでダンジョンの中は非常に平和で理想郷の様な有様になっていた。
「所でアーサー、あれは何だ? 石像みたいだが」
「あれは賢者様とバル子様の石像です、何といっても貴族をやっつけてくれたお陰で此処は平和ですからね。バル子さんは正義の象徴なのです、信者も徐々に増えてますよ」
「俺とバル子? 正義の象徴?」
人間用に造った噴水の隣に何やら巨大な石像が建って居た、全然俺に似てない人間の像と背中に羽の生えた天使の像だ。男の方はヒゲを生やして手に大きな本を持っている、世の中の賢者のイメージを石像にしたらこんな感じになるって感じの石像だった。そしてバル子は賢者の隣に建って優しそうな笑みを浮かべている天使の石像だった。
「両方似てね~な、特に俺なんかヒゲとか生やして無いからな。そしてバル子は慈愛とかね~から、此奴は殲滅タイプの戦士だからな」
「なにを言うのだマスター! この石像は私の内面をよく表している素晴らしい石像では無いか、うむ、気に入ったぞ」
「私だけ居ない・・・・・・」
「まあ貴族を殲滅した時にはまだコア子は居なかったから仕方無いな」
人間用の広場に俺とバル子の石像が建っているのを見てコア子は何か思うところが有ったのだろう、急に目立つ服装に替えて俺たちと歩くようになったのだ。
「コア子、何だその服?」
「メイド服ですが、それが何か?」
「何でまたメイド服なんかを、それに物凄く胸を強調してるし」
「目立つ為です! 私も目立って石像を建てて欲しいのです! 2人だけ石像が建つなんてズルいです、凄く羨ましいです!」
「そうか・・・・・・まあ、正直なのは良い事だな、うん」
「ふふん、ホルムンスク如きがバルキリーの私に勝てると思っているのか?」
「フフフ、ホルムンスクの値段は600万ポイント、残りの2千万ポイントで戦闘力をガッツリ強化しているのですよ私。ガサツなバルキリーより強くて役に立つところを見せてあげましょう」
「どうりで高いと思ったらオプションに金掛けてたのか、バルキリーより高いホルムンスクなんて変だと思ってたんだよ」
バルキリーのバル子は凄く正直なのだ、嘘をつく知能が無いかも知れないが、兎に角正直なのだ。それに対してダンジョンコアのコア子は結構腹黒で色々と俺に隠れてやらかすのだ、ホルムンスクだってどう見てもバルキリーに対抗する為に造っているのは胸を見ただけで分かる位だ、戦闘力はまだ見ていないので分からないがフルチューンしたホルムンクスだからバルキリーに負けない様に造ってるはずだ。
「そう言えば賢者様、ここの所ろ人間も此処に住みたいって連中が増えて居ます。人間も此処に村を作っても宜しいでしょうか?」
「良いぞ、じゃあアーサーが村長な! 困った事が有れば言ってこい」
「有難うございます、良い村を造ります」
それから俺とコアは地下2回層の改造に入った、ダンジョンの住民には快適に暮らしてもらわなくてはならないからな、そして毎日滞在ポイントを貢いでもらうのだ。そうすればお互い幸せって奴だ。
「よ~し、オジさん頑張っちゃうぞ~。コア、今度は川造ろうぜ、洗濯や水浴びに使えるぜ。ついでに葡萄の木でも植えてワインも造ってもらうのも良いな、小麦も植えてパンも自給自足にするか~」
「もうなんと言って良いのか・・・・・・ダンジョンから地下都市になっちゃいますね」
「おほ~カッケ~! 地下都市とか男のロマンだよな、海底都市って奴もSFでは有ったな、現代の技術なら出来るのに何故かやらないんだよ、政治家と官僚が馬鹿だから夢がね~よな。こんなんだから科学が進歩しね~んだよ、冒険しないと進歩はね~んだよな」
「冒険しなくても食えるからじゃないですかね? わざわざ危険を冒してまでする意味が無いって思ってるんでしょうね」
「まあそうだな、そこらへんが人間の進歩の限界って奴だな、一部の根性のある人間のお陰で進歩しただけだからな、普通の人間が幾ら増えても資源が減るだけで進歩はしないんだよな」
そして益々快適になるダンジョン地下2階と地下3階、噂は噂を呼び、獣人だけでは無く人間までもが移住してくる様になった。それはダンジョンが快適という理由だけではなく、ダンジョンの外の世界が住みにくく成って来ている事でも有った。
外の世界で人族対魔族の戦いが激化しており、住民に対する税金の上昇、貴族による徴兵、物資の横取り等が増えて来ていた。さらに国の為と言う便利の良いセリフでボランティアの募集をしてタダで色々な作業に駆り出される事が増えていたという。
平和なダンジョンに対して疲弊する人間の王国、戦乱の続く王国が獣人保護、更に逃げ出した領民の保護を行う賢者を見過ごす訳は無く、獣人や領民が逃げ出した領主貴族や国の圧力がダンジョンに徐々に掛かって来る様になる。ここに至って賢者は王国の敵として認識されたのだった。