第2話 生きるって難しい
「腹へった・・・・・・」
ダンジョンで昼寝して目覚めたら腹が減っていた。ダンジョンマスターになったら腹が減らないのかと思ったら普通に腹が減るようだ、ついでに水も飲みたい。
「ヤバイ!ヤバイ!」
そこで俺は状況を思い出してしまった。今の俺はこの洞窟から出ることが出来ないのだ、目の前の森の中で食料を調達したり、川に行って水を飲んだりも出来ない事に気がついたのだ。
「まじで絶望しかね~な、あの女神はやっぱり邪神だよな」
大体普通に平和に暮らしていた人間を異世界に攫ってきて、凶悪な魔王と戦わせる様な鬼畜が女神のわけが無いな、例え神だとしても人間にとっては害しか無いような存在だろうと思う。しかし、俺を殺したければもっと簡単に殺せると思うのだが、わざわざ餓死するような状況に置くとは趣味の悪い奴だと思う。
話に聞いたところでは餓死って奴は結構楽な死に方らしいのでその点では意外と気楽だった、だがこんな理不尽な状況に置かれた仕返しを出来ずに死ぬのは嫌だった。
「精々呪う位しか出来ることがね~な、精々あの女神を呪って死んでやるか・・・・・・」
「失礼しますマスター、宜しいでしょうか?」
「いいよコア、どうせ暇だし」
「現在のマスターのレベルでは呪いを行う事は出来ません、レベル不足です」
「ちっ! またレベル不足かよ・・・・・・いや待てよ、レベルさえ上げれば呪えるって事か!良い事聞いたぜ、レベルを上げまくって女神を呪い殺してやる」
「女神を呪うにはレベル1000が必要です、今までレベル1000に達したダンジョンマスターはいません」
「そんな事わかってるよ、唯の冗談だ。うん・・・・・・冗談だ」
「マスター空腹なのですか?」
「ああ、腹が減った。喉も乾いた、このままじゃ後3~5日で俺は死ぬだろうな」
「それではマスターの能力で食料を調達すれば良いのでは?」
「そんな能力が有るのかよ、因みにどんなものが手に入るのか説明してくれ」
「では説明いたします。ダンジョンマスターにはダンジョン内では絶対的な能力が有ります、例えばダンジョン内にモンスターを創り出したりダンジョン内に山や森等を造る事すら出来ます。ここまでは宜しいですか?」
「ああ。つまり俺はダンジョン内では神に等しいって事だな。創造する能力が有るって事なら」
「その通りです、但し・・・・・・ダンジョンポイントが有れば、ですが」
「だよね~、代償なしで物が手に入るわけないよな」
因みに森を作るには1億ポイント掛かるらしい、山や川も同じって話だった。スライムの創造は一番安くて100ポイント、ゴブリンが3000ポイントそして異世界のドラゴンは1億から10億ポイントって話だ。まあ俺には関係ないけどな。
「因みに今のポイントは?」
「現在のポイントは1000ポイントです、毎日1000ポイント入る仕様になっております。このポイントで飲料と食料の調達が可能です」
「調達できる物を教えてくれ」
俺の頭の中に調達出来るメニューが浮かんでくる、それを見て俺は愕然とする。なんとそれは俺がよく知っている物だった。
「取り敢えず水を頼む、200ポイントだったな。それとカップラーメン150ポイントで」
目の前にコアが呼び出した水とカップラーメンが出て来た、水はペットボトルの2リットルの奴でカップラーメンは極一般的な奴だった。
「あっ!」
「何か問題でも? マスター」
「お湯が無いからカップラーメン食えね~じゃん」
そうなのだ、ここにはお湯は無いのだ、ついでに箸が無ければ手づかみになってしまう。つまり俺はヤカンとガスコンロ、カセットボンベと箸が手に入らなければこれが普通に食えないのだ。
「仕方ね~、水で我慢するか。不味いんだよな水で膨らましたカップラーメン」
死ぬよりマシなので水を入れて膨らましたカップラーメンを手づかみで食った、何だか色々やる気が無くなったので寝ることにする。人間は苦境になれば寝るのが一番なのだ。
「あ~あ、一日1000円で生活するのと一緒かよ。それも定価で買わなくちゃならないから実質500円位で生活する感じだな。やっぱり絶望しかね~な」
どうやら最低限で生きていかなくてはならないらしい、勤労意欲は有るのだがダンジョンから出られないので仕方無い。剣と魔法の世界だから冒険者とかも居るのだろう、俺だってこんな目に会うのなら冒険者になって薬草採取でもして生きて行ければ良いんだが。勇者は御免だが冒険者は面白そうだ、レベルアップとか有るのなら本気でレベル上げに励んで人並み以上を目指すだろうに、強制的に穴の中に閉じ込められているのでそれも出来ないのだ。
「あ~、やっぱり呪いて~な~あのクソ女神」
快適な生活のために俺はポイントを貯めることにした、毎日コツコツとポイントを貯めてカセットコンロを調達するのだ、そして鍋やフライパン等生活用品を集めて自炊するのだ。目指せ自炊生活!
「マスターって意外と堅実なのですね」
「まあな、俺は用心深いのだよ」