第18話 バルキリー
さて洞窟の外には男爵の兵隊が100人程、領主と言ってもたかが男爵、大した事は無かった。何故俺が自信満々なのかと言えばスケルトン軍団が思いの外に育っていたのだ。
「スケルトン集合~!」
「「「「・・・・・・」」」」
スケルトンは喋らないから張り合いが無かったが、俺の前には綺麗に整列しているスケルトンmarkⅡが50体、markⅢが5体、そして目玉のデスナイトが1体居るのだ。数の上では負けているがダンジョンの中で戦うなら数は関係無い、罠や迂回路で相手を分断して各個撃破すれば楽勝なのだ。問題は魔法とか言うものがどの程度戦争に影響を与えるのか分からない事位だな、だがこれにも対策は立てていた。
「よ~しコア、今こそ溜め込んだポイントを使うときがやって来た。サキュバスを召喚してくれ!」
「はあ~! 正気ですかマスター、サキュバスは戦闘能力が殆ど有りませんよ。死ぬ気ですか、あんたは馬鹿ですか!」
「・・・・・・冗談だ、チョット言って見ただけダヨ・・・・・・」
どさくさにまぎれてサキュバスを召喚しようとしたが失敗の様だ、まあ今は戦時だからしょうがないな、俺が負けるとコアも破壊されてしまうからな、あいつも必死なのだな。
「ジャアナニガ良いのかな?」
「サキュバス、サキュバスって煩いです! 同じくらい綺麗でスタイルが良くて激強なのを召喚すれば文句は無いですよね!」
「そんな便利な奴が居るのか? 居るなら是非それを頼む」
「それじゃ2千万ポイント全部を使って召喚します」
「サキュバス2体分の魔物か~、よっぽど綺麗なんだろうな、ボインボインだったら良いな~」
俺が無駄遣いをせずに必死で貯めたポイント、本当はサキュバスを左右に侍らせようとして貯めていたのだが仕方無い、死んだら元も子も無いから今回は我慢だな。
「それではバルキリーを召喚します、光属性で強力な魔法を持ち、遠距離でも近距離でも激強です」
「バルキリーって北欧神話でバルハラに勇者を案内するって言う天使の事だろ、そんなに強いの?」
「そりゃあ強いですよ、なにせオーディンの直属の部下ですからね、魔族で言えば4天王クラスの強さですよ」
そしてコアの説明通りの美人さんが俺の目の前に召喚された。素晴らしいスタイルで大きな胸、引き締まった体なのだが女性らしい丸みがある完璧な美人さんだ。身長180センチ、銀髪で青い瞳。そして光り輝く鎧を纏い、腰には剣を装備している。
普通のラノベ小説だったら幼女が出てきたりして読者に媚びを売るのだが、この話は主人公に甘くなかった。
「うお~、スゲ~胸だな! スタイルも抜群だぜ!」
「いきなりセクハラ発言ですか、もっとこう、違う所に興味を持ったりしないのですかね。賢者の名前が泣きますよ、彼女も呆れてますよ」
「あ~、何となくスマンかった、宜しく頼むバルキリー」
「こちらこそ宜しくお願いします、マスター」
ちょっと目つきが怖いが、素晴らしいスタイルと胸だから楽しみだ。2千万もしたのだから少しは役にたってくれるだろう。
「それではマスター、現状の報告をお願いします。私は何をすれば良いのでしょう?」
「今から俺達は外部の敵と戦う、バリキリーは俺の護衛に付いてくれ」
「敵?」
今の俺達の立場をバルキリーに説明する、俺がダンジョンマスターで人間の兵士が100人程攻めて来ているので迎撃しなくてはならない事。負ければ俺とコアが消滅する事等。
「人間風情が攻めて来るとは、ふふふ、身の程知らずですね。私が蹴散らしてまいります」
「いや君は俺の護衛を・・・・・・」
「虫けら共め!」
「おい! チョット待てバル子!」
バルキリーは俺の説明を聞いた途端に怒り出し、兵士の方へと走って行った。俺にはダンジョンを使った綿密な作戦が有るし、スケルトン達を成長させプラン等も練っていたのだ。ここで勝手な事をされると困るのだ、しかしバルキリーは俺の静止を簡単に降り切ってダンジョンから出て行った。
「おいコア! あいつ全然人の話を聞かないぞ、馬鹿なんじゃないのか!」
「え~と、上位の魔物は召喚者の言う事を聞かない事が有ります」
「あ~っ! あいつダンジョンの外で虐殺を始めやがった、俺のポイントが~」
「あちゃ~、強いだけで馬鹿だったみたいですね。マスター、ドンマイです、人生こんな事も有りますよ」
「何他人事みたいに言ってんだ、お前のせいだぞ。やっぱりサキュバスの方が良かったぜ」
バルキリーは滅茶苦茶強かった、それはそうだろう召喚ポイント2千万、普通の兵士の2千倍のポイントを持つ魔物なのだ、兵士の2千倍程強いっていうのはもはや冗談の様な強さだった。目に見えない速度で移動して剣の一振りで10人程を叩き切り、背中から羽を出して空を飛び、空中から魔法攻撃で地上の兵士達を塵に変えていたのだ。こんなものは戦いではなかった、ただの虐殺。バル子の言う通り虫けらが神に逆らったって事だった。
「マスター敵を殲滅いたしました」
「なにやり遂げたって顔してんだ! ダンジョンの外で殲滅したからポイントがゼロ!だぞ!ゼロ!」
「いけませんでしたか?」
「いけないに決まってるだろ!ポイントがゼロだと飯も食えないんだぞ、取り合えずお前は当分飯抜きな!」
「え~そんな、マスターの為に頑張ったんですよ」
「うるせ~! 今度から殺す時はダンジョンの中でヤレ。お前のお陰で大赤字だぞ」
男爵のよこした兵士達100人は簡単に始末した、それも洞窟の外で始末したので俺がダンジョンマスターだと疑われる事は無かった。それに戦ったバルキリーは外から見れば天使に見えるのだ、つまり男爵は神の使いに敗れたって事になったのだ。天使は神の使いなので善、そして男爵は悪って言う評判が当然の様に広がり、俺のダンジョンは神の祝福を受けている聖なるダンジョンとして冒険者達から崇拝される様になってしまった。
「マスターたまには良い物食べさせて下さいよ~」
「煩い、お前はパンの耳でも食ってろ、スケルトン達は何も食べずに働くぞ」
「パンの耳ばかりだと胸が小さくなっちゃいます」
「仕方ね~な。ほらハンバーガーとコーラ、ポテトも食ってろ」
男爵を退けて俺のダンジョンは普段の生活に戻っていた、貴族の仕返しを警戒していたのだが。今の所は全くその兆候は無かった。お陰で冒険者相手の商売を再開して、地道にポイント稼ぎを行える様になってきた。俺はと言うとバル子のお陰でポイントが激減したので節約してポイントを貯めこんでいる最中なのだ。