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斜め上のダンジョンマスター  作者: ぴっぴ
第2章 笑うダンジョンマスター編
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第16話 悪意を持つもの

 アーサーに任せることで儲かっているダンジョン。俺はダンジョンの付属品として毎日アーサーの所へ日常物資を運ぶ仕事ばかりしていた。賑やかになったダンジョンは楽しかった、地下1階層には今は沢山の人間達が生活してるので話し相手には困らなかったし、皆俺を大事にしてくれる良い奴らだった。俺もお返しにタダ酒を振舞ったりホラ話をして大いに酒場を盛り上げたりして楽しく暮らしていた。


「平和だな~、毎日冒険者達が貢物を持って来てくれるし、アーサー達が頑張って働いて稼いでくれる。魔物の処理はスケルトン達がしてくれるし、俺はカレー出すだけだもんな」


「マスター止めて下さい! それはフラグが立ちます」


「フラグとか言われてもな、俺はサキュバスが欲しくて頑張ってるだけだからな。サキュバスさえ召喚出来たら後は割とどうでも良いと思ってるんだ」


「凄い割り切り方ですね、もう少し考えた方が良いのではないですか」


「人生ってシンプルな方が良いぞ、楽に生きられるからな」


「いやいや、外敵に備えて日頃からダンジョンの強化をしていた方が良いですって、万が一って事が有りますから」


「なんとなく、それってフラグっぽいな」


 毎日冒険者達の間を渡り歩いてホラ話を面白可笑しく話して遊ぶ毎日、ダンジョンマスターなのに人間相手に遊んでいて良いのかな? とか思ったりもしたが世に中って奴は流れに乗ることも大事なのだ~! とか思って毎日暮らしてしていた。


「賢者様、不味い奴がやって来ました。注意して下さい」


「不味い奴って誰だ? アーサーの知り合いか」


「知り合いって訳じゃ無いッスけど、冒険者ギルドの代表っすよ」


 何時もの様に酒場で冒険者相手にホラ話をしてたらアーサーがやって来た。冒険者組合のお偉いさんが俺に用が有るらしい。面倒だから無視するのも有りなんだが、出来れば穏便に済ませたいので会う事にした。


「あんたが賢者か?」


「そうだ、お前がギルマスなのか?」


「ああ、あんたに話が有る」


「言ってみろ聞いてやろう」


 俺は強気で行く事にした。ギルマスがやって来るって事は冒険者絡みの厄介事に違いないのだ、そして交渉って奴はどちらかが損をしてどちらかが得をするって話なのだ。そして交渉が不調に終わると最終的には武力で決着をつけるって話に成るのだ。これは現代でも同じだし、戦う意志の無いやつは舐められて終わりなのだ。


「最近ここに冒険者が入り浸ってるせいで、冒険者組合が困ってるんだ、何とかしてくれ」


「ふ~む、俺が呼んでる訳じゃないんだがな。冒険者が勝手に来てるだけだぞ、俺にどうしてもらいたんだ?」


「冒険者が来なくなったら冒険者ギルドが潰れてしまう、そうなったら困るのは冒険者達だ。組合がなくなっても良いのか」


 俺は冒険者ギルドが無くなってもチッとも構わないのだ、冒険者じゃなくても魔物さえ持ってきてくれれば良いのだからな。冒険者が居なくなって困るのは冒険者達から利益を得て暮らしている冒険者組合の職員だけなのだ。それにこの付近の冒険者が魔物を持って来てるだけだから全体の冒険者から見たら誤差の様なものだと俺は思っていた。

 でもまあ、このオッサンの首が飛びそうなので俺に文句を言いに来たのだろうな。こういう場合はハッキリ断ると根に持たれるので適当な事を言って誤魔化すのが大人ってものだ。


「うむ、貴様の言いたい事は分かった。儂が直々に冒険者達に言ってやろう。感謝するが良い」


「本当か! 頼んだぜ」


 俺が適当に言ったら冒険者ギルドのお偉いさんは帰っていった、文句を言ったので満足したようだ。そこで俺は顔なじみの冒険者達に愚痴をこぼしに行った。いきつけの酒場にトボトボ歩いて行く、入念な演出って奴だ。何時も俺はここで冒険者達に酒を奢ったり、法螺話をしたりしているので此処にいる冒険者達は皆俺のファンなのだ。


「おいおい聞いてくれよ」


「どうしたんです? 賢者様 元気が無いようですけど」


「さっきギルマスが来てさ~、冒険者と取引するなって言うんだぜ、酷いよな!」


「「「「え~!!!何だって! あのクソ野郎そんな事を!」」」」

「「「「俺組合やめるわ! 皆で組合辞めるか! そうだそうだ、組合に入ってても儲からね~しな! ギルドに火を付けてやるか!」」」」


 冒険者達を儲けさせている俺の愚痴は大反響だった、冒険者を利用して儲けているだけのギルマスは皆に嫌われていた様だ。ここで新しい組合を立ち上げても良いのだが、俺は政治家になる気は無いのでやめおいた、俺は政治家よりも更に悪い人間なので良い人間のふりをする事にした。


「まあまあ君達の気持ちは良く分かる、だが短気は良くない。組合員達にも家族が有って生活が有るのだ、だから君達もタマには冒険者組合の仕事も受けてやってくれ。この通りだ」


「わ~!! 賢者様、頭を上げてくれ! あんなクソ達の為に賢者様が頭を下げることはね~よ!」


 俺は頭を下げて冒険者達に頼んだのだ、自分以外の人間の為に頭を下げるとは、なんて俺は良い人間なのだろうか! 冒険者達は皆俺の慈悲深さに心を打たれていた。

 まああれだ、頭なんて下げるのはタダだしな、頭を下げた位で良い人認定してくれるなら幾らでも下げてやるのだ。


「マスターって役者ですね」


「うむ、仕事をするってそう言う事だぞ、仕事ではその役に成りきらねばならんからな。1流の役者は仕事も良く出来るのだ」


 確か昔の博士号持ちの部下がそんな事を言っていた様な気がする、多分本当の事なんだろうと思う、良くわからんけど。


 適当に賢者の信者を増やしなが俺は良い人ゴッコをしていたのだが、ここの噂が広がって行くに従って悪人たちが寄ってくるようになった、まあ金の有る所に寄って来るのは人間の性って奴なのだろう。


「賢者様、私に良い考えがございます、一緒に大儲けを・・・・・・」


「いらん!」


 自称経営コンサルタントがやって来た、こんな馬鹿に騙される程俺はバカじゃないのだ、能力が有るなら自力で儲ければ良いだけの事なのに、こんなのに騙される馬鹿が多いのは2世や3世の経営者に共通する特徴だな。


「賢者様! 又また厄介な奴が来ましたよ! 今度はマジでヤバイです」


「どうヤバイんだ?」


「貴族ッス! あいつ等は話が通じないからマジでヤバイっす。逆らうと兵隊をけしかけて来ます」


「成程、厄介だな。特権階級って奴か」


 今度は金ピカの服を来た太った奴がやって来た、護衛の兵隊が4人付いていた。多分兵隊を使って俺を威圧して有利に話を進めようって魂胆だな。さてどうするかな? こっちもデカイ護衛を沢山出して威嚇するのも面白そうだけど現状維持は俺にとって有利なのだ、時間が掛かれば掛かるほど俺はポイントが貯まって有利に成るのだ。つまり此処は下手に出て時間稼ぎするのが賢いのだ。


「仕方ね~な、御貴族様に会いに行くか~」


「気を付けて下さいよ賢者様、貴族って因縁つけてきますから、くれぐれも短気を起こさないようにして下さいよ」


「へいへい」


 ふふふ、善人の俺を舐めてもらっては困るな、俺は善人の振りをする為に頭を下げる事くらい簡単にしちゃう男なのだ。お貴族様の言うとおりに何でもハイハイと言っておいて、相手の言う事を聞かなければ良いだけなのだ。【善処します】とか【前向きに検討いたします】とか言ってその場を誤魔化せば直ぐに人間なんて忘れてしまうのだ。

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