第14話 千客万来
アーサー兄妹が2日に一度来るようになった、目当てはカレーとパンかと思ったら。ここでおまけに出て来るお菓子や飲み物、そして快適なダンジョンの風呂が目当ての様だった。
「アーサー、最近よく来るけど家の方は大丈夫なのか?」
「大丈夫っス! 賢者様カレーのお陰で儲けてるっすよ。賢者様さまッス!」
潰れかけていた宿屋はカレーと食パンのお陰で儲かってるのだそうだ。しかし食パン1斤(6枚)とカレーが2~3袋で儲かるのは少々おかしいと思って聞いて見たら。パン1枚にカレーを少し垂らして銀貨1枚もとっているのだそうだ。凄いボッタくり価格であるが、香辛料もフワフワの食パンも珍しいのでお客さんにも好評なのだそうだ。
「ふ~ん、香辛料って儲かるんだな」
「お陰様でお客さんも金持ちが増えて来て、宿の雰囲気も良くなって来たっすよ」
カレー1個と食パン6枚切りが銀貨6枚、カレーを1袋出す場合はそれだけで銀貨5枚も取るのだそうだ、それでも香辛料なんてめったな事では食べられないので朝から行列が出来る程人気が出てきたのだそうだ。
まあ、ゴブリン1匹が銀貨5枚に成る様なものだから大儲けなんだろうな、因みに銀貨5枚有れば4人家族の食費に成る位の価値なのだそうだ。それで言うならオークはカレー3袋だから、オークをカレーに替えると家族が余裕を持って生活して貯金が出来る計算だな、成程アーサーが喜ぶハズだ。
「あっ、賢者様。今度から仲間を連れて来て良いっすか? もっと沢山オークを捕まえたいッス」
「良いぞ、オークもゴブリンも幾らでも持って来るが良い」
「有難うございます」
それからしばらくしたら、金に余裕が出て来たアーサーは冒険者を雇ってオークを沢山持ってくるようになった。
「賢者様、今日は10匹持って来たっす」
「へ~、大量だな」
「お陰さまで儲かって冒険者を雇える様になったっす。街の近くにオークが沢山居るっすよ」
「へ~アーサーも人を使う様になったのか。出世したな」
「へへへ、賢者様のお陰っす」
アーサーは冒険者を4人ほど雇っていた、カレーのお陰で結構儲けた様だ。俺としてもオークを10匹も連れて来てくれると助かるのだ、オーク10匹で10万ポイント、カレー30袋で3000ポイント、つまり1日で97000ポイントも儲かるのだ。これって毎日新しい階層を増やせるって事なのだ。
「おいアーサー、皆で泊まってゆけ、飯も風呂も使って良いぞ」
「本当っすか、皆喜ぶっす!」
そして更に冒険者達を泊めて更にポイントを稼ぐ作戦なのだ、そして冒険者達が持って来た魔物はスケルトンmarkⅡ達に始末させているので、markⅡ達は経験値を稼いで直ぐにmarkⅢに進化するはずだ。これぞ秘技、他人任せなのだ。
そして当然なのだが、アーサー達がせっせと俺に魔物を持って来ているうちに俺のカレーが街中に知れ渡った様だ。噂を聞きつけた他の冒険者達も俺の所に魔物を持ってくる様になった。
「マスター、新たなる侵入者です。注意して下さい、高ランクの冒険者です」
「ついに来たか、こうなるのは時間の問題だったがな」
「どうします? 迎撃しますか?」
「現在の戦力は?」
「スケルトンmarkⅡが30体、markⅢが5体です。更に余っているポイントが40万ポイント、かなり強い魔物を召喚出来ます」
「いつの間にか結構な戦力になってるな、冒険者30人位なら勝てそうだな。と言っても冒険者の強さを知らないから何とも言えないがな」
知らない冒険達が来ているので迎撃に向かったのだが、何やら様子が違うのだ。
「すいませ~ん! ここが賢者様の洞窟でしょうか?」
「ええまあ、そう呼ばれてますけど。どちら様でしょう?」
「え~と、ここで魔物とカレーを交換してもらえるって聞いて来ました。俺達隣町の冒険者です」
洞窟の外を見ると魔物を持って来た冒険者達が列を作って並んでいた。どうやら彼等はカレーが欲しい様だった。冒険者たちは皆紐で縛ったり、箱に入れたりした魔物を連れているのだ、中々壮観な眺めだ。
「もしかして皆カレーが欲しくて来てるのかい?」
「ええ、ゴブリンやオークで金儲け出来るって聞いて来ました。冒険者組合にゴブリンを持って行っても5匹で銅貨5枚にしか成らないんですけど、ここならカレー5袋、最低でも銀貨5枚にはなるみたいですから」
「俺達じゃ駄目なんですかね? 何か資格とか組合とか有るんですか?」
「いや資格も組合も無い、買い取ってやろう。だけど人数が多いからチョット時間をくれないか? 今から準備する」
「有難うございます、賢者様!」
「おお~い!みんな~! 賢者様がカレーに替えてくださるぞ~!!!!!」
「「「「「うお~!ヤッター! 賢者様最高~!!!!」」」」」
それから俺は地下2階に降りて大量のカレーを召喚する、それと同時に冒険者が持って来た魔物を地下3階に連れて降りる係りを造った。冒険者達に怪しまれない魔物ゴーレムだ、ゴーレムは土魔道士なら創り出す事が出来るらしいので、ここで使役していても多分怪しまれないだろうと思ったのだ。
「コア、ゴーレム2体と荷馬車2台出してくれ。あとカレーを200個」
「了解、一番安い石ゴーレムで良いですか? 1体10万ゴールドですけど」
「先行投資って奴だ、金が掛かっても仕方無いな。怪しまれるのが一番不味いからな」
スケルトンmarkⅡ達が使えるのが一番安上がりなのだが、アイツ等は見るからに怪しいのだ、中に骨が見えているのでスケルトンと丸分かりなのだ、スケルトンの様なアンデット系の魔物は人間に嫌われているので使いたくないのだ。
ついでに女性だけの冒険者チームが居たので雇った、魔物とカレーを交換して貰う。思ったより冒険者達が多かったのだ。
「賢者様、カレーが足りません!」
「賢者様、オーク5匹です!」
地下1階に冒険者を入れてカレーの交換を行った訳だが、全員冒険者だからもしかしたらここがダンジョンだとバレるかと思ったのだがバレなかった。理由は簡単、俺のダンジョンには魔物はmarkⅡとmarkⅢしか居ないからだ、彼等を隠してしまえば2階は草原、3階は石畳、4階は洞窟、5階は空っぽなのだ。
勿体無いから魔物を全然召喚してないのが良かった様だ。俺のダンジョンには虫も動物も全く居ない、ここは不思議な空間なのだ。
「お疲れ様~!」
「「「「お疲れ様でした~!!!」」」」
そして魔物とカレーの交換が終わった夕方、俺は雇った女冒険者達と打ち上げを行っていた。ゴブリンばかりだったが大量の魔物をカレーと交換したので大変だったのだ。一仕事終えた後のビールは美味いのだ。
「うわ~このエール美味しい!」
「焼き鳥ってのも最高!」
「遠慮しなくて良いぞ! 好きなだけ食ってくれ。あっちには風呂も有るから入っても良いぞ!」
「「「「はあ~い、賢者様サイコー!!」」」」
深さ1mの落とし穴を作ってそこに水と氷を入れる、そしてそこに1本100ポイントの発泡酒を10本程入れて、あとはつまみを適当に召喚。さあ、宴会開始だ! この冷えた発泡酒やツマミは冒険者達に売ることにしよう、彼女達に給料を払わなくては成らないからな。
4人の女冒険者、巨乳から貧乳まで選り取りみどり、中には猫耳まで居たようだが気にしない、俺は平等主義者だからな。彼女達もここが気に入った様なのでそのまま雇うことにした、安全に儲かるなら冒険者より売り子の方が良いらしい。彼女達の家は地下1階に10畳程の小部屋を沢山造った、ダンジョンの小部屋は安くて簡単に造れるのだ、本来は宝箱等を置く部屋らしいが、俺はトイレや倉庫として利用していた。
「それじゃ、君達はここに住んでくれ。家賃はタダだ、トイレはそこ、風呂はこっち、そしてここが食堂」
「スゴ~い! 流石賢者様! 簡単に色々な物が造れちゃうんですね!」
「まあな、一応賢者だからな!」
この世界では賢者って言えば何でもアリだった様だ、素晴らしい、情報が伝わらない世界って最高。