第10話 枯渇する資源
スケルトンmarkⅡを2体得た事で狩の効率は上がった。mark2はオークよりも強く、たぶんオークの上位種と同等の戦闘力が有ったのだ。特に素晴らしいのはスライムの打撃に対する強さだった、オークの棍棒をポヨヨンと受け止めてダメージを負わないのだ、そして攻撃を受け止めた後は恐れ知らずのスケルトンの怒涛の攻撃で相手を仕留めるのだ、スライムの良い所とスケルトンの良い所が合わさって素晴らしい強さを誇っていた。
そしてやって来たオークやゴブリン等を狩っていたらスケルトンがハイスケルトンに進化して一回り大きくなったりポヨポヨが更に分裂して増えたりして俺の配下はドンドン増えていった。と言っても召喚するのはスケルトンだけなのでダンジョンポイントは着実に増えていった。毎日貯金が増えて行くのでダンジョンマスターは大喜びだったが、そんなに上手いこと物事が進むなんて事は絶対無いのだった。
「最近オークが来ませんね、マスター」
「そうだな~、好景気は終わったみたいだな。短い好景気だったぜ、2週間位だったかな」
どうやらこのダンジョン入口付近の魔物は狩り尽くしてしまった様だ、生きて行くだけなら毎日ポイントが入って来るので、別に努力する必要も無いのだが、世の中って奴は不測の事態が常に起きるのだ、確率がどんなに低くてもゼロでは無いので状況次第で直ぐに非常事態になるのだ。今の戦力はスケルトンmarkⅡが6体、スケルトンmarkⅡから進化したスケルトンmarkⅢが2体。俺が冒険者に成れていたら普通に暮らして行くのに何の不自由も無い戦力なのだが、俺はダンジョンマスターなのでダンジョンから出られない。つまり強い相手が来ても逃げられないって訳だ、だから生きる為には戦って勝たなくてはならないのだ。
「因果な商売だな、ダンジョンマスターって」
「マスターは上手くやってます。自信を持ってください。所で、どうするんですか?」
「来なければこっちから出向くしかあるまい。つまり遠征だな」
「マスターはダンジョンから出られませんよ」
「俺は無理でも魔物は出られるから問題ない、昨日ポヨポヨに相談したら自信が有るみたいだったぞ」
「ポヨポヨと話が出来るんですか? スライムが話すなんて聞いた事が有りません」
「まあ何となく分かる感じだな、ポヨポヨは頭が良いからな、スケルトンの頭蓋骨の中に居るから脳みたいな感じになったのかな? 良く分からんけど」
「またいい加減な事を・・・・・・」
まああれだ、犬や猫を飼ってると何となく相手の言いたい事が分かって来る奴だ。本当に分かってるかどうかは分からないが、何となく分かる様な気がするのだ。
「遠征隊整列!」
「・・・・・・」
スケルトン遠征部隊、スケルトンmarkⅢが隊長、部下にmarkⅡが5体、それに荷物運び用にスケルトンを5体付けてやった。彼等はダンジョンから出て森の中に居る魔物を捕まえて持って帰る為の部隊だ。彼らは武装の他に獲物を縛る為のロープと魔物を積む大八車をスケルトンに持たせていた。残りのmarkⅢとmarkⅡはこのダンジョンの護衛として残すことにした。
「このダンジョンの将来は君達にかかっている、頑張ってくれ。健闘を祈る」
「・・・・・・」
スケルトン遠征隊に訓示を行い送り出す、ビシッと敬礼を決めて送り出す俺はカッコ良かった、スケルトン達も答礼をして森の中に入って行った。彼らは喋らないので非常に静かな部隊だった。スケルトンは眠らないし疲れない、人間よりも遥かにタフなので頑張ってくれるハズだった。
さてこのスケルトン遠征部隊は魔物を捕まえる部隊なのだ、森で見つけた魔物をそのまま殺してしまったらダンジョンポイントはゼロだ、彼らはレベルアップするかもしれないが俺は全然儲からないから困るのだ。ただし、戦って殺すよりも生きたまま連れて帰って来る方が遥かに難しいのでこの作戦が成功する確率は低かった。
「この後はどうするんですか?」
「ダンジョンの拡張でもするかな、他にする事無いし」
最低限のポイントしか使わずに貯めていたのでポイントは結構溜まっていた、少し景気が良かったのでマスターレベルも少し上がっている、今のレベルはマスターレベル8、ここまで上がるとオークを沢山倒しても上がらない様だった。
「今のポイントでどの位のダンジョンが出来るんだい?」
「57万ポイント全て使えば地下に2層ダンジョンを作れますよ、ただし中身は空っぽですけど」
「取り合えず造れる時に創っておこうか、内装は後から考える事にしよう」
今のこのダンジョンは入り口の6畳の洞窟と地下1階層、地下1階層は落とし穴だらけの迎撃専用のスペースとなっている。この世界に来て3か月位になったが、そろそろ俺の精神が限界なのだ、何の愉しみも無く毎日魔物を倒すのに疲れたのだ。
なので新しい階層を作って草原にしたり、湖のある階層とかを作りたいのだ。薄暗いだけの穴倉に閉じこもっているのは流石にもう限界だった。
「コア、地下2階層を草原にするには何ポイントだ?」
「雑草を生やすだけならタダで出来ますよ、薬草とかなら1本10ポイントですけど」
「お~それは素晴らしい、雑草で良いから生やしてくれ。木とは高いのか?」
「役に立つ木は高いです、リンゴとかは1本1万ポイント、杉の木とかなら1本100ポイントですね。お得な森林パックなら1キロ四方で100万ポイントになります」
20万ポイントで造った地下2階層は緑あふれる草原、久しぶりの緑は気持ちが良い。これで川でも流れていれば気分が良いのだが川は100万ポイント、なので今は買えなかった。そして地下3階層は石畳のダンジョンにしてみた、特に意味は無い、そして現時点で此処が最下層、俺のダンジョンの最重要な階層だ。ここは基地でも有るので入念に防衛体制を整える事にする、まあ落とし穴を沢山造るだけなんだけどね。
そして一番奥の壁の所に10畳ほどの隠し部屋を造ってダンジョンコアを設置した、ついでに自分のベットと台所を造る、小部屋は千ポイントで簡単に出来るので更に隣にトイレと風呂を造る、風呂は唯の小さな落とし穴で水を後から入れるというものだが、風呂に入れるだけで有難い。そしてトイレは最後に自分でバケツの水を流すって言う原始的な水洗トイレだった。
「何だか充実してきたな、これで外敵が居なかったら10年位頑張れそうだ」
「そうですね、地下3階層になったので、1日3000ポイント入りますよ。独りで食べていくには十分ですねマスター」
「食って寝るだけならそうだな、俺の精神が持てばな」
「マスターは一人じゃ駄目なんですか?」
「さあな、無人島で何十年も頑張れる人間も居れば、直ぐに精神が崩壊する人間も居るから良く分からないな、俺も試した事は無いからな」
「じゃあどうするんですか?」
「うむ、3DS○Lとモンハ○を出してくれ、両方で4万ポイントだろ? これが有れば俺は1年くらい頑張れるのだ。これについては実験済なのだ」
こうして俺は地下3階に住み着いて、ゲームをしながらスケルトン達を待っている生活を始めた。