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記憶

作者: Airan-altvier


いやだなぁ…


息を吸ってからの、大きなため息。なにがいやって、なにもかも。なにもかもいやなんだけど、なにがいやなのか正直自分にもわからない。だけどなんだか毎日苦しくって、それでも毎日ちゃんとこなしてる。


「今日は…21日だから、出席番号21番の人!これ答えてみて」


よく響く数学教師の声。宿題の答え合せ。あといっこ数字が若かったらあたしだった。あ、でももしかしたら次当たるかな。日付で指す人決めるって安直よね。


ごちゃごちゃごちゃごちゃ


思考が埋まっていく。授業に集中したい。

でも、こんなの勉強して将来役に立つのかしら。大学受験で終わりじゃない?足し算引き算掛け算割り算、小学校でやったことで日常生活送れちゃう。そもそも大学に行かないと就職できない今の社会がおかしいじゃない。


ごちゃごちゃごちゃごちゃ


ああ、頭の中が騒がしい。辛い。苦しい。将来なにしたい?なにもしたくない。公務員だろうと接客だろうとどんな企業だろうと最近クレーマーなんかがひどいらしいじゃない。技術職なんてブラックでしょ。てゆうか、そもそもたいていの企業がブラックなんじゃないかしら。あーあ、未来がない、お先真っ暗。


ごちゃごちゃごちゃごちゃ


いっそ死んじゃう?うーん、それは怖い。自殺願望があるわけじゃないし。いっそ不慮の事故に巻き込まれて…


「20番!ぼーっとしてんなよ、⑤の問題分かるか?」


あ…「はい、x二乗プラス3xプラス5です」


「よし、次、16番!」


あれ、寝てた?でも、よかった、答えは合ってた。⑤の問題に丸をつける。


…あれ、あたし、答え合わせ全然聞いてなかった…赤いマルもバツも付いてない答えたち。あとでマイに答え聞こう、あの子真面目だからちゃんとノートとってるはず。そう思いながらマイの席を見やる。あれ、居ない。あれ、誰もいない。気付いたら誰も居なくて周りは静かで窓の外からの光はオレンジ色。


あれ?


そそくさと帰り支度をする。いつ授業終わったんだろう、いつ帰りの会が始まったんだろう、みんなはいつ居なくなったんだろう。

急いでスクールバッグを肩にかけて教室を出る。


ごちゃごちゃごちゃごちゃ


家でご飯を食べている。目の前にはコンビニで買っただろうスパゲッティとサラダ。


あれ?


いつ家に着いたの?いつコンビニ行ったの?


いつもどおり、両親は居なくって

いつもどおり、コンビニのご飯で

いつもと違う、あたし…

怖くなってスマホで調べる。


「記憶 消える 突然」 検索


パッと出てくる「一過性全健忘」の文字。

え、なにこれ怖い。突然時間が飛んでしまう感覚。症状はものすごく合ってる。病院には行った方がいい…か…。

こんなの両親に相談したら殴られそう。せっかく健康に産んだのに!迷惑かけて!って。黙って行こう。保険証どこやったっけ。

もうなんであたしってこんなついてないんだろう。一過性全健忘って、中年がなりやすいって書いてあったよ?わけわかんない…


ごちゃごちゃごちゃごちゃ




あれ。



トラックが 目の前に














ヂリリリリ、ヂリリリリ…

布団の中から枕元の目覚まし時計に手を伸ばし、音を止める。

あれ、いつの間に寝てたっけ…まぁいいや。

うーん、と伸びをして起き上がる。

頭は妙にスッキリしている。


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