第3話
ここがハジマの村か・・・
3時間ほどフェルトに着いて歩いていき、明かりが見えると、大きな門が見えてきた。
「あれがハジマの村よ!」
フェルトが指差す。
あれ村っていうより街じゃね?
そこには明らかに村というには規模が大きい門があり、門の前には門番が立っていた。
「フェルトじゃないか。随分と遅い帰りだな。」
「森で迷子を拾っちゃってね。安全なルートを選んだら遠回りになっちゃった。この子トーゴって言うの、冒険者になる為にハジマまで来たんだけど、魔物に襲われちゃったらしくて。」
フェルトが俺の事情を話してくれているようだけど、信じて貰えるかな?フェルトが騙されやす過ぎただけで他の奴らはそうとは限らないし。そもそもこの世界で身分を証明するものを何一つ持っていない。
まぁ悪い事だけではないけど、いいようによっちゃぁ誰も俺を知らないから自分の好き勝手にできるし。
「そう言う事なら分かった。トーゴとか言ったな?この通行許可証に拇印を押してくれ。」
「わかりました。」
身分証明書とか必要ないのか?服装見た限りだと、前の世界と文明レベルに差があるっぽいしそこら辺ガバガバなのかもな。
「ようこそ、ハジマへ歓迎するぜ!俺は門番のアルダだ。」
・・・東郷なんだけどなぁ。今更変えるのも面倒だしトーゴで通すか。
「トーゴです。宜しくお願いします。」
通行許可証に拇印を押し、中へと入る。そこには、夕方にも関わらずとても賑わった街並みが広がっていた。それぞれ商店もとても賑わっており、チラリと見た限りだと、武器や、武具やと言った現代日本でなら、一発でしょっ引かれる様な物を売っていた。そして何よりも、一部の人間には普通の人間には無いようなパーツが付いているのだ。猫耳や、うさ耳他にも様々な人種がいる。
「・・・おぉ。」
思わず、声が出る。本格的にファンタジーな世界に来たのだと実感を得る。
「珍しい?」
フェルトが首を傾げて聞いてくる。
「あっ、うん。あの耳がついてるのって?」
「?獣人でしょ?」
獣人・・・某RPGとかでいたけど、この世界では当然の様に実在しているのか。・・・パンツどうなってるんだ?尻尾を通す用の穴が空いてたりするのか?どんな匂いがするんだ?いきなり異世界に転生されられたが、こんな非常識なら大歓迎だ!心が躍る躍る。
「なんか生き生きしてるね!トーゴ。」
「あぁ。遠路遥々きた甲斐があったよ。」
どうやら態度に出てしまったみたいだ。落ち着こう。流石に、こんな右も左もわからない状態で犯罪を犯すのはまずい。最悪、斬り殺される事さえ視野に入れておかねば。
街の丁度中心に来るとそこには、一際大きく賑わっている建物があった。看板を見るが、当たり前だが言語が違っていて全く読めない。
「トーゴここがギルドだよ。」
「ギルド・・・?」
「え?トーゴ冒険者になりに来たんでしょう?だったらここで冒険者登録しなくちゃね。さ、こっちこっち。」
手を取られギルドへと入ると、中には酒を飲み談笑するものたち、自分の武勇伝の様なものを話すもの達と様々だ。
そのままフェルトは、カウンターへと俺をひっぱっていく。それにしても凄まじい力だな全く対抗できない、とても10代の少女の細腕から出せる様な力ではない。もしかして魔法使い(物理)だったりするのだろうか?それとも異世界人はデフォルトでこんなモンスターどもの集まりなのか?だとしたらとんだ修羅の世界に送られたもんだ。
「レナさん。この子トーゴって言うんだけど」
フェルトが受付嬢に俺のことを紹介している間に、詳しくギルド内を見る。
重厚な鎧に身を包んだ騎士の様な男、大きな斧を背中に背負った獣人、ローブをまとった麗しい麗人、など個性が服を着て歩いている様な連中がうようよいる。本格的に魔境じみているな。・・・いや、割とコミケはこんなもんだな。
「わかりました。ではトーゴさん。」
東郷っすけどね。まぁもういいですけど、
「なんでしょう?」
「冒険者登録をするので奥の部屋へ、あと登録料として1000リュオンのお支払いを。」
リュオン?もしかしてこの世界の通貨か?まずい!無一文なのにそんなもの用意できるはずない。そもそも1000リュオンってどれくらいの金額なんだ?これ俺騙されても、気づかないな。情報が圧倒的に足りない。
「あの、どうかなされましたか。」
「あ、あの実は魔物に落とされた際、財布を落としてしまったみたいで・・・すいません登録は、また今度で。」
くっ!ここまで奇跡的に、お人好しに拾われていい流れだったのにこんな事で、詰むなんて。
「だったら私が出すよ。1000リュオン貸してあげる。冒険者になって稼いだら返してくれればそれでいいよ!」
・・・は?何が狙いだ?こいつ、まさか暴利を押し付けて、俺を養分にでもするつもりか?ここは、断ろうここまでお人好しだと流石に、きな臭いぞ。
「いや、流石に悪いよ。それに初対面の人にそこまでしてもらうなんて、ここまで連れて着てもらっただけでも感謝しても仕切れない程だし。」
「大丈夫!昔私も親切な人に助けられたから。誰もは、最初は新人なんだし困った時は、お互い様だよ」
屈託ない笑顔で此方を見て来る。
正直な話、俺自身が救い用がないクズなのもあるが今まで数え切れないほどクズを見てきた。そしてその経験則からいくとこいつは、
馬鹿だな。救い用のないほどどうしようもないお人好しだ・・・
よしなら借りてやるさ。別に冒険者になってこの街からさっさとおさらばするのもアリだしな。
「ありがとう。フェルトさんこの恩はきっと返すよ。」
「うん!」
「それでは、トーゴさん。奥の部屋へどうぞ。」
さて、人の金で冒険者になれる様になったわけだが、どうなることやら。
受付嬢のレナとともに東郷は俺ギルドの奥の部屋へと入って行った。