プロローグ
・紫色の夜空に光る、一筋の光。
それは彗星の様で、彗星ではない。
やがて彗星もどきは大きくなり、スカイのすぐそばまで降りて来た。
そう、型は古いが、紛れもない『銀河鉄道』だ。
地球の『ブルートレイン』とか言うのに似てる。
降りてきたのは作業着にグラサン姿の体格良い男だった。
白髪頭が、ワックスを塗りたくったと一目で分かる程の見事なリーゼントだ。
彼はまずスカイを見下ろすと、周りをキョロキョロ見渡した。
ー何も無い。
彼はそう思ったはずだ。現に、スカイの周りに有るのは、破壊し尽くされた建物のガレキや、死体の山、それらを組み合わせてスカイが作った粗末な墓が数個あるだけ。
こんな気味悪い星、普通の人ならすぐ立ち去りたがるものだが、彼はいつまでもスカイから離れなかった。
「ようお嬢さん、この星、まだ他に誰かいるかね?」
「いないわよ......いるのは私と、死んだ人たちだけ。」
無愛想だとでも思っただろうか。でも、愛想振り撒く気力もなかった。
スカイは失ったのだ。家も、家族も、大切な友達も全部......。
いましがた死のうとさえ思った自分の前にノコノコ現れ、ここで起こった事を根掘りはほり聞いてくる男。
一種の怒りを感じ、スカイはいつの間にか、男に掴みかかっていた。
「あんた、なんなのよ!?なんの関係もない人が、私のふるさとに入って来ないで!どうせもうこの星は滅んだのよ?満足でしょ!もうほっといてよ!」
身長の低いスカイは、背の高い男のひざを力の限りなぐりつける。
男は避けも、抵抗もせず、ただスカイの頭をなで回した。
スカイは頭上を睨んだが、男の表情は読めない。
ただ、頬に一筋の涙が伝うのだけは、一瞬だけ、はっきりと見えた。
「そうか。お前さんも帝国主義社会に全て奪われたクチかい。オレと同じなんだなァ......。」
「オレと、同じ......?」
男は墓の前に立ち、花束をそなえると、もう一度スカイを見下ろした。
「今死ぬにゃァもったいねぇなお嬢さん。アンタ、名前は?」
「......ウィーブル・メナード・スカイ。」
「そうか。オレァ上村太助、探検家だ。オレと一緒に来な。」
スカイの手を引く上村。スカイはあわてて尋ねた。
「ちょっと待って!行くってどこへ!?」
上村は楽しくて仕方ない様に、ニカッと笑って言った。
「『地球』だよ......!!」