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レムナス王子視点。
「レムナス様、今日は随分とお顔の色がよろしいですね」
城の自室で、カーテンを開けるメイドのルーシアの言葉にハッとする。
今日は、朝から頭がすっきりとしている。
霧が晴れたような、というべきか。
先週は特に頭がぼんやりとして、執務が捗らなかった。
その為、今週は溜まりに貯まってしまった仕事を片付けるべく、エンデール王立学園を休み、執務に当たっていたのだ。
第二王子とはいえ、仕事は山とある。
むしろ、自分から仕事をさせてくれと国王に訴えたのだから、仕事を滞らすなどということは合ってはならない。
学園を休んだお陰で、執務は全て片付いた。
もともと、山とある仕事とはいえ、常の私であれば処理できる量だった。
なぜか思考が上手くまとまらず、ミスを連発し、余計な仕事を増やしてしまったからこそ終わらなかったのだ。
あとは……ハーナベルと会わなければ。
会って、話がしたい。
婚約破棄を取り消したい。
彼女が許してくれるかは分からない。
許してなどもらえなくとも、せめて会いたい。
「カンタール伯爵家に向かいたいのだが、準備をお願いできるだろうか」
「承知しました。すぐに、高速魔導馬車を準備させます」
ルーシアが笑顔で礼をして部屋を出て行く。
急ぎ、寝巻きから着替えて準備する。
朝食をとる時間も惜しい。
意識がはっきりとしているうちに行動しなくては。
すぐに、という言葉通り、即座に城の裏門に準備された高速魔導馬車に私は乗り込む。
正門でなく裏門なのは、ルーシアの気遣いだ。
表から出たのでは、目立ってしまうから。
ハーナベル……どうか……。
私と、会ってくれ。