1月1日と1月3日
1月1日
私は靖国神社へ初詣に出かけた。九段下駅に着いたのが既に落日の時間で外は暗く人々は帰っていく様子であった。北の丸公園のほうにも幾らか人々がいた。
九段坂の向こうへ薄い青が延びていて、地と空の境界には薄いオレンジが滲んでいた。
何度か靖国通りに訪れたことはあるが鳥居を間近で見てみるとことに大きく、神明鳥居のなかに一枚絵の様に景色は収束し威厳を抑えきれないほどに放っていた。
境内は人が多く外人も多くみられた。犬を連れている人もいた。長い参道を歩くと人々が参拝のために列をなしていた。
数十分並んでいると南西の方角に月が見えた。木々の複雑な枝の絡まりの中で静かに光を放っていた。新月から四日目の月である。
私はふと12月に見た満月を思い出した。あの時は何かに期待した。その丸くなった満月を見て何か自分の中にある淡い崩れ落ちそうなものに期待したのである。しかしその満月が綺麗と思ったわけでもなかった。次満月を見るのはいつなのだろうか。月が綺麗だと思えるのはいつなのだろうか。 1月3日
私はこの日重大な約束をしていた。ある人と出かける予定だったのである。結果を言ってしまうとそれは実現はされなかった。
何となくこの子とはもう会えない気がした。六年前の梅雨の月、私が初めてその子を見た日、あの日に降った土砂降りの雨はきっと二人の心に永久に降り続くのである。