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DREAMs  作者: Alice
6/8

最善の選択

 しばらく見回りをした後、食事会が開催されているホールに行ってみることにした。

 ホールは人で溢れかえっていた。

 所々にある丸いテーブルの上には上等な料理がずらりと並べられていて、タキシードを着たウェイターが高そうな酒を渡して回っている。


「姫様は……っと」


 ホールの中を見渡すと、貴族に囲まれたレナを発見する。どうやらお取り込み中のようである。これだけ人がいるならば、もしレナに何かが起こると仮定すると、この状況で何かが起こることはほとんどゼロに等しいだろう。

 レナを見失わないように見守るというのが現在の最善の策であろう。


 しばらくすると、照明が暗転した。何事かと一瞬レナのそばに駆け寄ろうとしたが、そうする必要はないと判断し、その場に立ちとどまった。

 その理由は簡単。ホールの奥にあるステージにスポットライトが当てられたのだ。何か始まるのだろう。


『シュウ、聞こえる?』

「レーヴェか? どうした?」


 通信が入ったため、ホールの隅に移動する。


『分かったわよ、今回の件。また、いろいろやってくれるわ……』


 レーヴェはため息をついた。


「どういうことだ?」

『どうもこうも、今回のターゲットはこの食事会を開催したサントゥークの第三王子ってことよ』

「つまり、その王子を守ればいいのか……?」

『違う違う。今回のシュウの任務はレナ姫の護衛でしょう? 早まるようなことはしないでよ。それに、根本的なところで勘違いしているわよ』

 

 勘違い? 今の話の内容で勘違いするようなところは一つもないように思える。


「どういう意味だよ?」

『いい? 私が話したのはバサリアとサントゥークの今回の目論みよ。ほかの国がなんてことは一言も言っていないわ』


 ぞっとした。今回のターゲットはサントゥークの第三王子。その言葉が僕の頭の中でこだましていた。


「おい、嘘だろ……?」

『嘘なんかついてどうするのよ。いい? 助けるだなんて思ったらダメだからね。これは絶対よ。シュウの任務はレナ姫を護ることなんだから』


 つまり、サントゥークは自らの国の王子を殺そうとしていることになる。


「人が死ぬのを何もしないでみていろって言うのか……?」

『そうよ。お願い。辛いのはわかるけれど、何もしないで見ていて……今回ばかりは手に負えないわ。私にも、シュウにも……』


「わかったよ……だけどそれが分かっていてなんでバサリアはレナを食事会に参加させたんだ? レナがいなくても問題は無いだろ?」

『それが大アリ。サントゥークの王子様がレナ姫のこと気に入ってるから。このサントゥークの王子様が曲者でね。あまり人前には顔を出さないの。だから、レナ姫をだしに使ってでしゃばらせたってわけ』


 レナは餌ということか。


「レナはこのこと知ってるのか?」

『多分知らないでしょうね。あの性格上、知ってたらこんなパーティーになんか参加しないでしょ? まあ、気をつけるのようには言われてると思うけどね』


 それには同意だ。レナならこんな計画は止めるはずだ。


「僕はどうすればいい?」

『さっきも言ったとおり、姫様の護衛よ。それ以上は必要ない。分かってるわよね?』


 分かっている。分かってはいる。だけど……人が死ぬのは見たくない。しかし今回は手を出すのは禁止だ。


 ……どうにもこうにも雁字搦めである。


『変な事考えてないでしょうね?』

「別に考えてはいないさ。ここで阻止しようとすれば被害は大きくなる。最低限の被害で抑えるには何もしないのが一番ってことだろ?」

『そういうことよ』


 僕は無理やり納得した。納得するしかなかった。


 それからしばらく舞台は続いた。舞を舞う女性や、オペラ。それは至高とも言っていいものだった。僕は護衛というのを一瞬忘れ、それに見とれてしまっていた。


 舞台が終り、司会者にライトが当てられる。


『さあ! 舞台のトリはサントゥーク第三王子様による剣の舞いです! 美しい舞をご覧あれ!!』


 司会の紹介が終わると、そいつは舞台の袖から出てきた。とても派手な衣装を身にまとい、様々な装飾が施された剣を右手に握っている。


「この舞をレナ姫に送る!」


 そう言って剣の舞いが始まった。終始レナ姫は苦笑いだったというのは記すまでもないだろう。


 その舞はひと言で酷かった。型なんてなっていないし、素人目に見てもそれが分かるほどだった。そして、最後に何らかの拍子で転倒した。


 皆こらえているようであったが、クスクスと笑い声が聞こえている。恥ずかしいのか王子は立ち上がろうとしない。


 皆はそう思っているようだった。


 否、王子は既に死んでいた。それがわかったのは、王子に駆け寄った司会者の悲鳴によってだった。


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