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第二章 三話

初めましての方

読んでくださっている方


ナインと言います。

これから第一部が終わりに近づいています。

一旦の一区切りになると思います。

まだお話の方は続きますが、引き続き読んで頂けると嬉しいです。


読者の方は、気軽に感想・レビュー・ブックマーク宜しくお願いします。


長々と駄文失礼しました。

 朝シュンが目覚めると、アンナは横で静かな寝息を立てていた。

 まだ起きるには少し早い時間かもしれない。

 太陽はまだ顔を出しておらず、シュンが早く起きてしまったのだ。

 シュンはアンナを起こさない様に寝床を抜け出し、近場の川へ顔を洗いに行った。

 川の冷たい水で顔を洗ったシュンは、さっぱりとした気分になり、今の内に朝食用の魚を取っておくかと考えた。


 まだ朝方の冷たい水に浸かり、シュンは神経を研ぎ澄ませる。

 すると目の前を魚が通過していくのが見えた。

 シュンは素早い動きで、手を川の中に突っ込むと、見事に魚を捕まえた。

 これも師匠と修行していた時の賜物だ。


 勢いをつけたシュンは、その後も順調に魚を確保して、最終的には五匹も捕まえた。

 これだけあれば朝食には十分だろう。

 いいかげんもっとまともな食事が取りたかったが、生憎とシュンは料理ができない。

 たぶんアンナもできないだろう。

 早い所町に着いて、ちゃんとした食事を取りたいものだ。


 魚を取り終えたシュンは、アンナの待つ寝床へと戻った。

 シュンが戻るとアンナが目を覚ましており、こちらを眠たそうな顔で見ていた。

 シュンはアンナに朝の挨拶と、朝食を確保した事を伝える。


「おはようアンナ。今丁度魚を取ってた所だったんだ。飽きたかもしれないが、我慢してくれ。町に着いたらちゃんとした飯を食おう」


「気を使わんでもいいぞ。私は食べれるだけで満足なんだから。たぶん私一人じゃ、まともに食糧の確保もできなかっただろうからな」


 寝ぼけ眼でそんな事を言うと、アンナはしっかりと起き上がって朝食の準備を始める。

 アンナも手慣れた手つきで薪を組んで、そこへ火を点けるといつもの焼き魚の準備が完成する。


 二人で朝食を取った後、これからの計画を話合った。


「まずはこのまま川を下って、隣国【フレアランド】へ向かおう。その後は戦力の確保だ。二人だけじゃ国を取り戻すなんて夢物語だからな」


「そうじゃな。まずは無事に【フレアランド】へと辿り着くのが目標じゃな。シュンよ頼りにしておるぞ!」


 頼りにされるのは嬉しいのだが、ここからの道のりはシュンもわからない。

 今まで隣国へ行った事もなければ、戦場以外の場所へは行く機会もなかった。

 しかしここに留まっていても意味がないので、二人はゆっくりと川を下流の方へと足を進めるのだった。


 今の所は追手もなく、順調な足取りだった。

 歩く途中で見られる景色を堪能し、少し余裕もある。

 綺麗な川を見ていると、自然と二人共、心が癒される気分になる。

 逆に順調すぎて、少し怖いぐらいだと二人は思っていた。


 二人が半分程川を下った時である、突然後方から馬の足音がいくつも聞こえてきた。

 やはりそう簡単には行かないらしい。

 どう考えても昨日と同じ騎士団の連中だろう。


 次第に馬の足音は大きさを増し、ついに二人のすぐ近くまで迫ってきた。

 馬から逃げ切るのは不可能なため、二人は後ろを振り返り迎撃態勢を取る。


 するとハッキリと騎士団の光輝く鎧が見えてきた。

 昨日は四人だったが、今回は倍の八人いる様に見える。

 昨日の反省を踏まえて、人数を増やしたのだろう。


 シュンは厄介だな……と思った。


 もう目前まで来た騎士達は馬を止め、馬上から話しかけてきた。


「アンナ様、昨日は大変失礼をしました。今日は穏便に済ませたく、和平を申込みにきた次第です」


 よく言うぜ────シュンはこれだけ人数を揃えておきながら、戦う気がないなどとは思えなかった。


 だから油断なく騎士団の気配を窺がう。

 すると先程話しかけてきた騎士がまた話かけてきた。


「アンナ様が投降して頂ければ、大臣は無下には扱わないと言っております。安全もお約束するとの事です。どうかこのまま投降してもらえませんか?」


「アンナ……信じちゃダメだ。大臣はアンナを幽閉するつもりだろう。おとなしく捕まったら全てが終わる。ここは戦うしかないと思うぞ」


 シュンは思った事を素直に伝えた。

 どう考えても大臣が黒幕だ。

 そんな奴の言葉など信用できない。

 大方アンナを閉じ込めて、自分がトップに君臨し続ける事しか考えていないだろう。

 アンナが捕まったら、アクアホルンはもう大臣の物だ。


 アンナはシュンの忠告を聞き入れると、騎士団に向かって言った。


「私はそなた等よりもシュンを信じる。大臣は私の敵……倒すべき存在だ。その敵が私を丁重に扱うとはとても思えん」


 アンナの答えに騎士団は溜息をついた。


「仕方ありませんね。殺すなと言われてる以上、腕の一本は覚悟してくださいッ!」


 騎士団は一斉に騎乗したまま襲いかかってきた。

 シュンはやっぱりこうなるのかと思った。

 でも仕方ない。こちらとて無残に殺されるつもりはないのだ。

 アンナは生かして捕らえるかもしれないが、シュンに限っては殺すなとは命令されていないだろう。


 シュンへと二人の騎士が向かってきた。

 騎士は先端が尖った槍を持っている。

 先端から根本に近づくにつれ丸みを帯び、騎士団が正規に使っている槍だ。

 シュンはやはり騎士団も大臣の手に落ちてしまったんだと確信した。

 騎士団にはゴードン団長がいるはずだが、ゴードンの安否が気になる。


 シュンの思考は鋭い槍の突きによって、現実へと戻ってきた。


 少し集中力が足りなかったようだ。

 戦闘中に他の事を考えるなんて。


 無事に槍を躱したシュンは、アンナの方へと視線を向けた。


 アンナの方にも二人の騎士が迫っており、アンナも一生懸命レイピアで応戦している。

 しかし見た感じ少し押されているようだ。

 あのままだと危険だと判断したシュンは、自分の敵を速攻で片づける事にした。


 馬の上にいると言う事は、小回りが利かないはずだ。

 シュンはそう読むと、自ら打って出た。


 一気に加速すると、すれ違いざまに馬に向かって横薙ぎを放った。

 騎士は馬が攻撃されるとは思っていなかったのか、見事馬に攻撃が入り暴れた馬から騎士が落下した。

 そこを狙ってシュンはすかさず上段から剣を振り下ろした。

 落馬した騎士はなすすべなく斬られてそのまま動かなくなった。


 一人倒したシュンはすかさずもう一人の騎士へと向かった。

 走っている間にアンナの様子を窺がうと、まだ善戦しているみたいだ。

 しかしそれもあと数分とは持たないだろう。

 アンナが苦戦していると言う事は、相手の騎士もそれなりに強いのだろう。

 シュンは急いでもう一人の騎士を倒すことにした。


 シュンと対峙していた騎士は、先程倒された騎士を見て馬から降りた。

 シュンにとっては別に関係のないことだ。

 相手が誰であれ、倒すのみ。


 シュンは騎士へと一直線に駆けて、そのまま上段斬りを放つフリをした。

 そのフェイントに釣られた騎士は、慌てて槍を突いてくる。

 それを待っていたシュンは、なんなく横にサイドステップをして躱すと、突きを放った姿勢のまま隙だらけの騎士へと突きを放つ。

 シュンが放った突きは見事に騎士の鎧の隙間に入り、そのまま騎士は倒れる。

 生死の確認もせずに、シュンはアンナの加勢に向かった。


 シュンが到着する頃にはアンナは無数の切傷を負っており、満身創痍の状態だった。

 そんなアンナへとシュンは声をかける。


「よく頑張ったな。後は俺が何とかする。少し休んでいてくれ」


「すまない……少しの間休ませてくれ。すぐに戻るから」


 アンナは後退して木の幹に体を預けて休む。

 その間にシュンは残りの六人と対峙していた。


 このまま六人がかりで来られたら厄介だと思ったシュンは、自分から攻撃に出ることにした。


 まずアンナが相手をしていた二人を倒すのが先決だ。


 騎士が素早い動きで槍を突いてきたが、シュンは危なげなく剣の腹で横から弾いた。

 騎士に生まれた隙を見て、剣を横に振る。

 斬られた騎士は生きていたが、簡単に復帰する事はできないだろう。


 シュンは無視して次のターゲットに切り替えた。

 次は残りの五人が一斉にシュンへと突きを放ってきた。


 これは躱せないと思ったシュンは、咄嗟にしゃがみ五人の槍が一点に重なった瞬間を狙って、渾身の力を込めて上へと槍を弾いた。

 五人の騎士はそんな方法で躱されると思っていなかったため、槍を手放してしまった。

 武器を持たない騎士などただの木偶だ。


 シュンは冷静に一人、また一人と斬っていった。


 最後の一人となった所で、アンナが復帰して騎士に話を聞こうと言った。


「そなたに聞くが、今アクアホルンはどうなっておるのじゃ?」


 最後の一人となり怯えきった騎士は震える声で答えた。


「今は大臣のカルメル様が国を動かしております。騎士団長のゴードン様も、反逆の罪で牢屋に閉じ込められており……我々は命令に従うしかないのです……」


 騎士の話してくれた現状は、最悪の形だった。

 大臣が国を支配しているのは予想できたが、まさか騎士団長が捕まっているなんて……。

 それに反逆の罪とはどういう事だろうか?


 アンナは怯える騎士に優しく言った。


「ありがとう。そなたはもう戻るがよい。これ以上無駄な死人は出したくない。話を聞かせてくれてありがとう」


 騎士は怯える体を動かして馬に乗り、急いで去って行った。


 しばし静寂が訪れる────なんとも空しい戦いだった。


 お互いに戦う理由なんてないのに、それでも戦わなければならない。

 こんな現状を作っている大臣カルメルに、アンナは怒りを覚えた。


「シュンよ。私は絶対に国を取り戻すぞ。あやつに一泡吹かせてやらないと気が収まらん!」


「そうだな。これから【フレアランド】に行って仲間を集めたら、一度アクアホルンに戻ろう。俺に考えがある」


 アンナは不思議そうな顔で聞いてきた。


「なんだ考えとは? 今戻るのは危険じゃないのかの? せめて軍隊を編成できるぐらいの仲間がいないと……」


「大丈夫だ。俺を信じてくれ。必ずいい結果になるはずだ」


 尚も不思議そうな顔をしていたアンナだったが、シュンが自信ありげな事を言うのはめずらしかったので、信用することにした。


 二人はそれから【フレアランド】へとまた歩き始める。

 もう半分は過ぎている、あと数時間で【フレアランド】が見えてくるだろう。

 そこまで行けば追手も手出しできない。

 他国まで侵入して捕まえる事はできないのだ。そんな事をすれば戦争になってしまう。

 そこまで強引な手段は取らないだろう。


 シュンには考えがあった。


 ────アクアホルンに戻ったら、捕まっている騎士団長を救出しようと考えていた。


 彼なら必ず力になってくれるはずだ。

 アンナとは仲もいいし、彼なら信用できる。

 今は無実の罪を着せられ、投獄されているのだろう。


 彼を助ける事は後々大きな転機になると思っていた。


 二時間ぐらい歩いた二人はもう【フレアランド】の目の前まで来ていた。

 少し前から気温が増していた気がする。

 この国は名前に炎を冠する通り、気温がとても高い。

 そのため主に武器などを作って生計を立てている者が多いのだ。


 なぜ武器なのかと言うと、近くに豊富な鉱山があり無数に資源が手に入る。

 それを利用して武器を作った所、これが他国からの評価が高かった。

【フレアランド】の作る武器は今や商業として成功するほどの、価値があるのだ。


 丁度この国で失ったもう片方の剣の替わりを手に入れようと、シュンは思っていた。

 何かと剣が一本だと調子が悪い。

 この国の剣ならそれなりの物が手に入ると思ったからだ。


 二人は来ていた服を脱ぎ、この国で怪しまれない様に薄手の恰好になった。

 暑い中普段通りの恰好をしていたら怪しまれる。

 それだけは避けたい。


 初めて訪れる他国に緊張しながらも、二人は揃って【フレアランド】への入国を済ませると、新たな一歩を踏み出すのだった。


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