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ぐうたら主の相談所  作者: 日下みる
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~過剰な自信は足元注意~

今日の一人目のお客さんは、ご新規さん。

ご新規さんのみ、初回だけ時間が短く、お値段も安くしている。

いくら紹介制とはいえ、初対面の人間に悩みをボロボロ打ち明けるのに抵抗がある人も多くいる。

そのため、お試しも兼ねた顔合わせみたいなもの。

理乃曰く「相性がある」とのこと。

人間同士、どうしても合わない。というのはある。

出来るだけ合わせはするみたいだけど、無駄なタイプがいるらしい。

予約を受ける時のやり取りで何となわかるんだそうだ。

ただ、紹介制という前提があるため、無下に断れない。

紹介された人も、藁にも縋る思いでうちに連絡をしてくるというのと、

紹介した側のお客さんの面子も潰してしまうため、慎重にならざるを得ないとのこと。

お試し気分で…という人もいるけど。


その為、実は裏ルールが存在する。

今回のご新規さんは、この裏ルールの適用者なのです。

ご新規さん用の時間よりも、更に短い時間を提案するのだ。

長くて一時間。

お値段もかなり安くなる。

実に優しいプランがあるもの。と感心したら

「時間の無駄」と相変わらず可愛げのないことを言われた。

事務所の主に似ていない、とても慎重で臨機応変が効くプランがまだ紹介しきれないほど多くある。

相談所という職業柄、慎重な方がお客さんも安心出来ると思う。

いきなり「さぁ、腹の中を全てぶちまけて相談しろ」と言わんばかりの状況で、

大金も払うし、勿体無いから仕方なく話し出す。

というよりは、徐々に関係を深めていき、信頼出来そうとお客さんが判断したなら、またどうぞ。

という感じの、うちの相談所は良心的だと思ったのだけど、

理乃に言ったら「ネギでも背負(しょ)っとけ」と言われた。

それは「鴨ネギ」と言いたいの?

私はこれでも元弁護士。

詐欺に引っかかるはずないじゃない!

ちょっと。その目は何よ?

言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ。

「既に背負(しょ)ってたか」

どーゆー意味よ!!!

朝ご飯を食べながらでも、嫌味は言えるらしい。

トーストも用意しちゃえば良かった。


「あ~ダリィ。眠い」

とてもお客さんには聞かせられない。

「…さっさと追い出すか」

もっと聞かせられない台詞を呟いた。

今日のお客さんは、そんなに手間のかかる人なのだろうか?

予約の際、私が電話を取る場合と、理乃本人が取る場合がある。

私が取る時は、理乃が接客中の時。

メールでの依頼は全て理乃の担当。

今日のお客さんは、私が受付手続きをした。

私が話をした感じでは、とてもお子さんの事を大事にしていて、

そんな厄介な印象はなかった。

話すらしていない理乃はどうやって判断したのか、裏ルールで受ける様に指示をした。

折り返しで、お客さんにその事を伝え、詳しく説明をすると、とても喜んでいた。

やはりというか、色々悩んでいたらしい。

友人に紹介され、自分の手に負えないので依頼をしたけれど、お子さんが大学受験をするような年齢なので、当然、私達よりも歳上になる。

親の気持ちなどわからない。というのもあったと思う。

直接言われた訳ではないけれど、ありありとそんな口調だった。

私も進路については親に迷惑をかけた身なので、それもそうか。

とお客さんの不安にも納得した。

不安や悩みは、人に話すだけでも軽くなったり、口に出す事で整理出来る事がある。

その為、お試しに、という裏ルールは彼女には合っていたらしい。


理乃は、どうしてわかったんだろう?


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