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川辺の祭  作者: nats_show
※未定稿、詫びなど
83/84

未定稿2(仮題 なし)

「…なので鷹尾山の麓では長い間に」

「ちょっとタンマ」


 九月の午後四時過ぎ。クーラーが必要な季節はすでに終わり、窓を開けっ放しでは次第に寒く感じられることもある。が、その辺は気合い一つでどうにでもなる、という説もある。プロレスラーは年中裸じゃないか、と言う奴もいる。俺も、とりあえずプロレスラーが裸であるべきとの意見には賛同する。


「なんだ?」

「鷹尾山ってどこだ?」

「む……」


 まぁだからといって黒タイツをはきたいわけじゃない。まして、えーこに水着を着せてデビューしたての女子プロの真似をさせるなんて冗談じゃない。どう考えても冗談の域を出ないけどな。

 新生地研第三回の活動は、六名の参加者をもって始まった。たまに参加予定の祐子さんが名誉顧問。あの川辺の祭の面子が見事にそのまま揃ったわけだ。

 俺はまぁ…、それほど積極的な興味はなかったが、良とちさりんには借りがあるのでやむを得ない。ついでに、えーこは割とやる気だった。彼女とご一緒出来るならば、誰が拒絶しようか。

 ………。

 叫べば叫ぶほどに虚しい。こういうのを世に金魚の糞と言うのだ。


「昔の北平田村って分かるか?」

「昔っていつだよ」

「生まれるより二十年は前だ」

「良はなんで知ってんだ?」

「本で読んだ」


 しきりに質問を繰り返すのは我らが勝彦だ。まともな活動はまだ二度目だが、前回もひたすら勝ピーの声が響いていた。密かにちさりんが驚いていたぐらい、ヤツは熱心だ。

 とりあえず俺が口を開かないのは、中学の図書室みたいで嫌だという他愛のない理由である。良ははっきり言って寂しがりやだから、常に誰かが質問してやらねばならない。そんな義務的な質問にはもう飽きた。

 が、だから勝ピーに頼んだわけでもない。ヤツは思ったことはさっさと口にする男である。そのうち鬱陶しくなる可能性は否定できないけれど、会話の乏しい場では貴重な人材と言えよう。


「良くん」

「お、おう」


 そんな会話のループにえーこが加わると、俺の眠気も醒める。

 何も大好きな彼女だからではない。また難題をふっかけるのではないかと緊張するのだ。


「今日のプリントも面白いけど、あの……」

「………」


 そもそも、良とえーこという組み合わせ自体が微妙だ。カッコつけ野郎と毒舌女。しかも毒舌女は、自分はそうではないというポーズ付き。いずれ腹を割って話すべき時も来るに違いない。

 注目し続けるのも疲れるから視線を動かしたら、千聡と目が合う。気苦労が絶えない、という顔をしている。もしかしたら俺も同じかも知れない。


「中学で読んだ本の復習から始めたらどうでしょう」

「え…」

「ねぇ、ちさりん」

「あ、…うん」


 それにしても、えーこは強引な性格だと思う。


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