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人混みの中を歩く毎日だ。
いつも変わることのない、雨すら降らない通路を歩かされる毎日だ。
「そこしか歩いてはいけません」とは誰も言わない。なのに、そこしか歩けない。おかしな話だ。
目の前を通り過ぎるのは、少しだけ偉くなった人々。虫けらのような俺たちを一瞬見下しながら、猛スピードで去っていく。
俺たち…か。
所詮、仲間だったような気がするだけの人々に、俺はそれでも束の間の連帯感を求め続けなければならないのか。
普段は顔を見るのも嫌な人々に。
俺は誰かを待っていた。
まるでイメージの湧かない存在を待っていた…らしい。
今も待っている。誰かを。
遮るものを破壊する誰かを待ち、見下す者を殺す誰かを待ち、仮の仲間を追い払う誰かを俺は待っている。
薄汚いアーケードの屋根が吹き飛ばされ、世界を切り取るビルが崩れ落ちて、見渡す限りの車が炎上した時、ここに俺と誰かの住む、地上のユートピアが誕生するだろう。




