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あなたと歩いた道はいつもあなたが先頭で、
私はどこへ行くのかも判らずにただ後をついていました。
あなたは何を問われても、ただ奥へ行くとしか言いませんでした。
随分長いこと歩いて、ようやく辿りついた川の合流点で、
私たちは束の間の休息を取ることができました。
田舎育ちで子供のようなあなたは、
そんな店に入ったこともないのに、
それを悟られるのが嫌で、何でも知ってるふりをしていました。
だけど、スパゲッティを前にして、
あなたはただじっと見つめるだけでしたね。
フォークの使い方も知らないあなたを笑ったけど、
あなたはそれを恨んでいたのでしょうか。
あなたはいつも私に遅れて来るので、
そんな薄情な人だから何も知らないんだ、と私は言いました。
それを聞いたあなたは、ただ笑っていただけですよね。
先頭を走っていたあなたが突然消えた時
私は「ああ、これで元来た道を戻らなきゃいけないんだ」と
ただそれが悲しくなりました。




