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何も変わらない、そんな毎日が続いていても、いつか季節は変わっているのです。
だけど、昨日と今日の境目を、私は知ることができません。
そして、いつになれば夏を迎えるのかも、すっかり忘れてしまいました。
子供の頃、お母さんに教えてもらった昔話では、海の彼方には不思議な常世の国があるんだそうです。
浦島太郎の話も聞きました。海の底にあるという国はとても楽しそうで、だけど歳は取りたくないと、ずっと思っていました。
もちろんそれは子供の頃の話。
どこまでも水平な海は、いくら眺めても何一つ見えないままで、やがてお母さんも話してくれなくなり、私も忘れてしまいました。
今なら、逆らえるはずのないものにすら、私は逆らうことができます。
本当は誰も逆らいたくなんてないのに。
ただ、見えない何かに引っ張られているだけ、なのです。
水の底と空はつながっていると聞いたことがあります。
それは伝説だったのでしょうか。
それとも、未来を予言した言葉だったのでしょうか。




