異形の者
「探せ!!早く見つけて始末するんだ!!!」
「・・・はあ・・はあ・・・」
橋の下に隠れた自分の頭上に響く多くの足音と怒声・・・先ほど俺は、とんでもない光景を目にしてしまった・・・・
俺の名前は霧月悠斗、極々普通の・・・どこにでもいるような高校生だ・・・家以外は。
ただ困った事に昔から厄介ごとに巻き込まれる体質(?)のようで行く先行く先でなにかトラブルが起きる。
そして今もトラブルに巻き込まれてしまった・・・今までにないくらいやばそうなトラブルに。
「大丈夫、かな・・・?」
今まで身を隠していた橋の下から辺りを警戒しつつ出る。
「全く・・・何なんだよあの連中・・・」
ため息をつきながら少年は先ほど見てしまった光景を思い出す。
あれは学校が終わり、自宅に帰る前に自分が好きなアーティストのCDを買おうとCDショップに寄った後の事だ。
当初の予定通り目的のCDを買い、まっすぐ家に戻ろうとした時の事、狭い裏路地に同じ学校の制服を着た女子がガラの悪い男に連込まれたのを見てしまったのだ。
(無視するわけには行かないよな・・・)
少年は昔から格闘技を学んでおり、そういう輩から他人を助けたりしていた。
故に先ほどの生徒を放っておけなかった。
「ここみたいだな・・・」
後を追い進んで行くにつれて人通りが極端に少なくなっていた。
奥にある広場は不良のたまり場となっているようだ・・・
奥まで行くと生徒を見つける。
助けようと飛び出すがとんでもないモノを見てしまった・・・
それは男が女子の首筋に噛み付き滴る血を啜っていた・・・
(な、なにやってんだ・・・!?)
流石に驚き後ろに下がるが・・・時は既に遅く見つかっていた。
「見たな・・・!」
ヤバイと思い一目散に逃げるとすぐにたくさんの足音が自分を追ってきたのだ。
そして今に至るというわけだ。
「あれ、血を吸ってたのか・・・?」
いやいやいや、そもそも血を吸う人なんているか?ありえない話だ。
「見つけたぜ・・・糞ガキィィィ!!」
後ろを振り向くと先ほどの男が瞳を深紅に光らせこちらを睨んでいた。
やばい、殺気が篭っている・・・本気だ!!!
「死ね・・・・!!!」
男が拳を少年に叩きつける!
普段なら受け流すなり防御することが出来るのだが・・・男の攻撃は「速すぎた」。
俺はモロに腹部に拳を喰らい後ろに飛んでしまう。
「ぐっ・・・はっ・・・!」
なんだあの攻撃・・・人間の速さじゃない・・・!
男の攻撃を受け体がまともに動かず男は段々近づく。
そして目の前に止まり胸倉を掴み持ち上げる。
「・・・あれを見たからには生かしておけん・・・小僧、覚悟しろ!」
再び拳を振り上げる。
俺は死を覚悟し眼を閉じた・・・しかし痛みは無く眼を開くと胸倉を掴んでいた男の右腕はずれ落ちていた。
勿論その後に俺も落ちて尻が痛い。
俺は前を見ると西洋剣のようなものを構えた同じ学校の制服を着た少女がいた。
「大丈夫ですか?」
黒の長髪、小柄だけど出るところは出ており端正な顔立ちをした美少女だった。
ってこんな状況で俺はなにを!?
少年はすぐ立ち上がり身構えた。
「・・・小娘ぇぇぇぇぇぇ!!!!」
男は逆上して少女に襲い掛かる・・・しかし少女は驚く事も無く剣を構えた。
男の拳は少女の顔を捉えたかに見えた。
「・・・があああああああああああ!?」
男は悲鳴をあげた・・・何故なら一瞬で片腕が両断されていたからだ。
「このまま灰になるか二度と一般人を襲わないか・・・どちらを選びますか?」
地面に膝をついている男の首筋に剣を突きつけ睨んだ。
男は失った方の腕を押さえながら逃げていった。
少女は剣を鞘に納めこちらを振り向く。
「御無事ですか?悠斗様」
少女は黒く染まる長髪を靡かせ、青空のような透き通った蒼い瞳でこちらを見つめてきた
それが彼女と俺の出会いだった・・・