[ホラー短編]承認欲求ー大量のイイネー
「中々ツイスが、いいねされねぇな…」
自称インフルエンサーである中山初(29)は、ツイスというSNSを運用していたが、全くいいねが付かず悩んでいた。
ツイスに上げているのは、普段の日常や自撮りなど、そんな些細なものだったが、やがてイケメンと持て囃されるのを夢見ている。しかし、全然そんなこともなく、良い時で20など、少ない通知にイライラしていた。
何れ、その収入で食べてやろうという野心めいたものを持っていたが、現実は厳しく、入ってくるのは月に何千円といったチョロ金だった。自分はカリスマ性がないのかといつも落ち込む日々。初はそんな日々に嫌気が差していた。
「はぁー…俺は企業勤めで働くのダリィから、広告収入でたべてぇーー!!」
そんな思いがないとは言わず、就活に失敗したニートの自分は、何にもなれず、辛い日々を送っていた。仕事とは何なのだろう。一体俺は何がしたいのだろうか?
変な焦りがないとはいえなかった。
しかし、やはり、自分には才能がない。そんな風に思う毎日だった。
「……諦めて就職をしよう……」
そんな決意を胸に、ある時、ぶらついて散歩をしていた初は、古びた公園の奥にある、立入禁止の廃屋に迷い込んだ。
ーー子供の靴?ーー
重苦しい空気の中、ふと足元を見ると、そこには不自然なほどに真新しい「子供の靴」が一足だけ落ちていた。
何かに引き寄せられるように、初はスマホのカメラを構える。
パシャっと。
「怖えぇ〜!!マジコぇー何これ!?」
画面越しに見たその靴はまるで誰かが履いているかのように僅かに地面から浮いて見えた。
ーこれは、絶対ウケる!
初は震える指でその写真をアップロードした。すると、通知のバイブレーションが鳴り止まなくなった。
『何だこれは!?』
『いやいや、合成だろ?でもリアルすぎてヤバい』
『怖すぎる。もっと見せてくれ』
反応が爆発した。
すると、いいねが沢山付き、何と、普段は100行かないのに、1万……10万いいねいってしまったのだ。
「ヤバい……。これはいけるんじゃないか?」
自分でも確かな手応えを感じてしまい、その日から、初は味を占めて事故物件や心霊スポットなど、ヤバいものを撮りまくった。
ー凄い!
ー神垢すぎる!次はどこ行くの?
ーん?後ろ?
「……後ろ?」
初はスマホの画面を凝視した。最新の自撮り投稿。そのコメント欄に流れる不穏な言葉。
画面の中の自分の背後、暗闇の中に、青白い無数の指が映り込んでいる。
「え?」
耳元で、湿った吐息が漏れた。
「ねぇ、遊ぼう?」
大量にいいねを付けていたのは、ネット越しの人間ではなく、初の後ろにいる大量の幽霊だった。
彼らは「いいね」と称して、初を自分たちの世界へ引きずり込もうと、すぐそばで手ぐすねを引いて待っていたのだ。




