1.幼馴染みの『剣姫』
「ルインっ! 今日もアタシの剣術練習に、付き合ってもらうわよ!!」
「うげ……アイーシャ、また俺をボコボコにしにきたのか?」
――そんな日々を繰り返して。
とある朝に、俺の家の玄関扉を勢いよく開く少女があった。
金色の瞳に肩ほどまでの赤い髪。日に焼けて小麦色になった健康的な肌をした美少女の名は、アイーシャという。年齢は俺と同じくらいで、幼少期から一緒に遊んできた幼馴染みであった。ちなみに彼女の両親はこの農村の長を務めており、すなわち中心的な存在。
そんな一家との縁を大切にしたいのか、はたまた子供のじゃれ合いと思っているのか。
俺の両親はアイーシャを認めると、にこやかに微笑んでみせた。
「あら、アイーシャちゃん。今日もルインと遊んでくれるの?」
「ルインもアイーシャに誘ってもらえて、喜んでるよ」
そして、そんな呑気なことを言っている。
もっとも彼らはこの少女の恐ろしさを知らないから、仕方ないのかもしれない。俺はそんな両親に背を押されて、仕方なしにアイーシャの前に出た。すると幼馴染みは大輪の花のような笑みを浮かべ、こちらの手をしっかりと取る。
次いで彼女は勢いよく腕を引きながら、俺の両親にこう宣言するのだった。
「おじさま、おばさま! アタシがルインを立派な剣士にしてみせますから!」
大人からしてみれば、どこまで本気かは分かるまい。
俺は全速力で駆けるアイーシャの後に、必死になって追いかけながらため息をついた。
◆
そうやって到着したのは、俺の自主練場とは反対側にある森の中。
そこには鬱蒼とした木々が生い茂っており、全体的に視界が悪くて足元も不安定だ。少し注意を怠れば、むき出しの木の根に足を絡めとられて転倒してしまう。
そんな中を気を払いながら進み、アイーシャは一つ頷いて立ち止まった。
「よし、それじゃあ今日も始めましょう?」
「今日も……って、また剣術の真似っこかい……?」
振り返った幼馴染み。
そんな彼女の手に握られていたのは、どこに隠していたのか身の丈ほどありそうな木刀だった。大人が装備すれば頼りないものだが、おおよそ子供が所持して振り回すものではない。しかしアイーシャはそれを想像以上に上手く振って見せるのだった。
その立ち居姿はなかなかに堂に入っており、雰囲気は十分。
それもそのはず、アイーシャの授かった『ギフト』の名前は――。
「――さすがは『剣姫』だね」
剣状の武器であれば、容易に使いこなすことができるというもの。
さらに上位には『剣聖』と呼ばれるものもあるが、それはもう数百年に一人、生まれるか生まれないかの確率とのことらしい。そんなわけなので、いまのアイーシャは木刀を持っただけの女の子、ではなかった。目の前にいるのは、並外れた剣技を習得した剣士に違いない。
そんな幼馴染みは、にっこりと微笑んでから言った。
「ほら、ルインもこれを構えて!」
「構えるも何も、木の棒じゃないか!?」
放り投げられたのは、何ともみすぼらしい棒切れ。
太さや長さはある程度マシではあるが、それでも彼女の木刀と比較しては劣ってしまう。俺はぞくりと冷や汗をかくのを感じながら、まずは話し合いで解決しようと試みた。
「とりあえず、まずは簡単なトレーニングからにしない?」
「そんなことしてたら、ギフトなしのルインは成長できないでしょ!!」
「うぐぅ……!」
――だが、思い切り痛いところを突かれてしまう。
たしかにアイーシャの言う通り、才能なしの俺では芽が出る保証もない。しかしながら、基礎を無視した特訓に効果があるかといえば、それはそれで違う気がするのだが……?
「ええい、問答無用よ! 第一試合、開始!!」
「ちょ、待て! おわあああああああああああああああああああ!?」
しかし、そんな俺の訴えなんて聞く間もなく。
アイーシャの鋭い一撃が鼻先を掠めた。
俺はまるで反応が追い付かず、その場に情けなく尻餅をつく。
こうして、幼馴染みとの剣術稽古は始まるのだった。
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