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Q.仮に異世界転生したとして、最弱の存在だったとしたら? ~A.むしろ大好物です!~  作者: あざね
オープニング

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プロローグ 努力を努力と思わない。

新作です。





「――ルイン、お前は本当に何をやっても駄目だな。もういいから、母さんの家事を手伝ってやってくれ」

「あぁ、分かったよ父さん」



 コルディオと呼ばれるこの世界。

 その中にいくらでもある農村の片隅で、俺は父親から呆れたように笑われていた。言い方こそキツイものの、その表情からは愛情がにじみ出しているように思える。父さんからしたら、出来の悪い子ほど愛おしいというやつなのかもしれない。

 そんな父さんの愛情も嫌いではなかったし、少なくとも彼は俺を一人の人間として尊重してくれていた。生まれながらに神から授かる『ギフト』がなかったことも、一つの個性だと受け入れてくれている。



「さて、と……母さん、なにか手伝えることはある?」

「あらルイン、お父さんの方はいいの?」

「えへへ。また厄介払いされたよ」

「あらあら」



 そして、それは母さんも同じ。

 俺が頭の後ろで手を組んで笑っていると、目を細めて微笑むのだった。その上で自分の手にしていた掃除道具をこちらへと手渡し、ひとまず居間を綺麗にしてほしいと指示してくれる。掃除といった軽作業なら、なんの才能もない自分でも可能だった。

 こうやって家族の中での役割を与えてくれるあたり、我が両親は人が好い。

 あるいは辺境にある農家だから、というのもあるかもしれない。仮に王族や貴族の子に生まれていたとしたら、周囲からの落胆の目は酷かっただろう。

 そういった意味で、俺は最高に恵まれているといって違いなかった。



「さぁ、今日もやるか!」



 そう考えながら、俺は自分に与えられた役割をこなす。

 これが俺ことルインの日常だった。





 だけど、夜になると俺の時間が始まる。

 簡単に言ってしまえば、それは秘密の特訓というものだった。両親が寝静まったのを確認してから、俺は物音を立てないように気を付けて家を出る。目指すのは村から少し離れた場所にある広場。そこに隠し置いてある木の棒を取り出して、真正面に構えた。



「ふーっ……! 剣先に意識を集中して……!」



 大きく息を吐いて、精神を集中させる。

 実のところ俺には前世の記憶があり、元々いた日本では名の知れたスポーツ選手だった。第二の二刀流と呼ばれて海を渡り、サイヤング賞や三冠王を獲得。どうやって、何が原因で死んでしまったかは覚えていないものの、それなりに順風満帆な人生を送っていた。

 だからといって『ギフト』のない現在を嘆く、ということはない。

 むしろ、自分にとってはこちらの方が好都合だった。

 何故なら――。



「あっちでも、元から運動神経に恵まれてたわけじゃないからな」



 そう、前世の俺には才能というものは欠片ほどもなかった。

 少年団に入部した際に、指導者からまず言われたのは『キミはおそらく、ずっと球拾いだろう』という宣告。事実その人のいう通り、少年団の頃にはまったく芽が出ずに終わってしまった。

 このままだと駄目だ、と思い至ったのは中学に進学してから。

 俺は一心不乱に、技術と共に知識を蓄えた。



「どうすれば、効率的に練習ができるか。身体を動かす上で、力を伝える上で、どのようにするのが最も効率的なのか……!」



 そうやって誰よりも、どんな天才や秀才よりも研鑽に勤しんだ。

 そのようにして結果が出始めたのが、高校生になった頃。毎日少しずつ他人よりも努力した結果、入部した一年生の中では群を抜いた技術を持っていた。そうなれば後は、経験を積むだけ。

 初年度から公式戦に出て、いままで培ったものを試していく。

 その試行錯誤の中で結果を出し、気付けばエースで四番という地位を手に入れていた。



 そこからはもう、プロに入って海を渡ったという話の通り。

 俺はおおよそ自身の思い描く理想に至った。

 でも――。



「こっちの世界では、通用しない……」



 そうなのだ。

 前世で俺が磨いた技術は、あくまでスポーツ限定。

 命のやり取りが発生するこちらでは、まだまだ不十分だった。それを知って、




「まったく、ワクワクするじゃないか……!」




 俺はまさに童心に返り、胸を躍らせる。

 自分の研鑽にはまだまだ先があり、無限の未来が広がっている。




 そうして今日も、俺は一人で素振りを始めるのだった。

 こういう地道な努力というのは、大好きだったのだから……。


 


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